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8話 特性:主人公

「この娘泥棒が!ぶっ飛ばしてやる!」と叫ぶ男......の腰にすがりつく形で語り部殺しも出てきた。


「お父さん、やめてー!この人達の人間性は私が保障するから!一本背負いされて、肩外されて、縛られたけど、いい人達だからー!」


フォローになってねえ......。



そして誤解を解くこと数十分、やっと家に入れてもらえた。


主に姉ちゃんのおかげで。

姉ちゃんは、基本的には自由奔放で、傍若無人で、シリアスブレイカーだけど、やろうと思えばそれなりにいいとこのお嬢様的な優等生を演じることもできるのだ。


語り部殺しのお父さんからやっと解放されて、彼女の部屋で一息つく。


「自分の部屋持ってるんだな、お前......うらやましい」


広さは6畳ほどか。自室としては十分な広さだろうが、3人も入ると少し狭い。


「え?持ってないんですか?」


「姉ちゃんと共同だよ......中学生(14歳)と高校生(17歳)で男と女だぜ?普通分けるよな......」


「それは......色々大変ですね......色々......」

色々を強調すんな。


「そういや、語り部殺しは何歳なんだ?」

彼女の容姿からすると、13くらいか。声が少し低めなのは元々だろう。


「19歳ですねー」


「19!?」

「19!?」


俺より年上、だと......。


いや、別に年功序列が厳しい環境で育ったわけじゃないし、年上が相手だと背筋が伸びる!なんてことはないけど......19か......姉ちゃんよりも年上......。敬意をはらったほうがいいのかな。


「時に、語り部殺しさん」

「さん!?」

「異世界から来た我々愚民どもに、何か食べ物を恵んで頂けると、大変嬉しいんですが......」


もみ手をしながら言ってみる。

この世界に来てからどのくらい時間が経ったのだろう。どれぐらいの時が流れたのかはわからなくても、お腹が空いてるということはわかる。何か口に入れたいところだ。


「いや、別に年上だからって敬語使わなくてもいいですから......それに、あなた達が敬語を使い始めたら、私の個性でもある、ですます口調の影が薄くなるじゃないですか。なので、もっとフランクな言葉使いでお願いしますよー」


「それもそうか。おい語り部殺し。飯持ってこい」

「殴りますよ?」

「ごめん俺が悪かった、全面的に過失を認める、だからご飯下さい......」

「ったくもう......少し待ってて下さいね」

部屋を出て行き、階段を下りていく語り部殺し。彼女の部屋は2階にある。キッチンは1階なのだろう。


「どんな料理が出てくるかしらね」

姉がわくわくした表情で言う。


「ギャルゲーを知ってるくらい日本文化が浸透してるんだ、ぶっ飛んだ料理は出てこないだろう」

「だといいけど......にしても私達、完璧に居候よね」

「言うなよ......悲しくなってくる」


「【地の文】読めるから、あんたのことを主人公って言ってたけど......超能力があるわけでも、すごく頭がいいわけでもないのに、どうしてあんたがあの子の主人公なのよ」

「きっとこれから右手に宿りし漆黒の力が」

「本気で言ってるの?」

「まさか。確かに俺は異世界の物語が好きで、アニメが好きで、中二病で、中学二年生だけど......」

「意外と根にもつわね」

「自分に何ができないかくらい、知ってる......つもりだ」

「それならいいけど」


「俺に主人公以外に特殊ステータスがないことは、彼女も理解してる。それなのに仲間になりたがって、ご飯までくれる。この世界の<主人公>に対する信頼度は一体なんなんだ......」


「私はモブらしいけどね」


「主人公より強いモブはモブとは言わない」


「おまったせしましたー!」

ここまで話したところで、語り部殺しが戻ってきた。山盛りのパンが入った器と、水を抱えて。

「今、お肉焼いてますから、焼き上がるまでこれ食べてて下さい......鹿肉大丈夫ですか?大丈夫ですよね!」


そう言い置いて、また下に下りていく。

「鹿肉だってさ」


「食べたことないわ」


「俺もだよ......それに<主人公>目線からの疑問を言わせてもらうなら、」

話題を戻す。

「一体、何が俺達の物語の目的で終わりなんだろうな」


「異世界あるあるから言わせてもらうと、魔王討伐ってのが一般的ね......あと私達は転移してここにきたわけだし、もとの世界への帰還もその一つでしょうね。あとであの子に、この世界に魔王がいないか聞かないとね」


「現状、俺達に確固たる目的はない。目的がない以上、行動を起こす理由がない。主人公が行動しなければ、物語として成立しない」


「あら、詰んでるじゃない......このパン美味しいわよ、あんたも食べなさい。まあでも目的がないことについては、この私が大丈夫だと保証してあげるわ」


「何が大丈夫なんだ」


「あんたには特性:<主人公>があるからよ......このパン美味しいけど、バター欲しいわね」

水をゴキュゴキュ飲み干す。


「別に異世界系の主人公に限らず、<主人公>っていうのはね、日常を非日常に変える力があるのよ。だから体は子供、頭脳は大人の探偵君はありえないほど頻繁に、事件に遭遇する......()()()|な

《・》()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「主人公に一番必要なのは、強さでも頭の良さでもない。日常を非日常に変える力。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だからまああんたに特殊な力がないことについて気にする必要はなし......そしてあんたは主人公として私と異世界に転移して、主人公として語り部殺しを仲間にした。日常を非日常に変える力はバッチリある。」


「......」


「つまり、コ○ン君が散歩してたら死体を発見してしまうように、あんたもトラブルを引き起こしてしまうってことね。そしてトラブルが起きれば、()()()()()()()()()()()()()


「それは嬉しい......とは言い難い意見だな。特性:<主人公>か......」


おお。このパン本当に美味しい。



「お肉焼けましたー」

語り部殺しが戻ってきた。まあとりあえず食べよう。


「見た目は牛肉だな」

「鹿、食べたことないんですか?」

「うん、日本では中々食べる機会がなくてな......」


一口食べてみる。

「......」

「どうです?」

「うまい」


いや、本当にうまい。臭いが苦手な人もいるだろうが、味はほとんど牛肉だ。これはいける。


「美味しいわね」

姉ちゃんも満足そうだ。何より何より。


お腹がすいていたこともあり、俺達はしばらく、夢中になって肉を噛み、パンを口につめこんだ。その様子を、語り部殺しはニコニコしながら黙って見ていた。


......なんでニヤニヤしてるんだ。


「いえ。仲がいいなあと、思っただけです」

地の文をナチュラルに読めるって、小説の登場人物としては本当に便利だな。


「俺達みたいなのを、仲がいいとは言わない」


「そうですか?」


「ああ。姉じゃなかったら、近づきもしないタイプの人間だ」


「でも、姉じゃないですか」


「それが問題だ」


「私の悪口を言っていることだけはわかるわね」



外が暗くなってきたのが、窓からの明かりの変化でわかる。

そういえば、聞きたいことがあったんだ。



「なあ。この世界、夜は存在するのか?」


「ありますよ。普通に。どうしてです?」


「いや、月が4つも空にあるからさ......太陽が沈んでも明るいんじゃないかと」


「ああ。それなら、後で外に行きましょう。説明するより、見た方が理解できると思います」


......理解?




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