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ジェフリー・ガルシア・ランドルフ

 再び意識を取り戻すと、そこには先程のメイドと威厳漂う初老の男性、そして十字架を掲げる神官のような男が僕の横たわるベッドを囲っていた。もしかしてやばい宗教にでも拉致られたのだろうか。

 と、そんなことを考えていると、神官が話しかけてきた。宗教の勧誘は結構です。


「ジェフリー様、記憶喪失というのは本当でしょうか?」


 記憶喪失……たしかにそうとも言えるのか? ここにいる経緯がわからないだけなのだが。まずジェフリーという人物が誰だかわからないのだが。


「確かに記憶はありません。あなた方はどなたですか? ジェフリーという人も知らないのですが」

「ジェフリー様……本当に記憶を……」

「これは……残念ですが魔変病で間違いないですね。ジェフリー様は莫大な魔力を宿していましたから、魔力に精神がやられてしまったのでしょう。生きているだけでも奇跡です」


 僕が質問をすると、メイドさんが心配そうに見つめ、神官が謎の病気だと診断した。どうやらこの人たちは本気で僕をジェフリーという人と勘違いしているらしい。


「記憶を失っているのであれば仕方ありません。魔変病の治療成功例はありません。少しずつジェフリー様のことを教えなおしていくほかありません。あなたの名前はジェフリー・ガルシア・ランドルフ、プロイセル魔導国におけるランドルフ侯爵家の次男です。私の名前はロイド・マッケンリー、クリスタ教の司教をしています」


 ジェフリーという人物はずいぶんと偉い地位にいるらしい。名前もなんだか豪華だ。

 神官改めロイドさんが自己紹介すると、それに続いてメイドさんと威厳ある男性が自己紹介を始めた。


「私はジェフリー様の侍女のマリア・オーステルです。幼少の頃からともにいたこのマリアのことを忘れてしまわれたのですか……?」

「マリア、気持ちはわからんでもないが、今はジェフリーの無事を喜ぼう。私はローランド・ガルシア・ランドルフ、お前の実父だ。お前にはルイスという兄がいる。今は混乱していて何が何だかわからないだろう。しばらくはマリアとともに屋敷内で療養をしてくれ」


 威厳のある男性はジェフリーの父親のようだ、しかしジェフリーという人物はそんなに僕に似ているのだろうか。どこかに写真などはないのだろうか?


「とても言いにくいのですが、私はジェフリーという人物ではありません。どなたかと勘違いされているのでは?」

「ジェフリー様……そんなこと言わないでください! あなたは紛れもなくジェフリー様です……!」

「マリア……ジェフリーは記憶がなくなって混乱しているのだ、だからこそマリアが冷静にならなければいけない。そうだ、アルバムを見せたり思い出話をしたりすれば記憶が戻るかもしれないぞ?」


 どうやらジェフリーという人物と僕は本当に似ているらしい。直接的に言ってもダメとは……。

 ローランドはマリアに思い出話を提案するが、神官のロイドがそれに返答しようとする。


「ローランド様、それは……」

「わかっている。魔変病は治療成功例がないのだろう? だが、私もマリアもわずかな可能性を試したいのだ」

「……余計な発言でした、お気持ちお察しします」

「よい、ロイドよ、実務に戻るぞ。マリア、ジェフリーのことは頼んだぞ」


 そう言い残してローランドとロイドは部屋を後にした。


「ジェフリー様、アルバムをお持ちしました、これが去年行われた10歳の誕生日パーティーの様子です」


 そこには、カラー写真で小鳥遊京夜とは似ても似つかないイケメンが写っていた。

 ん? え? これがジェフリー? このイケメンが? いや俺こんな外国人顔じゃないよ? なんで勘違いしてるのこの人たち。


「いや、もしかして」

「どうかなさいましたか?」

「マリアさん、この近くに鏡ってありませんか?」


 正直手の形や声の違和感、肌の色から少しずつ察せてきたけど……受け入れたくない自分がいる。


「ジェフリー様、マリアと呼び捨てにしてくださいませ。鏡は手鏡でよろしいでしょうか?」


 マリアさんから手渡された鏡の中には、写真のイケメンにそっくりな金髪青目の青少年がいた。





 ............どうやらジェフリーさんの中に僕が入ってしまったようです。


次話は数日経過後の話となりますのでご注意ください。

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