祈り
掲載日:2016/08/22
ねこを飼い始めた。
たかがねこ、だと思って。
それなのに、ひと月もしないうちに彼は私の中心になった。
これまで意味を見出していたどんなものも輝きを失い、
彼こそが私の生活軸になった。
朝、そばで眠っている彼のぬくもりで目が覚めること。
起きがけ、彼に催促されてえさを与えること。
どこか寂しげな瞳に見送られて家を出ること。
そして何よりも早く彼に会いたくて、一目散に帰宅すること。
毎日同じことを繰り返しているはずなのに、
一日として同じ日は無い。
ああこれが幸せというものか、と納得したような気になると同時に、
早く彼が死んでしまえば良い、とも。
彼が生きているということは、いつか死ぬ日が訪れるしるし。
彼とともに生活するということは、いつか離れ離れになるしるし。
夜、彼の重さと温かさをいとしく受け入れながら、
私はきまって、そう祈る。




