16 「生き急いだ方からお越しくださーい」
む。結構寝てしまったかな。寝心地がよくていけないね。ていうか、このゲーム始めてから睡眠時間増えてる気がするなぁ。
今、みんなは森で虐殺中だった。うんうん、元気でよろしい。
あ、レベル30になってる。今、寄生プレイが熱い。新規取得スキルは【隠蔽】にしよう。これで称号と合併されて、レベルが上がり、もっと隠れやすくなりそうだ。今は追われている身だもんね。逃げなきゃ。
とりあえず、アナウンスを見直そう。
あ、ログインして1つ目のアナウンス見忘れてたね。
へー、闘技大会。3日後って急すぎないかな。まぁ、私には関係ないんだけどね。次回以降パーティーで出場できることを期待、と。
ふむ。騎士団にはもう追われていないようだね。まぁ、犯罪者を街の外まで追うのもアレだろうし。
そして、賞金首については3日ほど他の人たちからPKされるかもしれないということだった。私にはお姉ちゃん達みんながついてるから多分大丈夫だと思うけど。そういえば、私死に戻りしたことないな。デスペナルティがどんなものかも知らないし。ヘルプ読めって話だけど。
そんで、次のアナウンスがこれ。
《ワールドアナウンス》
《ダンジョン:北の山の廃坑道が攻略されました》
《ボス最短討伐記録更新00:13:42》
む。ダンジョンが攻略されたらしいね。
……って、廃坑道?
私が初めてお姉ちゃんの家に行った時に使ったやつに通じる坑道かな?
そうだとしたら坑道を通って、家に来る人がいるかもしれないってことかな?
「ねえお姉ちゃん。初めて私が家に来た時の道をいろんな人が通ってくるかもしれないんだけど」
「ふふ。その道は既に埋め立て済みよ」
「おおう……。さすが抜かりないね」
(埋め立てるだけじゃ足りなかったかもしれないわね……。ハルカちゃんの就寝後、私有地の直下までの道を開通。私有地に入った途端にトラップでお帰り願いましょう)
(流石姐さんだな)
(畏まりましたマリィさん)
(この経験値トラップがうまくいけばさらにハルカちゃんを守りやすくなるわ。では、話は後ほど)
((((了解))))
「それで、今日はどうするー?しばらく人里には近寄れなさそうだけど」
「適当に狩りとピクニックはどうかしら」
「まぁ、それしかないよねー。じゃあ一旦家に帰ろうか。セルバス、ゴー」
「畏まりました」
家に帰ってお弁当作り中です。
そういえば、今使える【支援魔法】が全部【眠り姫】の劣化っぽいんだよね。いや、私が起きてる間に使える唯一といってもいいアクションなんだけど。あ、属性付与は【眠り姫】ではできないか。
それと、今のところ、【杖】と【採掘】が完全に死にスキルになってるんだよね。もう今となっては杖装備すらしてないしね。素手だよ素手。そういえば、ナホから一通り護身術は叩き込まれたんだった。確か、1番の護身術は人通りの少ない所を歩かないってやつだったはず。どうでもいいか。
はい、お弁当作り終了。
今は……3時半か。
……いけるか?
