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よろしくお願いします。
私は15歳になった。家の庭で紅茶を楽しんでいた。後ろから男が近づく
「ティア!遅れた、待った?」
「待ったわ、もう、久しぶりになのに」
「ごめん、ごめん、そんな婚約者様にドルチェーノのチーズケーキを持ってきたんですが」
「、、んー、許してあげる」
「ありがとう。」
もちろん、あの時の少年である。意味もなく来ていたわけではない。私達の婚約について訪れていたらしい。
この国は魔力や属性が強ければ高位の者と婚姻することができる。程度はあるが。侯爵家は兄が継ぎ、お姉さまは魔力に優れていたため、公爵家との婚姻が決まっている。
顔合わせのためにつれてきていたらしいのだが、紹介の前に私達は出会ってしまったのだ。私は平凡な魔力だが、侯爵家で、歴代で魔力を持っているため私自身が持っていなくても婚約対象でもあるのだ。
彼はルーク・シュナイザー。氷の騎士と呼ばれる伯爵家の長男だが、赤い髪赤い瞳で生まれた男。その通りに、火属性を持った男だ。
成長するにつれ、その魔力、剣技は他を圧倒する才能を持っており、その面差しや外見がかなり整った顔立ちで社交界では騒がれている。
「懐かしいね、ここで僕たちは出会ったんだよね。」
「そうね、あの時急に泣き出して驚いたわ。」
「あの時はね、まわりから氷の騎士なのにってずっと言われてて。氷と火なんて真逆の属性が生まれたから、不貞の子なんて言われてさ。みんな青い髪で青い瞳だなら。それが、異質に見えたんだろうね。」
彼は目を細め思い出す仕草をする。
「目を見られたら、変な顔をされるから、ずっと俯いてた。ここに来たときも誰とも会いたくなかったんだ。だから、こっそり抜け出して隠れてたんだ。そしたら、君が話しかけてきて綺麗って言ってくれてすごく嬉しかった。その後は色気無かったけど。」
「別に、本当のことを言ったまでだわ。火魔法は夜営の時も、日常でも、夜の明かりにもいっぱい役立つもの。」
「ふふふ、そんなこと言うの君だけだよ。
あの時、君に言われなかったら、僕はずっと悩んでたかもしれない。成力が魔力が歴代でも争うぐらいってわかって、後から手のひらを返したようなあの人たちに、取り繕うようことをわかってたとしても、心の中では。」
ルークはクリスティーナを見つめる。その目はとても優しい眼差しだった。
クリスティーナは見つめあった後、目をそらし話題を変えた。
「そう、、それよりもルーク。今年から学院ね」
この国には16歳になる年頃には魔力を持っているものは全員入学しなければならない。ここで、魔力の制御などを学ぶのだ。これは魔力をもって生まれたものの義務だ。
「そうだね。。第二王子も入学するから、騒がしくなるね」
そう、同じ年にあの氷王の第二王子が入学するのだ。そのため、多くの令嬢が浮き足立っている。
「、、、、。」
「どうしたの?心配事があるの?」
「いいえ、そんなのはないわ」
ルークに顔を覗きこまれたが、笑顔で返す。
「ティアと1年離れるのはすごく寂しい。」
ルークが顔の近くで囁くように言う。
「っ、、ち、近いわよ。私は別に寂しくないわ」
「ティア酷い。。僕は毎日君に会いたいのに。」
ルークは手を取ると両手で包み込み言った。
「たった1年よ、、来年になれば私も入学するわ。、、手紙も書くわ。休暇もあるでしょ。だから、、。」
クリスティーナは顔をそらしてうつむく。
ルークはその様子を見て、重ねた手をより強く握りしめる。
「ティア、、。」
ルークはそれ以上追求することはなかった。
「紅茶が冷めたね、変えてもらおうか。」
遠くにいる侍女に指示してるルークは話をそらす。俯いたクリスティーナの表情を見ることができない。だから気づかなかった。悲しい表情をしていることを。
「そう、あと1年だけはあなたのそばにいれるの」
その小さい呟きも。