プロローグ
「まだすねてるの?」
加賀雄太が流れる景色を見ていると隣の母親が聞いてきた。
「別に・・・」
「いいかげん切り替えなさいよ、もうすぐでおじいちゃん家つくんだから」
「分かってるよ」
加賀雄太がそっけない返事をすると母親はあきれたような顔し運転に集中した。
今加賀雄太は母親と二人で車に乗り祖父母の家に向かっている。
しかし、加賀雄太の態度は誰から見ても機嫌が悪かった。別にこれは加賀雄太が祖父母に会うのは嫌だからというわけではない。むしろ加賀雄太は祖父母に会いに行くこと自体は嬉しいと思っている。
しかし、タイミングが悪かった。
祖父母に会いに行く日が楽しみにしていたヨルト・リアトの絵画展との日がカブってしまったのだ。
ヨルト・リアトの絵画展は約10年ぶりだった。それを加賀雄太はとても楽しみにしていた。高校生にもなっても前日には楽しみすぎて眠れなかったくらいだ。
それなのに今日になって両親から突然祖父母の家に行くといわれた。
何でも祖父が発病して入院したらしい。そのための入院の準備や家にある持ち物整理を手伝って欲しいと祖母に頼まれたらしい。
朝一に掛かってきたのですぐに動けるのは父親だけで、父親はすでに祖父母の家についているのことだった。
母親と加賀雄太は準備をした後行くことになった。
その結果加賀雄太は楽しみにしていた絵画展にいけなくなってしまったのである。
「・・・」
流れる景色がだんだん建物が少なくなり緑が増えて代わり映えのない景色になってくる。
昨日眠れなかったこともありだんだん加賀雄太のまぶたは重たくなってきた。
加賀雄太はそれに逆らわずまぶたを落とし、やがて静かに寝息を立て始めた。