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はずれ勇者と諸刃の剣  作者: サムライ
9/19

二組合同訓練 後編

「ぁあ!もう、邪魔!」


「はぁ!」


「ギィィ・・・。」


ドサッ。


今日何度目かの戦闘。

八体というなかなかの数を相手に苦戦することなく戦闘を終えれた。

シンが最後の一体を見事に貫き、みんながホッと一息つく。


そして・・・。


「ちょっとあんた!どういうつもりよ!!」


マリサが僕の胸倉に掴みかかってくる。

今日の何度かあった戦闘の中で、僕がマリサに怒られなかったものなどなかった。


「え、えーと・・・。」


「何笑ってんのよ!さっきも言ったわよね?あたしの魔法の射線上に来るなって・・・何死にたいわけ?」


どうしていいかわからず苦笑いを浮かべた僕の顔に、さらに腹を立てたマリサが怒鳴る。


「まぁまぁ、そんなに怒鳴りつけなくても・・・。」


「ルドは黙ってて!」


いつも元気なルドでさえ、その迫力に押されて一歩退く。

めちゃくちゃこわい。


「まぁ、たしかにユウさんが我々の連携をを乱していないとも言い切れませんからね。」


シンが冷たい視線を僕に向けながらそういった。

ナルやベロニカはおろおろしたように目を合わせていた。


「・・・。」


「何か言ったらどうなの?」


マリサが舌打ち混じりに僕を睨みつける。


「・・・。」


「・・・。」


「・・・。」


何も言えず俯く僕。

鋭い目つきで僕を壁に押さえつけるマリサ。

心配そうに見つめるいくつもの視線。


気まずい沈黙が続く。

僕は謝ろうと口を開いた。


「ユウは頑張ってるわ。」


しかし、それを遮るように言葉を漏らしたのはクロナだった。

いつもと同じように無表情で、ルドでさえ怯むマリサに全く怖気づくことなくそう言い放った。


「頑張る?あたし達は頑張らなくても出来て当たり前・・・なんも出来ないなら後ろに引っ込んでてよ、雑魚はでしゃばっても邪魔なだけだから。」


しかし、マリサもクロナの言葉に怯むことはなく、冷たい言葉を僕に向けた後、胸倉を掴んでいた手に力を入れて僕を突き飛ばした。


そして、そそくさと迷宮の奥に歩いて行く。


わかっている。

ああ、わかっているんだ。

僕が悪い。

皆出来て当たり前のことが僕には出来ない。


昔からそうだった。

運動が苦手で友達に馬鹿にされたり、勉強が出来なくて親の期待を裏切ったり。


そんな僕が誰かの役に立てるのかもって嬉しかった。

・・・でも、結局僕は凡人で、何の役にも立たない。


情けない。

こぼれそうになった涙を隠すように下を向いて仲間の後を追った。




「今日はこれまで、明日は四組合同で訓練を行う、解散!」


訓練はなんとか終わった。

あの後もマリサとシンに文句を言われ続けていたが、それでもなんとか終えることは出来た。

そうだ、冒険ではクロナたち三人とだ。

大丈夫。

共闘までに強くなれば・・・。


「おい、ユウ・・・大丈夫か?」


ナルが苦笑いをしながら僕の肩に手を置いて言った。


「うん、大丈夫だよ。」


僕も苦笑いで返す。


「そっか、さっ!飯だ飯だ!」


僕を元気付けるために陽気に振舞ってくれているのだろう。

改めてナルは優しいなと笑みがこぼれる。


「ちょっと待って。」


僕の前を歩く三人を追いかけようとしたそのとき。

誰かが僕の手を掴んだ。


この声は・・・。


恐る恐る振り返る。


「・・・な、なんですか。」


そこにいたのはやっぱりマリサだった。

また僕に何か言いに来たんだろうか。


「さっきは悪かったわね、あんなに怒鳴ったりして・・・。」


マリサの口から出たのは、そんな予想外の言葉だった。

あまりの衝撃にどこからともなく聞こえた「え・・・。」という声が僕の口からこぼれたものであるということを理解するのでさえ多少の時間を要した。

しかし、「嘘やん・・・。」という言葉を咄嗟に飲み込めたことは賞賛に値すると思う。


もしその言葉が口から漏れ出ようものなら、今日が僕の命日になっていたことだろう。


「い、いやいや、僕がダメダメなのがいけないんだし・・・。」


「それはそうだけど言い過ぎちゃったから・・・後であたしの部屋に来て、ちゃんとお詫びするから、絶対よ!」


「え、ちょ。待って・・・。」


マリサは僕に一枚の紙切れを渡して行ってしまった。

そこには宿の部屋番号が書かれている。


正直に言うなら行きたくない。

マリサは可愛い。

それは認めよう。

そんな子の部屋に招待されたなら男としては喜ぶべきだろう。


しかし、それがマリサともなると・・・こわい。

でも行かなければどうなるかなど火を見るより明らかだ。


「はぁ・・・。」


気が重い。

夕焼けで赤く染め上げられた広場の中心。

俯きがちに立ち尽くす僕の口から思わず溜息がこぼれた。

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