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定期テストまであと二週間。
オレの席は廊下側から二列目の前から二番目。
右ひじをついて右あごを上がり気味に乗せると藤堂さんの席が目に入る。
今は写しきれなかった黒板をいっしょうけんめいノートに写しているようだ。
屋上に出れなかったあの日から藤堂さんとは話していない。
あのカップの話はいったいどうなったのだろう。
誰かピッタリの相手が見つかったのだろうか。
その場合は運命の出会いってやつになるのかな。
心の中でひとりごちていると、いきなり藤堂さんがこっちをみた。
オレはあわてて目をそらしてしまったが、思いなおしてもう一度そっちをみる。
別に目が合ったってどうってことないとつよがってみせたかったのに、もうそこには顔がない。
どこに行ったんだろうと迂闊にも目でさがしてると、こっちへ歩いてきた。
机のすぐ横、オレの視界のど真ん中にだ。
「新庄君。」
と呼びかけられるまで、右の腕が折れそうなくらい曲げた上に真横にした顔をのせるという、とても不自然なかたちをとってしまった。
やっぱりという気持ちと、今か、という己の複雑な心理なんて無視して何とか声を絞り出す。
「なに?」
ついでに不自然なこの体勢も直しておこう。
「なにか機嫌悪い?それとも眠い?」
「なんで?」
「そう見えたから。」
そういって左のひじを曲げて自分の顔を斜めに乗せて見せた。
オレのさっきまでの体勢の真似をしていると見える。
ちょっとかわいい。
「いや、眠いかな。」
あせった気持ちを隠そうと、言葉を濁す。
さすがに座った状態では頭のてっぺんはみえないものだなと、気をとりなすためにどうでもいいことを考えたりした。