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プロローグ

 稜線の向こうから這い寄るは、混沌と災厄の具現者共の群れ。

 醜い。

 その一言に尽きるそれは、世界侵略を企てて僅か一年足らずで二つの大陸を制圧した。

 北米大陸、ユーラシア大陸の半分は既に敵の手中に落ちている。


 『フリークス』と、奴等は名乗った。

 古くは神代の刻より存在する秘密結社で、かつてより人類と敵対する者として存在し続けていたという。

 数千年もの間、水面下でのみ行動してきた『フリークス』だが、いつの間にか巨大な軍事力を持つようになり、人類史上最大の国家『人類統一連邦政府』を相手に宣戦布告を行った頃には世界を転覆させるだけの力を誇示していた。


 『フリークス』の手繰る兵器は数多く、ライフルやミサイルといった近代兵器群は連邦政府軍と遜色なく、兵士の錬度も高かった。

 それだけ見ても『フリークス』は連邦政府にとって十分に脅威だった。が、それだけでは連邦軍を圧倒するには至らない。

 如何に平和に呆けた軍隊であろうと、最新鋭の装備で固め、幾度の訓練を積んだ兵士は簡単には屈する事はない。


 しかし、現状は劣勢を強いられている。

 何故か。

 それは『フリークス』が用いる未知の兵器に依るところが大きい。

 『不死人(アンデッド)』と呼ばれる生物兵器である。


 詳細は研究段階である為、誰にも分からない。

 どういった仕組みでこんな醜悪な兵器が造られるのか、あえて知りたいとも思わないが。

 しかし、生物兵器『不死人』は、瞬く間に世界を混沌の渦の中へ叩き落とした。


 奴等を形容する言葉は幾つも存在する。

 ゾンビ、グール、スケルトン、キメラ、ゴーレム、ワーム。

 まるでファンタジーの世界にしか存在しないような化物が、戦場を燃え上がらせている張本人だ。『不死人』とはそれらの総称である。


 信じがたいだろうが、これらは全て人間を含む元生命体なのだ。

 奴等は生死を問わず人間やその他生物を利用し、おぞましい生物兵器を造り出したのだ。


 勿論、元が地球上に存在する物であるなら、従来の兵器でも対応は可能だ。敵の八割が死体を再利用した物であり、残りの二割も生命を放棄した半死人という事もあって、容赦の必要も無い。

 しかし、圧倒的な物量と巧みな軍略を前にして、連邦政府軍は敗走に次ぐ敗走を演じていた。


 死体が素材ならば、撃破したところで再利用され際限無く投入された。

 例えばゾンビの腐肉を吹き飛ばしたとしても、骸骨兵として再度前線に戻ってきてしまうのだ。奴等を完全に沈黙させるには、五体を粉々にするか脳味噌から脊髄までを破壊するしか無かった。

 それ故、連邦政府軍は幾度もクラスター爆弾を『不死人』が形成する軍隊に投下した。効果の程は、可もなく不可もなくという微妙なところだった。むしろ、いたずらに土地を破壊しているようなものだった。

 こうして特に有効な手段を見出だせぬまま、連邦政府軍は戦線縮小を強いられていた。


 そんな時、新たな兵器が開発された。

 目には目を。

 そんなコンセプトで開発された兵器は、『適性銃器』と銘打たれた。

 『適性銃器』は決して動作不良を起こすこと無く、弾薬を無限に産み出す事が出来る正に夢のような歩兵用火器であった。

 更には『適性銃器』を専門的に扱い対不死人戦闘に特化した兵士を育成し、『ガンスリンガー』と名付けて千人規模の部隊を開発部はほぼ独断で用意していた。

 当初、『適性銃器』のほとんどが旧時代の銃器の型をしている事に懸念を抱いていた上層部だったが、試験的に投入された小隊の活躍や、銃器は実は外観や特徴が似ているだけの全くの別物である事などを知るや、即座に大規模投入を決定した。

 こうして対不死人殲滅部隊『デッドキラー』が誕生した。


 そして千人の『ガンスリンガー』は、ワシントン奪還作戦の要として北米大陸へ投入される事となった。

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