第24話 3日目 夜2
エタりはせん!エタりはせんぞぉ!
「これで最後だよね」
「お疲れ様だね、アリア」
「あ、ヴォルケさん。はい、まだ30分ほどしか経ってないのに少し疲れました」
「ふむ、次の客人が来る前に奥に戻るかね?居ないということにしておくが」
「それでお願いします。急に騒がしくなってしまいましたね」
「何度も言っているが別に構わないさ。幸いここで暴れるような冒険者は居ないからね」
「……ちなみにプレイヤーが暴れた場合は?」
「こちらの権限で強制退出させる。教会の加護のおかげで物は壊れないが野蛮にされても困るのでね」
「そのような権限があったんですね。……今後も暴れるプレイヤーが来ないように祈りましょうか」
「そうだな」
「では休ませて貰います」
教会に来ていたプレイヤーに加護をかけ終えて一息ついた所を神父に労われる。そのまま奥に戻り部屋で貰ったものを確認する。
「ええと……3万G?貰いすぎじゃないかなぁ。加護だけじゃあれだし何か他にしたほうがいいのだろうか?」
自身のした事に対し貰ったお金と余った魔力薬を見てそのようなことを呟く。そのお金をどのように使うかあれこれ悩みながらも結論は出ずに一旦保留にして何をしようか悩みながら部屋を出る。そこでバッタリとクッチと遭遇する。
「あ、クッチさんこんばんは」
「こんばんはだねアリアさん、これからお出かけかい?」
「いえ、それが何をしようかなと思いましてとりあえず部屋を出た所ですよ」
「ふむ予定は無しか……それだったら前に言っていた鍛冶を見ていくのはどうだい?」
「そういえば前にお誘いされてましたね。少し気になりますのでお願いできますか」
「決まりだね。早速鍛冶場に向かおうか」
クッチの誘いを了承し一緒に鍛冶場へ向かう。鍛冶場は調薬室へ向かう通路とは正反対の通路の一番奥の場所にあった。扉を開けるとそこには映画や小説で見るような工房があった。クッチが椅子を二つ取り出し座れるように配慮する。
「ようこそ教会の鍛冶場へ……とは言ってもそこまで広くないんだけどね」
「いえいえ立派な鍛冶場だと思いますよ」
「ありがとう。さて早速鍛冶を行いたいんだけど……その前にこの服じゃ暑いから少し着替えてくるよ」
そう言ってクッチは工房から直接繋がっている自室に戻り着替えを済ませる。作業服に着替えたクッチは改めてアリアの前の椅子に座り説明を始める。
「待たせたね。じゃあまずは何を作るか決めようか」
「何を作るって決まってないんですか?依頼の方は?」
「今日の依頼は全て済ましてあるからね。自由に作れるよ」
「そうなんですか」
「ああ、ちなみにアリアさんの欲しいものとかあるかい?」
「……無いですね。そもそも何を作れるか分かりません」
「鍛冶は金属で出来る物は基本的に作れるよ」
「鉄パイプとかも作れますか?」
「何で鉄パイプをチョイスしたのかとか何に使うのかとか疑問だけど作れるよ」
「日常品で金属を使うのが思いつかなくてですね」
「料理をするんだったら包丁とか鍋とかあるだろう?」
「あ……」
教会としては料理道具の他に農作業のためのクワや鎌、釣りのための釣竿や日常品が依頼として多いらしい。武器や防具は教会の設備では良い物は作れないとのこと。
「作った物はあげるよ」
「良いんですか?」
「いいのいいの。それで何を作る?」
「じゃあ少し長めの包丁でお願いします。雑貨屋さんで買った物だけでは物足りなくて」
「包丁だね了解」
作る物を決めたら鉄のインゴッドを取り出して鍛冶についての説明が始まる。
「まずは金属のインゴッドを用意する。インゴッド自体は鍛冶や錬金で作れるしある程度の物は専門店で買えるよ」
「専門店とかあるんですね」
「町に設置されている地図にも描かれているよ。そしてインゴッドで作る物を設定するんだ。これは鍛冶スキルかジョブを取れば設定できるよ」
「なるほど」
「それじゃあ包丁を設定して……炉に入れて熱してこの金槌でインゴットを叩くんだ。この叩く回数で出来や長さ、耐久なんかも変わってくる。この辺りは経験だね」
出来が良くなる回数があり包丁では30回ほど叩く必要がある。剣や鎧なんかになると100回以上必要らしく大変なようで、さらに熱されている間に叩かなければいけないようで力とスタミナ、作業スピードのバランスが重要らしい。
「さて説明は終わったし実践を見せるよ」
「お願いします」
鉄のインゴッドを炉に入れて熱を通す。熱が通り赤くなった所で炉から取り出し作業台に乗せて金槌で叩く。カーンカーンカーンと一定のタイミングで振り下ろされる金槌を見ておぉ……と思いながら30回より数回多く叩いて最後に水に浸けるとジュウウと小気味良い音と共に蒸気が出て形が変わり包丁が完成する。
「これで完成だね。これが鍛冶の一連の流れだよ。ちなみに叩く回数が多いものはまた炉に戻してもう一度熱することもあるよ」
「わかりました」
「……スキルの習得の通知とかは?」
「……無いですね」
困り顔のクッチを見てステータス画面を見てみると鍛冶が灰色の文字で出ていた。これについて聞いてみるとどうやらステータスが要求値に達していないようだ。ムムムと唸るアリアを見てクッチがフォローを入れる。
「うーん。まあ出来ないこともあるからガッカリしないで」
「そうですね……」
何か残念な感じで鍛冶の講座が終わり最後に包丁をプレゼントされた。
せっかくなのでクッチさんを出そうの回でした。
アリアのステータスでは圧倒的に攻撃と俊敏が足りません。まあそういうこともあるよね。主人公が生産に関して何でも出来ると思ったら大間違いだよ!




