破滅の足音
「彼はまだ犯罪者ではない、軍の王都秩序保安部隊には容疑者及び被害者の証言が真実であるかを調べる魔道具がある・・・。」
ライザー中佐の口から出たのは予想外の言葉だった。
その言葉を発しているときの彼の目は私を睨んでいるような気さえした。
ばれている・・・?
バレテイル・・・?
いや、ありえない。
だって・・・でも・・・。
「・・・ど、どーするのよ。」
「なにがですか。」
私がシンにしか聞こえないような小声で問いかけるが、シンは私の目も見ずにそういった。
なにがですか、じゃないわよ!
馬鹿なの?
こいつってこういうとこあるのよね。
頭がいいからあの使えないやつを陥れるための作戦に協力してもらったけど。
「キョロキョロしないでください、怪しまれますよ。」
「わかってるわよ・・・!」
あ~、むかつく!
最初はちょっとかっこいいかもなんて思ったシンの澄ました態度も、こんな状況になってみると腹が立つということを私は知った。
「もうお手上げです。」
「え・・・?」
「ですからお手上げです・・・まさか国にそんな道具があるなんて思いもしませんでした。」
「ちょっと・・・!適当なこと言わないでなんとかしなさいよ・・・!!」
私は珍しく焦っていた。
ムカつくやつを蹴落とすためにやったことで自分が辱めを受けるなんて、そんな間抜けなことはない。
それにここはたとえるなら中世の国だ。
そこで英雄として扱われる人を陥れたとなれば不敬罪で極刑なんて事もありえる・・・。
「ふん・・・。」
シンが悩むような唸り声を上げた。
これも珍しい。
「ちょっと・・・。」
「・・・。」
「ちょっと・・・考えがあるなら早く言いなさいよ・・・!」
私の言った言葉に、シンは初めて視線をこちらに向けた。
「ばれた後に泣いて彼に許しを請うか・・・。
「絶対いや!」
謝るなんて無理!死んでも嫌!
私の否定の言葉のあとシンは一呼吸おいて口を開いた。
「なら、彼を殺す。」
「え・・・。」
こ、こ・・・殺す?
「いくらなんでも・・・。」
でもやらなければ・・・。
「僕達の首が飛びますね。」
私の心の声読むのやめなさいよ。
でも確かに、殺してしまえば取調べは出来ない。
「・・・あ、でもあいつが死んでも私達がいれば取調べは出来るんじゃ。」
「出来てもしないでしょう、犯人が捕まえられないのに捜査する意味がありませんから。」
なるほど・・・。
でも殺すって・・・。
「ご安心ください、事故に見せかけます・・・これを使いましょう。」
シンが私に差し出したのはこの世界の常識を覚える講座で私達に配られたこの世界のガイドブックのようなものだった。
その中の一ページ。
そこにはこちらの世界の文字でこう書かれていた。
『迷宮の構造。』