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眠り姫の穏やかなゲーム内睡眠  作者: 糸岡 めむ
2/24

2 「【眠り姫】」

○篠宮家


「……姉様はそれでやめたんですか?」

「うん。教授が嘘ついたのがいけないんだよ」

「でももったいないです!もう一回やりましょう!」

「でもスキルとか全部ランダムにしちゃったしなぁ……」

「ランダムでしか出ないレアスキルとかもあるので見るだけでも見てみましょう?ね?」

「そこまで言うなら……」


妹の南穂の説得に頷く。

レアという言葉にちょっと反応したのは内緒だ。


夕食時。

南穂は今をときめく高校一年生で私より身長が20センチも高い。

20センチも高い。

私のことをなぜ姉様と呼ぶのかはよくわからない。

成績も優秀で、身内の欲目抜きでも美人だ。活発そうな黒髪のショートボブで、スタイルも良い。なんというか……秘書系?

私の様な小動物的モテ具合とは違うモテ具合だろう。


「βの時は身長弄れたらしいから、教授は本サービスでもそうだと思ってたんじゃないかな」


今まで寡黙を貫いていた弟、歩が口を開いた。


歩は高校二年生だが南穂よりは背が低い。160センチはあるし、私よりはよっぽど背が高いが。歩はかわいい系の男の子でその方面からは人気が出そうだ。

あ、私の名前は篠宮 遥。


「あゆそれマジ?」

「マジだよマジ」


私の問いに応えタブレットを見せてくる。

そこにはVRMMORPG【サンクチュアリ】についてのまとめサイトが表示されており、その旨の記事があり、私と同様の悲しみを抱えた人のコメントが載っていた。

なんでもログアウト後に身体の感覚が違い危険だとかなんとか。

ログアウト前に訓練場とかに送還して現実の身体で歩かせるとかすればいいのに。

まぁ色々理由があるのだろう。


「うーん……」

「どうかしたんですか姉様」

「完全に変態淑女に嵌められたと思ってキャラクリエイト適当に済ませちゃった罪悪感に苛まれてる。せっかくこんな高いゲームくれたのに」

「大丈夫ですよ姉様!教授だったら中身が姉様ならどんなキャラでも愛してくれます!」


南穂はたまに大学に私を迎えに来るので、私にまとわりついている教授とも面識がある。


「なんか微妙に不穏なんだけど……まあいいかとりあえずもっかいログインしてみるよ」

「了解!向こうでフレンド申請送りますね!兄さんにも!」

「了解。僕もハル姉に送っておくよ」

「じゃ解散」


私の発言を締めに全員で食器を片づけて各々自室に戻る。






○始まりの街 噴水広場


《称号【最速の帰還者】を入手しました》


ログインしました。

中世ヨーロッパ的な王道の街並みだね。

それにしても、凄まじい人混みだ。大半がプレイヤーなんだろうね。

とりあえず、路地裏に避難しよう。人混みは苦手なんだ。


さて、また称号だね。一つ目の称号と一緒に確認してみる。


【第一旅人】

全ユーザーの中で初めて街に足を踏み入れた者の証

AGIにプラス補正


【最速の帰還者】

全ユーザーの中で初めてログアウトした者の証

AGIにプラス補正


なんかテキトーだな……。


《プレイヤー;ナホ・パレスティア からメッセージが届いています》

《プレイヤー;アユ・パレスティア からメッセージが届いています》


お、きたきた。

ちなみにパレスは篠宮の宮からだ。

我ながらセンスがないと思うがふたりには好評だった。特にナホ。ゲーム内でも姉様との繋がりがどうとからしい。よくわからない。

ささっとフレンド登録して、待ち合わせ場所を決める。

街の東口らしい。ええっと地図地図。


東口到着。街が広くて結構時間がかかってしまった。

お、ナホとアユ発見。

ナホは黒い髪をロングのストレートにした以外は変わってないのかな?

