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眠り姫の穏やかなゲーム内睡眠  作者: 糸岡 めむ
8/24

8 「姉と息子と街へ」

○東の森 死神邸


「今日は街へ行きます」


私は椅子から立ち上がり宣言する。


「あら、いきなりね」

「なんか用事か、母ちゃん」

「率直に言うと、食べ物が足りない」


そう言って机の上を見る。

たまごをふんだんに使ったオムレツ、大量厚切りベーコン。山盛りのサラダ。

タカシが来てからの食材の消費がとても増えている。この息子がそれはもう食べるのだ。スライムは食事でもレベルが上がるらしく、もうレベルは4に上がっていた。それはいいのだが、お金もあまりない。なので、


「モンスター狩りしつつ、お金を貯めて、食べ物を沢山買おう。タカシ、40秒で消化しな。お姉ちゃんはゆっくりでいいよ」

「わかった!」

「あらあら」


タカシが大きくなりテーブル全体を覆い尽くす。味が混ざってすごいことなりそう。



街へ向かって森を歩く。

今日は昨日と違ってプレイヤーの人がいるようだ。平原が攻略されたのだろう。

適当なモンスターをお姉ちゃんと一緒に倒していく。基本私の杖の不意打ちフルスイングで倒せなかったら、お姉ちゃんが鎌で倒すか、タカシが槍のような触手を作ってぶっ刺す流れだ。スライムに対しては、【支援魔法】のファイアエンチャントを武器に使ってから殴っている。タカシもお姉ちゃんから加護を貰ったので、隠密行動はばっちりだ。頭の上から動かないから関係ない気もするけど。

ふと思い立ち、私の頭に乗っているタカシに声をかける。


「そういえばあんたはどういうステータス割り振りしてるの」


私はステータスがランクでしか見えないので、適当にステ振りをしている。

本来テイマーは、仲間のモンスターのステータスの割り振りを決めるらしいのだが、私は面倒なので本人に任せている。人がどうこう口出しするもんでもないしね。


「やっぱ防御系だなー。マリィがいるから攻撃は平気だろうし。母ちゃん弱そうだし俺が守んねーと」


まだ攻撃らしい攻撃は受けていないが、もしもの時は触手なりで守ってくれるのだろう。


「頑なに私の頭から降りないのはそういう理由で……。ごめんね、あんたのこと誤解してたかも」

「降りないは動くのがめんどいからだなー。AGIに振ってないから足が遅いってのもあるけど」

「ふんっ!」


頭に乗っているタカシを、私ごと頭突きすることで、思い切り木に叩きつける。

くそぅ、私の感心を返せ!


「ふふーん、スライムに物理攻撃は効かないぜー母ちゃん」

「むきいーっ!」

「二人とも魔物にばれちゃうから落ち着いて」

「む、ごめんねお姉ちゃん」

「ふふ、仲が良いのね。ちょっと妬けちゃうかも」

「まあ親子だからな!」

「あんたは黙ってて!」


「グオオオオォォォゥゥゥ」


そんな私たちの声が聞こえたのか、魔物に見つかってしまった。大きなクマだ。


「罰としてあれは二人でどうにかしなさい」


お姉ちゃんに叱られてしまった。

くっ、このクマ完封して、許してもらうついでに頭も撫でてもらおう。はっ!頭にタカシ乗ってるから撫でてもらえないじゃないか。クマめ許さんぞ!

あ、そういえば、ゲーム始めてから初のちゃんとした戦闘かもしれないね。


「私が杖で殴るから、あんたは防御任せていい?」

「おっしゃ!俺も隙を見てぶっ刺して溶かすぜー」


「ファイアエンチャント。リインフォースパワー」


クマの突進が私に到達するギリギリまでねばり、呪文を発動する。

そして、クマが私の杖の射程に入ったところで、振り上げていた杖を思い切り振り下ろす。

「タカシ!」

同時にタカシが槍状の触手を勢い良く伸ばした。

私の杖は脳天に、タカシの触手は眼球に突き刺さり、一瞬の停止を挟んだ後、クマは粒子を散らして消えていった。


「いえーい」

「やったぜ!」


私が両手をタカシの前に配置すると、タカシの触手伸びてきて、ハイタッチとなった。

結局、ちゃんとした戦闘とは言えなかったけど、まあ及第点だろう。だよね?


「お疲れ様、ハルカちゃん、タカシ君」

「一か八かだったけどどうにかなったよ。あんなに速いクマなんか目で追えないから、一発勝負に賭けて良かったよ」

「まぁ母ちゃんいなくても、俺が触手5本くらい出せばすぐ終わったんだけどな」

「むぅ、じゃあ次はバフだけかけてタカシに任せるからね」

「おう!任せとけ母ちゃん!」

「あらあら」


普通の戦闘職の人たちはあんなのといつも戦っていたのだろうか。現実でもスポーツとかやってないと厳しそう

私?無理無理。運動神経ダメダメだからねー。なんなら何も無いところで転ぶくらいは普通にやるよ。


さて、プレイヤーの人たちに見つからないように、【隠密】全開で再び進み始める。

先ほどの宣言通りタカシを乗せた私がモンスターの背後まで歩き、タカシが触手で急所を串刺しにする戦闘スタイルを敢行している。すごい楽だね。お姉ちゃんがタカシにも加護をくれたおかげでタカシも【隠密】を得たから、万一にもバレることはなさそうだ。

イノシシやらクマやらを倒しているとようやく森から脱出した。モンスターが強かったからかレベルも結構上がったし満足だ。


平原を歩く途中で、一度だけ大きなオオカミがいたんだけど、それはタカシの触手じゃ倒せなかったよ。頭貫かれて死なないってどうなってるんだろうね。まぁ、お姉ちゃんがすぐに仕留めてくれたんだけど。タカシがワンパンで倒せなかったのは初めてだったから、親子共々びっくりしたよね。……今完全に無意識でタカシを子どもと認めていた。まぁ、生意気なお子ちゃまって感じで可愛いっちゃ可愛いんだけどねー。アユは昔から大人しい子だったし。


さぁそろそろ街だよ。

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