新規プレイヤー 1日目 1-2
ログインして少し広く感じる王都の教会の自室で一先ず他のプレイヤーのログイン状況を確認する。
「アキさんとカナさんは……まだかぁ。メール送って店の前で待っておこうかな」
言いながらも先に店に行っている事と1chに居る旨のメールを送り新しい修道服をはためかせバザーに向かう。なお出てすぐに羽織を着たのはご愛嬌である。
「メンテ明けだからか人がいつもより少なく感じるなぁ」
バザーに着きまず思ったのはプレイヤーが先日来たよりも少なかった事である。居るには居るしやはり視線を集めはするもののバザーを歩く分には気にしない程であった。
「こんにちはカナさんアキさん」
「待たせてしもたなアリアちゃん」
「はいこんにちはアリアさん。待たせちゃったわね」
「いえ大丈夫ですよ。すいません急かしてしまったみたいで」
2人の店の前に着き待つ事数分、無事に合流を果たして会話を交わす。
「アリアさんこの後用事あるんでしょ?」
「じゃあさっさと渡してしもた方がええな」
「すいません……ありがとうございます」
約束がある事を伝えていたアリアに早速と出来た装備をトレードで送る。そうして渡される装備を着てみる事にする。
「えーと装備名は……神代之羽織(海)ですか」
桜を模した桃色の羽織とは真逆の水色で海を模した今の時期に丁度よさそうな涼しめな物であった。着た状態で腕を広げて見たりくるりと回ってみたりと最初の羽織を買った時と同じ動きをしていた。
「うん。シスター服にも色的に合うわね。よかったよかった」
「新しい物を買った時の笑顔は相変わらずやな。あの笑顔だけで作った甲斐あるもんなぁ」
「ふふっそうね」
羽織を着て少しはしゃぐアリアを優しく見守る。そしてアリアはその笑顔のままお礼を言う。
「素敵な装備ありがとうございました。またお願いしますね……あ、でもスカートには触れないでください」
「カナには再三言っとくわ。安心……出来ないわね。ごめんなさい」
「善処はしとくわ」
「……ではありがとうございました」
頭を下げてバザーを後にするアリアを手を振りながら見送る。
「初めて使うなー。どんな感じなんだろう……クリスタルと同じ感じかな」
シスター服一式によって追加された転移魔法を確認しながらもワクワクしていた。魔法欄から選択すると移動場所が示される。
「前は場所の確認だけだったから選ぶのは初めてってエリア選べるのか」
スタタの町を選択すると「北の教会 入口」とありその下には裏口・礼拝堂・登録部屋と続いて行く。それを見たアリアは昨日の事を思い出す。
「これ礼拝堂選択したら間違いなく足止めされるよね……合流場所は教会裏だし関係無いけどさ」
などと独り言をしつつ裏口を選択する。本当によろしいですか?と確認が入りはいを選択。すると光に包まれて視界が歪む。意識が戻るとそこは利用頻度が多い教会の裏口の外であった。
「服は……羽織はそのままだね。良かった」
「あっアリア先輩やっと来ましたね」
装備を確認していると後ろから声が掛けられる。振り向くとそこにはアリアと同じ位の背の高さの初期装備の黒髪の少女が居た。
「ごめんごめん。えーとプルムちゃん?
「はい。よろしくお願いしますねア・リ・ア先輩」
「2人きりの時はアキでもいいんだけど……」
「誰に聞かれてるか分からないじゃないですか。アリア先輩有名な方ですし気を付けないと」
「あーうん。わかったよアリアでも」
「そういえば1つ聞いてもいいですか?」
「いいけど移動しながらでも良い?」
「出来ればこの場で」
教会裏で出会った梅乃改めプルムは移動を拒みながら唐突に尋ねる。何かあったっけと思いながらも質問を待つ。
「なーんでアリアって名前付けてるんですか?このゲーム確か性別指定出来ないですし、名前の略にしても女性っぽすぎますし」
「あー……プルムちゃんって僕の過去の事って知らなかったけ?」
「あまり聞いた事ないですね。体が弱いとかは聞いてますけど」
秋太の過去は余り人に話すものでも無いのだが話しても問題自体は無い。
「まともに歩ける様になったのが大体2年前なんだけどね」
「えっ!?マジですか?」
「うん。小さい頃からずっと杖使うか車椅子。当然ずっと入院だし友達ゼロ」
「あれ?コレって実は重い話?気軽に聞いちゃいけなかったパターン?」
「今となっては思い出だから気にしないで。それでね友達は居なかったけど姉さんが1人友達を連れて来てくれたの」
「ふむふむ」
何事も無い様に話すアリアに余計な気を使わない様にと相槌を打つプルム。
「その姉の友達が来た時には余り髪を切りにも行けずに割と長かったんだよね。その時の姿見た友達が妹だって勘違いしてね」
「あー今でも髪長かったら女性っぽいですもんね。それで?」
「自分の名前を聞いた後に勝手にあだ名付けてね。それが「アリア」だったの。ずっと1人だからって事もあったみたい」
「嫌じゃなかったんですか?」
「当時としては男子とか女子とかの意識も曖昧だったし初めての他者からのあだ名だったから嬉しくてね」
朗らかに笑って語るアリアに少し心が痛むプルム。
「だから「アリア」って名前は女性らしい感じでも大事なモノでね。アキが通らなかったらこの名前使ってる様にしてるんだ」
「そうですか……その友達さんは今は?」
「自分が11歳の時に引っ越したよ。出来ればまた会いたいな」
「会ってどうするんですか?」
「ん?引っ越す前までも心配してくれたから今は大丈夫だよって伝えたいかな。それと好きでした……って」
「でした……なんだね」
「うん」
これ以上は何も言えないとプルムはアリアに納得した事を伝えてギルド登録へ向かうのであった。
主人公が好きな容姿の女性に上げているスイはその友達と似ているからですね。