アユも銀髪になっているのに加えて、耳が長くなっている。背も低くなってない?ようこそ。確かエルフってやつだったかな。

「遅れてごめんね」

「いえ。姉様迷っちゃったんですか?」

「いや、称号貰ってその説明見てただけ」


称号を見ていた時間はそんなにかかっていないはずなので、単にこの二人が早足で来ただけなのだろう。言わないけど。


「称号!?もうゲットしたんですか!?」

「うん。なんか最速で街に来たのと、最速でログアウトした人だって」

「ふたつもですかー」


ナホが頭を抱えている。頭痛いならログアウトした方がいいよ。


「ハル姉、その称号のスクショ頂戴」

「はいよ」

「……これ掲示板にあげておこうか?」

「んー、アユに任せるよ」

「ん、了解」

「じゃあ早く行きましょう!」


ナホが復活していた。


「あっ、ちょっと待って。スキルとか職業とか確認したい」

「あー、姉様全部ランダムにしたんでしたね。それと、職業はレベル10まで冒険者で固定ですよ。その後分岐するんですって。あ、私は人族です」

「よく知ってんねー。っと、えーと、種族が人族でスキルが【支援魔法】【料理】【杖】【採掘】【眠り姫】だって」

「【眠り姫】」

「ハル姉【眠り姫】について詳しく」


掲示板に書き込んでいたアユが戻ってきた。

どれどれー


【眠り姫】

ランダム専用 女性専用

睡眠中HP、MP自動回復

睡眠中自分、及びパーティの全ステータス上昇

味方がプレイヤーの場合、今までパーティを組んだ時間に応じて上昇率アップ

味方がNPCの場合、親愛度に応じて上昇率アップ


これがレアなやつかね。

ほいスクショ。ほい送信。


「効果だけ見たら強そうだけど、私が寝てないといけないって微妙じゃない?」

「そうですよ!姉様の寝姿は誰にも見せません!」

「別に味方がプレイヤーである必要はないんじゃないかな。テイマーとかサモナーとかあるはずだし」

「せっかくなら犬とか仲間にしたいなぁ」

「ワンワン!」

「ナホ落ち着いて」


取り敢えず問題は置いておき狩りに出ることにした。

ナホが盾と剣のオーソドックスな剣士タイプで、アユが杖の魔法使いタイプだ。

私は支援で火力を上げてから殴るだけだ。


○東の平原


人がたくさんの原っぱって感じだ。……いやそれしか言いようがないよ。

三人でしばらく歩き、街が小さく見える所まで来た。

結構人は減ったかな?

おっ、四つ葉のクローバー発見。

そのまま周囲に何かないか探していると地面に穴が開き、その穴から、ウサギが現れた。あらかわいい。鼻なんかヒクヒクさせちゃって。

しゃがんで、両腕を開き出迎えようとする。


「あっ」

「げふぅ!」


後ろからそんな声が聞こえたと思ったら、お腹に衝撃が走る。枕投げで枕が当たった時の三倍程の衝撃だ。痛い訳じゃないのが救いだね。すごいびっくりしたのは事実だけど。


「姉様っ!」

「ハル姉それ魔物だけど何してんの」


え、魔物?

