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暇を持て余した神々の童戯

 

 精神世界の中、一柱(ひとはしら)の神が興味深そうに下界を見下ろしていた。


「なかなかによくできた器だ、失うには惜しいな。そう思わんか? 地球の神よ」


「また貴様のつまらん童戯か? 魔導郷(まどうきょう)の神よ。私の管理する世界から魂を盗もうという魂胆だろうがそうはいかぬぞ」


「盗もうなどと人聞きの悪い。よいではないか、お主の世界には70億も人の子がおるのじゃろう? そうじゃ、酒の神が創り出した神酒(ソーマ)を三升ほどくれてやろう」


「酒で釣られるほど甘い話ではないわ、地球の子が貴様の世界にいけばどれほど苦労するか想像に容易いだろう。そもそも魂の移動は世界に多大な影響を与えることくらい理解しておるだろう」


「先刻よくできた器というたじゃろう? この器にどのような魂が入ろうとも苦労することは微塵もないじゃろう。精神的なものでも其方の管理する()()()ならば喜んで住まうじゃろ。世界への影響に関しても我の世界では大海の一滴じゃよ。そうじゃ、神酒(ソーマ)を一斗に増やしてやろう」


「ふっ、大海の一滴とはよく言ったものだな。貴様には例の件で世話になったことだし、仕方あるまい、神酒(ソーマ)を二斗渡すならば応じてやろう」


「二斗とは其方も足元を見るのう、よかろう、それで手打ちじゃ」


 強大な力を持つ二柱の神の談合により、地球の何も知らぬ魂は、拒否権もなく異界へと送られていった。



 ________________



 目が覚めた場所は、身に覚えのない屋敷の中だった。まるで40度の熱が出ているかのように痛む頭で思考するが、これまでの経緯が全く思い出せない。

 僕は今ベッドで寝そべっているようだ。とりあえず周りを確認すると、チョコレートの板のようにデコボコした高そうな扉がゆっくりと開いた。

 扉の先にはメイド姿の女性がいた。コスプレをする知り合いはいなかったはずだが、もしや怪しいお店にでも入ってしまったのだろうか。

 メイド姿の女性はこちらを見ると、驚いた表情で停止し、手に持っていたグラスを落とした。

 部屋中に響き渡ったグラスが割れる音で意識を取り戻したのか、女性は地面に散らばったガラスの破片を気にもせずに僕の元へ向かう。ベッドの横まで来ると、感極まったような顔で僕の手を握ってきた。


「ジェフリー様......お目覚めになられたのですね......!」

「え......?」


 メイド姿の女性は目を潤ませて語りかけてきたが、これはどういう状況なのだろうか。僕はジェフリーという名前ではなく、小鳥遊京夜という名前であり、ジェフリーという知り合いもいないのだけど。

 もしや怪しいお店での設定か何かなのだろうか?とりあえず正直に記憶がないことを伝えて家に帰ろう。いや、その前にひどい頭痛がするし、病院に行ったほうがいいだろうか。


「すみません、記憶がなくて覚えてないのですが、ここはどこでしょうか?」

「え......? 記憶がない......?」


 女性は、その言葉にショックを受けたようで、数歩後ずさると、走って部屋から出ていってしまった。


「え、あっ、ちょっと。とりあえず状況だけでも教えてほしいんですが」


 悲痛な叫びは聞き取られることなく、部屋には再び沈黙が訪れた。

 どうなってんだ、これ。頭痛も酷いし、さっきのメイドさんが救急車呼んでくれるといいんだけど。

 あ、どんどん頭痛が酷くなってきた。意識が朦朧として.......


「だん...様...ジェフ......が......!」


 メイドさんの叫び声を最後に、僕は意識を失った。

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