新規プレイヤー 1日前 昼2-2
戦闘描写?何それおいしいの?
森の中へ入る事10分。レベル上げが目的では無いためモンスターの沸き辛いルートを選び、それでもポツポツと沸く敵をアユが上位ジョブの火力にモノを言わせて蹴散らしていく。
「時間が無いから退けぇい!《エア・バズーカ》ぁ!」
杖から発射される風の砲弾が近づいて来ようとするヘビや鳥を巻き込み吹き飛ばし消滅させる。呪文を唱えたアユは吹き飛ばされた敵に何も思う事無く空いた道を少し見渡す。特に何も無い事を確認した後、振り返りメンバーに告げる。
「倒したよ!さあサクサク進むよー!」
良い笑顔で言うアユを頼もしく思いながらも道のりの中飛ばされた敵に同情の念すら覚えるアリアであったが顔に出さずに頷く。
「今ってどの位進んでるの?」
「ん?えーと……もうすぐ見える休憩所で2割って言った所だよ。この森、最短で行ってもボスまで40分……ゲーム内で80分かかるから先は長いよ!疲れたの?」
「ううん。そういう訳じゃないんだけどただ気になっただけ」
「そう?じゃあ行くよー!」
意気揚々と歩を進めるアユに着いて行くパーティであった。そうしてもう少しで着く第1休憩所を素通りし次の休憩所を目指す。
「第2休憩所着いたー!これで半分くらいだね」
「さすがに40分森の中を歩くのは疲れるね」
「本来は途中で休憩挟みますからね」
入り組んだ道を抜け木のベンチとテーブルが置いてある開けた広場に辿り着き一息つく。パーティが席に着くとアリアが昨晩作ったおにぎりを取り出す。
「どうぞ1つずつしかないけど」
「ありがとうございますアリア。いただきます」
「いただきま~す」
アユとハクもいただきますと返事をして食べ始める。そんな小休憩中ふと気になった事をシラヌイが尋ねる。
「そういえばアリア。1つ質問が」
「ん?なに?」
「大した事ではないのですが……アリアは普段自分の事を何と言ってるのですか?」
「えーと……つまり?」
「アリアは普段どんな一人称を使っているのですか?」
「それ私も気になる!」
「そういえば聞いた事ないね~」
「掲示板でも時々議論になってますよ。アリアさんは一人称って意図的に外してるんですか?」
「意図的って訳でもないんだけどね。というよりもかなり今更だね」
「確かに今更ですけど気になったもので……で?実際の所どうなんですか?」
じーっと見つめる4人であるがアリア自身は別に隠すことでも無いのでサラッと事実を述べる。
「普通に僕だけど?あーでも」
「でも?」
「目上の人とかに丁寧に話す時は私だね」
「あーあの口調の時ですか」
「アリアちゃんが僕っ娘なことに驚きだよ」
「アリアさんの普段の口調だと確かに僕っぽいですね」
「一度一人称有りで喋ってみて~」
「ちなみに聞くよどっちの口調で?」
「両方!」
身を乗り出して主張するアユに苦笑いするアリアであった。
「アリアは私達のギルドに入りますか?」
「僕なんかいいの?ちなみにギルド名は?」
「アリアなら大歓迎ですよ。ギルド名は一応、《ガールズ・ガーデン》の予定です」
「ガールズ……うーん」
「どうしましたかアリア」
「いや……名前的に女性のみのギルドだよね?」
「そうですよ」
それがどうかしたのかという視線を向けるシラヌイ。一応意識自体は男性であるアリアは女性のみのギルドはかなり厳しい物であった。
「女性のみのギルドは僕にはちょっとね」
「女性のみですから男性に気を使わなくてもいいんですよ?精神的に楽ですよ?」
「僕の場合逆に気を使うというか……ね?」
「そうですか……アリアならいつでも歓迎ですので入りたかったら言ってください」
「その時はお願いするよ」
「…………」
「…………」
お互いに会話を切り上げ聞いていた3人を見る。そしてアユが率直に感想を言う。
「うん!違和感しかない!」
「ですよねー」
「まあ一人称切った喋り方に慣れているのもありますけどアリアの容姿に合わないですね」
「髪が短いとまた印象違うんろうけどね~」
そう言って短い茶髪のアリアを想像してこれなら有りかなと悩まし気に考える。そんな面々を苦笑いで見ていると「じゃあ次はお姉ちゃんモードで!」とアユがキラキラした視線を送る。
「アリアちゃん公式のPVに出るって本当?」
「出るって決まった訳ではないですけど。どうですか?ってメッセージは来てますね。というより何故アユさんが知っているんですか」
「ミカンから聞いた!ジョブ紹介の祝育士の枠に選ばれたって!」
「ミカ姉……私自身出るつもりありませんよ」
「えーこんなに画面映えそうなのに。それに私たちの中で祝育士って完全にシスターさんのイメージなんだよ?そしてシスターさんと言えばアリアちゃんじゃん!」
「私のイメージはシスターなんですか!?」
「最近は巫女さんもあるけどやっぱりシスターさんだね!」
ぐっと親指を立てて力説するアユ。それをうんうんと頷く3人を見て「好きで着ている訳ではないんですが」とボヤくアリアであったが普段の言動を考えると全く説得力は無かった。
「どうしても出ないの?」
「出ませんよ。私の活動なんて見ても面白くないでしょう」
「いやーアリアちゃん愉快な行動しかしてないよ?」
「そ、そうなの?」
「むしろ自覚なかったアリアちゃんにビックリだよ」
そんな馬鹿なという感じの顔をしているアリアを見てアユが珍しく苦笑いする。コホンと咳払いして「とにかく」とアリアが言う。
「出ないものは出ません」
「うむむ残念。でも出たくない人に無理強いしても仕方ないか」
「そうしてください」
「…………」
「…………」
会話が終わり再び顔を向け合う。そうして4人の想いは1つであった。
「すごい良かったですよアリアさん。より女性らしさが出ていたと思います」
「違和感ないね~」
「これなら普段使いしても良いと思います」
「うんうん。これでスタイル良かったら完璧だね!」
「変えませんよ?まあ必要になったら使いますから頭の片隅にでも置いといてください」
そんな雑談を交わしながらおにぎりを食べ終えた5人は休憩所を後にして再びボスへと向かう。
主人公の一人称についてのあれこれ。実際には作者が意図的に省いている模様。
アリアちゃん呼び→アユとテル、アリア呼び→シラヌイ、アリアさん呼び→ハク。
次でボス戦と街に到着ですかね。なお投稿段階でボスの設定が1ミリも決まってない模様。