起き上がり、お尻をはたく。土とか付いてないけど気分でね。

ナホが駆けて行き、ウサギの耳を掴み、頭上でぶん回している。


「ただのウサギじゃないの?」

「赤いアイコンあるしどう見ても魔物でしょ」

「赤い……アイコン……?」

「赤いアイコン」

「そんなの無いけど」

「えっ」

「えっ」

「……もしかして【鑑定】?」

「それかなー」


ぶん回されていたウサギがデータの粒子になって散っていった。


「まぁ無いものはしょうがないよ。自分の目で判断しよう」

「ハル姉がそれでいいなら」

「姉様大丈夫?」

「うん平気。心配させてごめんね」

「それでなんの話?兄さん」

「いやハル姉が【鑑定】持ってないから敵の区別がつかないって話」

「それってプレイヤーとNPCのアイコンも見えてないんじゃあ……」

「ハル姉?」

「そんなものないね」

「「ですよねー」」

「ま、なんとかなるよ」

「でも姉様【採掘】持ってましたよね?」

「……もしかして石ころと鉱石の区別がつかないとか?」

「モノによってはそうなるかもね」

「アイテムボックスは無限なので全部詰めてみるってのもありかもしれませんが」

「んじゃ、そういう方針でやってみるよ。ダメだったらまた相談乗って頂戴」

「わかった」

「わかりました」


その後三人でウサギやオオカミを狩ってレベル上げをして、全員のレベルが5になったところで街に帰り、宿でログアウトした。ちなみに、オオカミは動きが敏捷でなかなか倒せなかった。周囲にはそれなりにオオカミで死に戻りしてる人もいたしね。


ちなみに二人にはステータスが数字で表示されているらしいが、ここも【鑑定】の差なのか私にはランクでしか表示されなかった。

個人的にはこっちの方がわかりやすいので嬉しい。いや負け惜しみじゃないよ?




ハルカ・パレスティア Lv5 冒険者Lv5

HP F-

MP F-

STR F-

VIT F-

DEX F-

AGI F

INT F-

LUK F


スキル【支援魔法Lv2】【料理Lv1】【杖Lv3】【採掘Lv1】【眠り姫Lv1】


称号【第一旅人】【最速の帰還者】








【徒歩1分で】東西南北平原攻略二歩目【死の平原】


1.名無しのゲーマー

街の東西南北に広がる平原、通称死の平原の攻略スレです。

生き延びてその先の景色を見ましょう。

次スレは>>950でどうぞ。

(前スレ)




114.名無しのゲーマー

初期マップの分際で難易度が高すぎるんだよな

初心者みんな辞めるんじゃねえのかこれ

まあ全員初心者だけど


115.名無しのゲーマー

このゲーム何がやばいってプレイヤー殺した魔物がレベル上がってる所でしょ。そろそろ進化する奴とか出てくるのでは。


116.名無しのゲーマー

北に山、東と南に森、西に川か

見えてるだけに辿り着けないのが悔しいな


117.名無しのゲーマー

お ま た せ

(画像) (画像) (画像)


118.名無しのゲーマー

あっ


119.名無しのゲーマー

はい解散


120.名無しのゲーマー

>>117

ワイルドウルフリーダーは流石に草


121.名無しのゲーマー

既に書き込んであったか。

場所は南の門出て真っ直ぐ10分くらい。

こいつの出現後周囲のワイルドウルフが急に連携し始めた。

このままだと取り巻きまで進化するぞ。


122.名無しのゲーマー

プレイヤーで連合組むなりしないときつくねえ?


123.名無しのゲーマー

リーダー増えた


124.名無しのゲーマー

こんな平原にいられるか!俺は街に帰るぞ!


125.名無しのゲーマー

お爺ちゃんの豆知識じゃ。

リーダーが進化するとな、レイドボスになるんじゃ


126.名無しのゲーマー

リーダー三匹目入りましたー


127.名無しのゲーマー

へい毎度っ


128.名無しのゲーマー

南の門でレイド募集してるぞ


129.名無しのゲーマー

サービス初日でレイドが組まれるゲーム

それが【サンクチュアリ】だ!


130.名無しのゲーマー

俺も行くかー


131.名無しのゲーマー

実際世界初のVRMMORPGだしバランスはしょうがないっちゃしょうがないのかね。


132.名無しのゲーマー

デスペナが異常に軽いのが救いか


133.名無しのゲーマー

俺もレイドいくぜ


134.名無しのゲーマー

>>132

多分死んで慣れろってことだよなぁ。所持金1割減なんてあってないようなもんだし


135.名無しのゲーマー

始まりの街が本当に聖域になってんな


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