真実、その2
カミナリの妖精の話は続く‥‥‥
『我々妖精は、人間にたいして、しかも特定の人間にしか願い事はしてはいけない』
「ええ、知ってます。特定の人間でもその中で私達妖精に何かを感じ取ることができる人間のみに願い事を叶えさせることも‥‥‥」
カンナはカミナリの妖精の言葉に、付け加える様に言った。
『うぬ。そして我々妖精もまた、願い事を叶える事の代償として命を叶えた人間にかけていることも‥‥‥』
カンナは頷きます。
『‥‥‥いつ頃からそのようなルールになったかは妾にもわかなぬが‥‥‥』
カミナリの妖精は何か引っかかるような言い方で話します。
(人間の欲は果てがない。願いを叶えれば、それで満足するのは一時。また別の欲が‥‥‥願い事が欲する。願いをかけた物、願いをかけられた物、罪の深さは同じ。両者はいつか後悔する‥‥‥)
『人間の欲は恐ろしい。願い事しだいでは、人や我ら妖精も不幸になる‥‥‥
だから30日間しか願いが続かない‥‥‥その期間中に願いをかけられた者(この場合は僕)が幸せを心底感じなければ‥‥‥』
(なら、幸せは?幸せはどのように感じる?それは人それぞれ。願いをかけた物、願いを叶えた物両者が幸せになれば周りも幸せになる)
『あやつの心が心底幸せを感じるなら、願いを掛けた妖精は‥‥‥カンナは命を落とすことはない。偽りの幸せではなく、本当の幸せを‥‥‥』
カンナは頷く。そして、
「私はあの人、ヒロに願いを叶えた。今でも叶えたことが良いか悪いか分からない。けど、初めて触れた感覚、DVDの中にいた時ヒロと触れた感覚をわたしは信じたい」
胸に手を添えながらカンナはニコリと笑顔で言った。
僕がスマホを取りに戻って来ていたことに気づかず話し続けるカミナリの妖精とカンナ。
隣の部屋で、僕はスマホを握り立ちすくんでいた。
『‥‥‥僕はあいつに‥‥‥カンナに願い事を叶えて貰った‥‥‥そして幸せだと感じていた‥‥‥けど‥‥‥その幸せは偽り?自己満足の偽り?本当の幸せではない?じゃぁ、本当の幸せてなんなんだ?僕に見つける事が出来るのか?僅か30日足らずで‥‥‥しかし‥‥‥でないとカンナは‥‥‥消えてしまう‥‥‥』
不安が僕を覆いだした。
カミナリの妖精とカンナはまだ何かを話しているが僕の耳には入らなかった。あまりにも愕然とした内容に‥‥‥
「あっ‥‥‥ヨッシ迎えに行かないと」
まるで魂の抜けたような僕は駐車場へと戻って行った。