「ねえみんな。北の山にダンジョンが見つかったらしいんだけど……行かない?」
最近は料理中に掲示板を見るようにしている。
攻略以外のは見ていないけど。
「それはいいけれど、場所はわかっているの?」
「クリアした人達がダンジョンの場所とか公開してるんだよ。時間的にいけるか怪しいけど」
「ボスの情報とかはある?」
「えーと、アイアンゴーレムだって。物理攻撃が効きにくいらしいね」
「ゴーレム系はやっかいだな。我にできることは少なさそうだ」
「魔法攻撃っていうと、エムオとセルバスだけかな?あ、タカシはどうかな」
「スライムの溶解が効くのならあっさり倒せそうだけど」
「まーやれるだけやってみるぜ、母ちゃん」
「あ、起きてたんだね」
家を出て、北西へ向かいます。
北は山らしいけど、森と山の違いなんて、傾斜があるかないかぐらいじゃないの。知らんけど。
「あ、みんな、ポーションとかあるから必要なら言ってね」
特に魔法使ってるセルバスとエムオ。MPは大丈夫かな。
「おや?」
やたら大きな鳥が飛んでいる。多分、鷹か鷲。というか、こっちに向かって来ている。
あ、死んだ。
そりゃ、真っ直ぐ突っ込んで来たら斬られてやられるよ。
その後、ヤギやフクロウに襲われつつ目的地に到着した。結構時間かかっちゃったね。ヤギはどこにそんな数隠れてたんだってくらいの量で襲ってくるし、フクロウは遠くから魔法撃ってくるしで、結構厄介だったと思う。私は見てるだけだったんだけど。
ヤギはお姉ちゃんとリビ爺の○国無双的活躍で全滅して、フクロウはセルバスが見つけて【風魔法】で倒してたよ。
正直、ゲームしてるってよりはプレイ動画を目の前で観ている感覚に陥りかけている。私椅子に座ってるだけだもんね。まぁ、楽しいからいいけど。
そんなこんなで目的地に到達。
例によって地下鉄入り口的な所からダンジョンに侵入します。
この前のダンジョンとは違って、遺跡的な感じだね。床はきちんと石畳で舗装されているし、壁も同様。多分大理石かな。なんというか、清潔感に溢れているって感じ。
……いや、廃坑道感ゼロなんだけど。
あれかな?ここは一階というかロビー的な所で地下に行くと坑道になっているとか。
出てくるモンスターも石のゴーレムオンリーのようだ。壁や床がいきなり姿を変えて襲ってくるのはびっくりするけどね。
あ、そうだ。
「ちょっとつるはし使えるか確かめるから、次のゴーレム倒さないでおいてー」
ドロップ品が『大理石のかけら』だったので、生きている状態でつるはしキメれば塊が取れるんじゃないかという目算です。
ちなみに、壁につるはしは通用しないことは確認済みです。
「四肢をもいだ上で献上いたしましょう」
「いや、そこまでは……。……やっぱそれぐらいでお願い」
びびった訳ではない。
念には念を入れてね。
目の前に2メートル以上あるゴーレムって実際ものすごい怖いでしょ。モニター越しじゃないからね。
「お嬢ー、手足斬り落としたぞー」
「よし、では早速」
カーン。
カーン。
カーン。
胸の中央のいかにもコア的な赤い石を避けて、他の場所の大理石を掘る。
『大理石のかけら』
『大理石のかけら』
『大理石のかけら』
いや、せっかくなら塊が欲しいよ。
見切りをつけ、コアをつるはしで貫く。あ、つるはし壊れた。まあ、替えは一杯あるんだけど。
「みんな、作戦変更。部位破損のない状態で拘束して」
鎖で十字架に拘束された大理石ゴーレムが運搬されてきた。【念力】で宙に浮いているから中々シュールだね。というか、鎖と十字架どこから出した。あと、敵を宙に浮かべられるって、【念力】強すぎない?
「相手とのレベル差次第ですね」
「そこ、心を読まない」
「これは失礼」
よーし、採掘だ。
カーン。
『大理石』
ビンゴ!
一体あたり採掘は3回までとわかったので、追加のゴーレムをお願いする。
「はーい、大理石生産工場はこちらでーす。生き急いだ方からお越しくださーい」
「ハルカちゃん、そろそろ大理石が尽きるわ」
「おや、残念。じゃあ、お弁当食べてボス部屋突っ込もうか」
もう、お姉ちゃんの中では、ゴーレムから大理石へ種族チェンジしているようだ。
移動工場と化していたので結構奥に進んでいたようだ。というか、ボスの間の前まで来た。
やはりダンジョンが坑道のロビー説を推したい。このボス倒したら地下に行けるとか。
まぁ、そんなことはどうでもいいので、レジャーシートとお弁当を展開しましょう。