15 「賞金首」
同じ話2回投稿しました。
本当にごめんなさい。
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現実もゲームも起きる時は毎回抱き枕にされてる気がする。
もぞもぞ抜け出してごはんの準備だ。トースト、サラダ、焼肉でいこう。我ながら酷いメニューだ。焼肉が簡単すぎるのがいけない。今は塩で食べてるんだけど、タレも欲しいな。次に街に行ったとき探そう。
ごはんの準備ができたので、お姉ちゃんとタカシを起こして、他の人達も呼ぶ。
犬小屋からはガイコツが這いずり出て、家の裏手からは鎧騎士が歩いてきて、そのそばには豪華な椅子が宙に浮いている。
ん?椅子?
口々に挨拶をしてくるがそんなことより。
「ねぇ、その姿どうしたの?セルバスでしょ?」
「ええ、私はこの度進化しまして。姫様のご希望に添う姿になることができました」
「ほんと!?すごーい!」
椅子だー!昨日座布団とかで誤魔化してたけど、大分座りにくかったんだよね。ああ、嬉しい嬉しい!
飛びつくように座る。
おおー!やわらかい!座るところが立体的なクッションなので、座り心地がとても良い。
「すごいよ!やらかいよ!」
「お褒めいただき光栄です。そして……」
うおー!リクライニング!
「こちらお申し付けくださればいつでも行えます」
「すごいよありがとうセルバス!」
「ううっ。光栄です」
(仲間になって1日なのに凄まじい忠誠心ね)
(これもお嬢の求心力が為せることか。しかし、我の進化には気づいていただけぬか)
(さすが母ちゃん。ていうか、リビルト爺は見た目変わってないじゃん)
(足置きになりたいですな)
「ところで、街に行くときどうするの?椅子が宙を浮いてるのは不自然すぎると思うのだけれど」
「あー、そっか。リビ爺に宝箱背負って貰う感じを考えてたんだよね。セルバスの中にエムオバラバラにして詰めて」
「おぉ……リビ爺……」
「申し訳ありません……姫様」
「ええ!どうしたの!?リビ爺って呼んじゃダメだった!?あとセルバスは悪くないよ!」
リビ爺が手で顔を抑えてしゃがみこんでしまった。
セルバスはなんか落ち込んでるし。
その後色々なだめてから、ごはんに移る。
セルバスはどうやって食べてるんだろう。椅子からイバラが伸びて、食べ物を掴んだ次の瞬間食べ物が消えてるんだよね。あと、椅子ってよりも玉座らしいね。なんか座るの恥ずかしくなってきた。
「じゃあ結論として、街では私がセルバスに座って移動。メガネで変装するよ。恥ずかしいからね。タカシは帽子の中。お姉ちゃんとエムオはローブで姿隠して移動、リビ爺は普通に歩く。これでいくよ」
「メガネかければハルカちゃんだなんてわからないわね」
「ふふふ、そうかい?では出陣だよ」
(どう考えてもメガネだけじゃバレるよな)
(曰く、仮面なんか着けたら可愛い顔が見えなくなってもったいない、だそうです)
(そもそもなんで変装なんかするんだ?)
(そりゃあ魔物引き連れてるわけですし、厄介ごとにならないようにでしょうな)
失敗した。たとえ、メガネで変装しても、注目されることは変わらないのを忘れてた。こうなったら謎のプレイヤーとして生きていこう。【隠蔽】で名前はバレないらしいし。うん、平気。私大丈夫。
セルバスの上で膝を抱え、顔を手で隠す。
お姉ちゃんの【威圧】は人目につく場所では使えないし、耐えるしかない。
私の【威圧】スキルのレベルは1なのでなんの意味もなさそうだし。
【支援魔法】をお姉ちゃんとリビ爺にかけておいて、後は任せる。指の隙間から覗くと、オオカミとウサギが一撃で屠られていく様子が見える。鑑定メガネのおかげでようやくオオカミとウサギの正式名称がわかったけどそれはどうでもいいか。
今気づいたけど、セルバスをお留守番にするだけでよかったんだよね。でも、せっかく座りやすいように進化してくれたのに、お留守番にさせるのもかわいそうだよね。
ところで、セルバスは自分のいる場所から5メートルくらいまで宙に浮けるらしい。
そして、街の建物は大体屋根が5メートルより低い。
つまり屋根の上を渡ればバレない。
完璧だ。これでいこう。
街での計画を考えていたら、いつの間にか街の近くまできていた。レベルアップがなかったのを見ると、もうこの辺での狩りはダメかもしれない。
街を囲む城壁?は5メートルくらい。いけるか?
