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五人の俺の数奇な人生   作者: アルリア
1/2

前半

五人の俺の数奇な人生


『Capter1』


俺は現在中学二年生。こういうトンデモ体験はもう少し意識がハッキリしている時にやってほしいね。


ホント、ビックリするから。

ビックリするから寝起きドッキリとかが成り立つんだろうけどね。

まあとにかく俺はその日目を開けてすぐ意味不明な状況に追い込まれた

端的に説明するならこういうことだろう。

朝起きたら、俺は五人になっていた。


「うわああああああああああ!!」

五人の俺が同時に悲鳴を上げる。ハモった。

「なっ・・・なんだお前ら!」「お前こそ!」

沈黙

「俺・・・・だよな」

「だな・・・」

そろそろと誰ともなく手が伸びてお互いを触りだす。

(俺の格好)パジャマ姿だ。髪型は丸っとしているショート。個性的ではない。

目の前の存在が幻覚かなにかでないことに気がついて息を飲む五人の俺達。

沈黙

窓の外が明るい。一人の俺がふと言う「今、何時?」

慌てて時計に目をやる。

「7時45分・・・まずい・・・学校!」

「オイオイオイオイそんなこと気にしてる場合じゃないだろ」

突如

「起きなさーい!もう八時よー!!」一階からいつもの母親の声がした

「「「うおっ!」」」下手に意識が覚醒していただけに、突然の声に驚いた

・・・・・ビビったぞこんちくしょう

時計は母さんの言った八時を指していない「母さん・・・まだ7時45分だろーが。」

「でも学校へは行かなきゃ」

「・・・・いっせーので指を指して決めよう」

他の四人が頷く。異論はないようだ。

「いっせーのせ!」


四人の俺が一斉に俺を指す。


α「!な・なんだよ。なんで俺なんだ!」

「・・・直感的だったんだけど・」

「ベットの上にお前だけいたからかな」


α「クソ!分かったよ!お前ら俺が帰ってくるまで変なことするなよ!」

ダダダダダダ、

階段を駆け降りていく俺。


部屋に残された四人は学校へ行った俺を見送ると、互いに顔を見合わせた。

「で・・・・どうするんだ俺たちこれから?」


一方外を駆ける彼の頭上には、まだ青空が広がっていた。

α「くっそー!訳わからん!おかしいだろコレ!?」

彼は現在遅刻しないために必死に走る。


『Chapter2』


両親はこの時間はまだ帰って来てないはずだ。うちは共働きだ。そんなこと「あいつら」もわかってるだろう。

俺の家は普通の一軒家だ。

ドアを開けると朝出た時のまま、俺が四人いた。

ひょっとしたら現れたときと同じように煙のように消えているかと思ったがそうじゃなかった。

δ「あぁおかえり」

α「・・・ただいま」

自分におかえりと言われるのは変な気分だ。

α「?どうしたんだその頬」

βの頬が少し赤くなっていたことに俺は気がついた。

β「少しケンカした」

Θ「お前学校行ってて良かったなぁ家に残ってたら面倒くさかったぞ」

「?」

β「どうもコイツらを見るとなぁむかついてくるんだよ。」

β「ツラ見てるだけで無性にイラついてくるんだよ」

γ「こっちのセリフだァボケ」

α「はあ?自分同士でケンカしてんのか。バカバカしい。」

γ「あん?なんだと?」

俺はγを無視して言った。

α「んで・・・これからどうする?お前ら俺が学校に行ってる間に話合ったんだろ?」

Θ「・・・ああ」

α「・・・・俺も一人で、学校で考えた」

α「やっぱ・・・そうなるよな」

β「なんてこった・・まったく・・・・なんてこった」

α「(自分が5人もいるわけにはいかない。そんな非現実的なこと、このクソ真面目な現代日本ではあってはならないだろう。)」

α「(社会が、常識が俺達の存在を許さない。)」

コイツの考えていることは俺が考えていることだ 。

何を言い出すかは分かってる。

しかしそれでも拳が固く握られてゆく。

β「一人が残り、四人はこの家を、出て行くしかないだろ。」


家に残る一人はつまようじの先に印をつけて作った簡易のくじで決めた。

くじをひく時、まるでこれからの人生を左右する采配のように感じられとても緊張した。

結果───

α、つまり学校に行った俺が家に残ることになった。

当面の資金が必要だろうと言うことで家から一人十万円ずつもっていくことにした。

δ「十万円が少ないのか多いのか少ないのかすらわからん」とにやにやしながら言った。

