23 「チアマッチョ300年の呪い」
○始まりの街 闘技スタジアム 地下牢獄
僅かな灯りが頼りの暗闇で強大な魔物が声を上げた。
「は〜るばる来たぜ豚箱〜」
はい、リビ爺が歌っている通り牢屋です。
「さて、オペレーションプリズンブレイクの概要を説明ーー」
「しないー!しーなーいーよー!」
ばたばたばたばた。
お姉ちゃんの膝の上でじたばたして、話を遮る私。多少子供っぽいが止むを得まい。
すると、お姉ちゃんが私の頭を撫でるモードになり、物騒なお話をやめてくれた。まぁ、私の頭1つで平和が保たれるのならば安いもんですよ。
ふぅ、ちょっと落ち着いて状況を見直そう。
結局、そのまま闘技場に墜落してたんだけど、下にいた黒ロープのお婆ちゃん魔法使いさん(強そう)がなんらかの魔法を発動させてくれて、私達はふんわりと着地した。
そして、そのお婆ちゃん魔法使いさん(強い)に色々説明したら、「これでも食べて待っててね」って言って飴の入った小瓶をくれた(すき)後、そのまま牢屋に連れていかれた(ハードボイルド)。以上。
……うん。飴くれるような優しいお婆ちゃんに、鉄格子の中にぶち込まれたショックは多少なりともあるよね。
まぁ、でも、しばらくすればここから出してくれるらしいので、待機しているという感じ。飴は1人1個ずつ6人で分けました。りんご味でした。
隠密侵入作戦が失敗してしょんぼりしたみんなを慰めたりとかもあったけど、その辺は長くなるので割愛。
そのまま雑談を続けていると、どこからともなく先ほどの魔法使いのおばあちゃんの声が聞こえてきた。
『はーい、受刑者の皆さんは外に出てくださーい』
ガチャリ、と鉄格子の鍵が開いた音がした。
なにより、人生で受刑者って呼ばれることがあるとは思ってなかった。
「……えーと、とりあえず外に出よう…………か…………」
声が詰まったのは私の視界、つまり鉄格子の外を左から右に流れていったモノが原因だ。
(薄暗くてよく見えなかったけど、チアのコスプレしたムキムキの男の人たちが死んだ目をして歩いていった……)
そもそもここには私達以外いないと思ってたし、実際物音ひとつしなかった……と思う。
色々疑問は残るけれど、とりあえず外に向かおう。
よっこらせ、と。
「お待ちなさい、ハルカちゃん。これを着ていくのよ」
お姉ちゃんの手には私に合ったサイズのチアユニフォームとポンポン。
「出どころは」
「さっきおばあさんから受け取っておいたわ」
「気づかんかった……。えーと、拒否権は」
「防具は装備しないと意味がないわよ!」
「あの?」
「防具は装備しないと意味がないわよ!」
お姉ちゃんがいきなり防具屋の店主に変わってしまったし、これは着ないと話が進まないやつだ。
まぁ、チアは以前南穂に着せられたこともあったので別にいいかな。何がいいのかわからないけど。
「タカシー」
「あいよっ!」
即座に周囲を銀色のスライムの壁に囲まれる。
さて、着替えを終えて外に出ましょうかね。
そろそろ闘技大会の予選も始まろうかという頃、私はチア服で待機しています。なにやってんだ。ちなみにお姉ちゃん達はチア服は着てません。許されない。
さて、道なりに進んでいると、ある程度の広さのある場所に着いた。
そこで、とりあえず適当な人に話しかけた。
「あ、あのー、大丈夫ですか?あと、大丈夫でしたら状況を教えて欲しいのですが」
「……あぁ、これはな、チアマッチョ300年の呪いだ」
「チアマッチョ300年の呪い」
「そうだ、300年前から続く受刑者強制参加の辱めだ」
「こんなしょうもないこと300年も続けてたんですか……」
「あぁ、記録によるとな。あのババア発案の血の流れない刑罰なんだが、これが俺等にとっちゃかなり効く」
「というと?(ババアってあの魔法使いのおばあちゃんかな?でも年齢が合わないし違うか)」
「お前、そりゃ、アレだよ、ちょっと街で幅利かせてた荒くれ者がこんな服着て踊るんだぜ。冷静に考えなくても死にたくなるだろ」
「(なんて有効な刑罰なんだ)」
そこで荒くれ者Aさんは声を張り上げた。
続いて他の荒くれ者さん達も叫ぶ。
「だが!今年はぁ!!」
『違ああぁう!!!』
適当な人に話しかけたつもりがリーダー格だったらしい。
「ここにいるのは!!」
『女の子!!!』
そう言いながら、一斉に私にポンポンを向けてくる。
「ならば俺等は!!!」
『裏方!!!裏方!!!裏方!!!』
こいつら私を矢面に立たせる気か!1人だけ目立つのはやだよ!
どう阻止するか考えていると、そこで、例のおばあちゃんがやってきた。
「おや、ちゃんと皆さんお揃いだね」
『はい!チーム【チア少女と有象無象】準備完了です!!』
先手取られた!
「よしよし、じゃあ皆さんこちらへー」
『イエスマム!!!』
あぁ、もうっ!
友人に後書きはツイッターじゃねぇぞって骨格歪
むくらい殴られたので来年覚えてたら気をつけます。
それでは良いお年を。
あと、うるう秒だけは絶対に許さない。