「じゃあ3人は街で買い物おねがいね。私たちは後からいくよ」
「ええ、わかったわ」
「さあ、セルバス。壁の上まで跳ぼう」
「畏まりました」
ふわふわ。ふわふわ。
着地。
平屋が多いから結構視界がひらけてるね。
「セルバスあの屋根まで移動」
「畏まりました」
民家や商店の屋根の上に陣取る。
すっごい楽しい。1人だけ別のゲームやってる感じ。
あ、屋根のレンガとか持って帰ったら怒られるかな。正直あの洞窟のボスの扉と同様に持って帰れなさそうなんだけどね。つるはしを顕現させつつ、考える。
「姫様、どうせなら1番豪華な建物の装飾を持ち帰りましょう」
「そうだね。ギルド本部とかがいいかな」
ギルド本部へ向かいます。ゲームマスターいた気がするけど平気だよね。
到着しました。バレたら怒られそうなのでしばらくネコカフェには行かないようにしよう。
お、白くてきれいな石だね。もう持ち帰るとか関係なくどうなるのかが気になっている。
万が一取れちゃったら元に戻すまであるよ。
カーン。
《破壊不可オブジェクトです》
やっぱりか。
《冒険者ギルドへの破壊行為:犯罪ランクB》
《騎士団が派遣されました。街にいる限り追跡されます》
《賞金首にかけられました》
《【隠蔽】の効果によりプレイヤーネーム等の情報は伏せられ、犯行時の画像のみが街の各所の掲示板に公開されます》
は?
やばい。
一瞬で画面がアナウンスで埋めつくされた。
ていうか、自警団とか警察じゃなくて騎士団なのか。
「セルバス!騎士団が来る!逃げるよ!」
「畏まりました!」
(全員に通達。直ちに街から脱出してください。騎士団に追われています。直ちに脱出を)
(ええ!?とりあえず、わかったわ。全員撤退!)
「ねえセルバス!お姉ちゃんたちどうしよう!?」
「そちらは連絡しておきましたので、ご安心してお座りください」
「え?あぁ、そう。ありがとう。ところで、連絡ってどうやったの?」
「姫様配下の魔物は互いに念話が出来るようになったのですよ」
「なにそれ、私だけできないの?なんか理不尽じゃない?」
「……【念話】スキルでもあればできるかと。さらに【念話】は送る相手を選べるので便利なのですよ」
「次のスキル取得はそれにするかなぁ」
屋根の上から街を見渡すと結構な人が走り回っている。これが賞金首探してる人たちならどんだけ賞金かかってるんだ。
まあ、罪状がギルドへの破壊行為なら妥当かな。多分NPCの人にも追われてそうだし。
ランクBってそれなりに罪が重そう。でも、一回つるはし叩きつけただけじゃないの。こんなんじゃ街の中で手が滑って武器すっ飛んだら即逮捕じゃないか。いや、それは逮捕だわ。
街の外で無事に合流できた。ふわふわしてるだけだったけど、こういうのってどきどきしてちょっと面白いね。
「説明は後でするから一旦家に帰ろう。セルバスお願い。あ、みんなにはほい、マスリインフォースパワー。がんばってね」
「はーい、じゃあみんな行くわよー」
あ、【威圧】のレベル上がる条件わかんないし常時発動しておこう。MPは【眠り姫】で自動回復なので多分平気かな。
あとは任せた。
あ、タカシはこの騒動の中、一度も目を覚まさなかったよ。