β「父さんと母さんには空き巣に入られたことにしよう」

各々最低限の準備しかしないようにした。今夜中に家を立つ。

出てこれからどうするのか。

αはあえて聞かなかった。

Θが笑って言った。「じゃあ何年後か「俺達」の同窓会でもするか?」

「俺」が生まれてから十四年間育ったこの家からよっつの「俺」放たれた。


『Chapter3』


俺の分裂から、四年がたった。

俺はあれからなんとなく真面目に生きようと思ったけど、半年もすればそんな決意を忘れてしまった。

中学受験はまぁまぁ大変だった。そして現在高校三年生。そしてなんとなく大学生をやろうかと思っている。

休日、家に向かって歩いていると肩に手を叩かれた。

「よう。元気か。」

誰だ?と思って振り返ると、そこには「俺」がいた。

α「おお」

思わず感嘆詩が漏れるね。

α「四年ぶり、か。」

β「調子はどうだ。」

世間話のように話てくる。

α「なんつっても俺は学生だからな。毎日勉強とか地味なことばっかだよ」

βが笑って応えた。

β「その地味な毎日の繰り返しが案外幸せだったりするんだぞォ。」

やはり四年前と同じくひと目で自分だと分かったものの、あの時とはだいぶ様装が違う。

β「2人だけだが同窓会と行こう。飯奢ってやるよ。大人パワーを見せてやろう。」

α「そりゃあサンキュー。どこに行く?いつもの喫茶店か?」

いつもの喫茶店とは中学時代彼が友達とよく行っていたチェーン店だ。

β「いや、たしか鰻屋あったよな。そこに行こう」

α「マジか」

地元の鰻屋なんて家族でも滅多に行けなかった高級亭だ。

β「金は心配すんな。お金はこの四年間で俺が勝ち取ったものの一つだ。」

βが誇らしげな眼差しで言った。

俺はその時βが少し羨さに似た何かが心によぎるのを感じた。

それからαとβは話をした。

料亭で豪勢な鰻を胃に納めている最中にβが切り出した。

というかこのことを言い出すタイミングを伺っていたようだ。

なにか予感がする。

β「α、頼みがあるんだ。俺に一週間だけまた学校生活を送らせてくれないか?」

藪から棒。というやつだった。

α「え・・・・?」

β「無茶なことを言っているのは俺も分かってる!でも頼む!」

β「赤の他人ならともかく、俺たちは同一人物なんだ。入れ替わっても周囲の人間に気づかれることはない。」

α「・・・・それは外見のみの話だ。四年間はけっこう大きいぞ。」

βの顔を見ると自分との違いに気づいた。αに比べ逞しく、精悍な顔つきになっていた。顔つきはその者がどう生きてきたかに現れる。

なんとなく、嫌だった。本人は気づいていないが嫌だと感じた理由はβに存在をとってかわられるかもしれないと言う悪い予感があったのかもしれない。

なおも頼みすがるβに

α「いいよ。分かった。一週間だな」

β「ホントか!ありがとう 。大丈夫 、うまくやるさ。」

αから見てβはすこし、自分より快活さと元気さが増した人間になったと思った。


そして、一週間が過ぎた。僅かな回帰の時間は終わった。

公園にαとβはいた。夕焼けが一面を染めている。

小さな子供達が家へと帰っていく。残されるのはαとβだけだ。

α「どうだった?」

私服に身を包んだα。制服を着るβ。

着崩しがなぜか俺よりサマになっている気がする。

βが振り向いた

「楽しかったよ。」βは笑顔だった。

α「俺にとっては長い一週間だったよ・・・・・でもお前の一週間は」

β「あっという間の一週間だった。」

α「・・・・・・・」

α「ええっと・・・一週間分のホテル代、出してくれてサンキュー」

βはこともなげに言う。「いやいや。こっちがしてもらったことの方がとても大きい」

β「ほんの僅かな時間だったけど、また父さんと母さんと過ごせた」

「お前の歩んでる道。こういう未来もあったんだなぁ・・・・・って知れたんだ。そしてその片鱗をこの俺が味わえたんだ。これ以上ない体験だよ」

2人の伸びた影が公園内の土の地面に薄く写った 。

αは胸が少し苦しくなるのを感じていた。

α「お前にとって何かが・・・変わったのか?これで・・よかったのか・・・?」

β「満足さ」

いたずらを責められたいい大人のような顔で笑った。

これで本当によかったのか・・・ならなぜβは寂しさと諦めが入り交じったような表情をしているのか。

この地から出ていかなければならなかった四人の上に俺が立っているようなものだとαは考えた。


後半へ続く

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