暗闇の中の光
「ねぇ、あのチームじゃない?」
「おい、やめてやれよ・・・。」
「くくく・・・。」
僕達のチームにニヤニヤと嫌な笑みが送られる。
その視線が僕だけに送られるものであるなら自業自得だと納得できる。
しかし、僕のミスを命を懸けて補ってくれた三人までが馬鹿にされたような目で見られるということに、僕の心は激しく傷つく。
言い返したいが言い返せばまた三人に迷惑がかかってしまうので言えないという歯がゆさが、さらに僕の心のヒビを広げた。
「少年、気にするな。」
エリーナさんが周りに聞こえないほどの小声で言ってくれる。
クロナたち三人も、僕の話を聞いても嫌な顔一つせずに「気にすることない。」と言ってくれた。
「ふぅ・・・がんばるぞ。」
僕が呟いた独り言にみんなが笑顔で返してくれた。
「はぁ!」
「ギィィイイイ!」
暗い洞窟内。
ゴブリンが地面に倒れる音が幾重にも木霊する。
真っ赤に染まったダガーを持ち肩で息をする僕の元に、三人が笑顔で駆け寄ってきた。
「今の良かったぞ!」
「ですねですね!」
「うん。」
僕はバクバクと鳴り止まない鼓動を落ち着かせるために一度大きく深呼吸をした。
「・・・ありがと!」
そして三人の笑顔に僕も笑顔で返す。
「なかなか連携が取れていた、甘やかすつもりはないがこれならすぐに開いている他のチームとの差も埋められるだろう。」
後ろから僕達の様子を見ていたエリーナさんが僕の背中を叩きながらそういった。
本人は軽く叩いてるつもりなのだろうが、結構痛い。
最初は怖い人かと思ったが、実はとても優しい人なんだなと気付く。
「昨日は説明できなかったからな。」
「「「はい。」」」
エリーナさんはゴブリンの死体の前でしゃがみこむと僕達に「来い。」手招きした。
「ゴブリンの小さな角は強度の問題で装備には向かないが、粉末状にして薬草なんかと調合することで薬の材料になる・・・。」
そう言うとエリーナさんはダガーの先端を角の付け根に刺して、てこの原理でそれをとった。
てこの原理を使えば綺麗にスポッと取れる。
「調合するには調合士関連のスキルが必要になってくるが、採取して店に売るだけでも少しは旅費の足しになるだろう。」
「なるほど。」
「よし、やってみよーぜ。」
「うん!」
全員で一つ一つ回収していく。
地味な作業だが、これも僕達の仕事だ。
「ユウの綺麗ね。」
「え、あー、ありがと。」
取った素材を一箇所に集めているときにクロナが感心したように言った。
しかし、クロナの持っている角もとても綺麗な状態だ。
「ぷぷぷ、ナルさんがとったの汚いですね・・・。」
「う、うっせ!ベロニカだって傷だらけじゃねぇか!」
「これはもとからついてたんですー!」
「どっちも汚い。」
ベロニカとナルが言い合っていると、クロナが辛辣な言葉で一括した。
その様子を見て僕はふき出してしまった。
「お前達、気を抜くな」
「「「はいっ。」」」
笑いあう僕達をしばらく見ていたエリーナさんが気を引き締めるように言う。
僕は目の端に浮かぶ涙を拭いてダンジョンの暗闇に視線を向けた。
今、僕が見据えている僕達の進むべき道に広がるのは、どこまでも続く闇だ。
でも、どんな苦難だろうとどんな闇だろうと・・・この四人ならそこに光が生まれると僕は確信した。