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たぶんオレは口説かれている。
ドラマなんかでは絶対そうだ。
でも、彼女が天然だとしたら、オレはこのまま引っ張られて勘違いしまくる脇役だ。
ここは慎重に考えたい。
彼女が口説いているとしよう。
今、オレには特に好きな子はいないし断る理由もない。
だが、あくまでたぶんなんだ。
まるで本気さが伝わらない。きちんとした告白も受けていない。
勝手に暴走して自爆は避けたい。
なんといっても高校一年の春だ。
藤堂千鶴子
彼女は普通にしか見えない。
学校指定のブレザーの制服。
白いブラウスもみんなと同じで、第一ボタンだけをはずしてある。
スカート丈もひざが少し見えるくらい。
クラスで目立つ女子たちはもっと短い。
高校生らしく、たぶんカラーなんてしていない髪も、肩につくくらい。
顔はもちろん普通。
体育の授業時などに男子だけで話す、学年のかわいい女子の中にも名前は無かった。
もちろんマイナーなほうにも。
とりたてて褒めちぎるところも、けなすべきところもなさそうだ。
強いて言えば背が低く、友達と並んでいるときはたいてい彼女のほうが小さい。
なにか個性をあげるとすれば、オレに気のあるそぶりをみせるところだけだ。
机の左側にラッピングを解かれないまま放置されているカップを見ながらため息がもれる。
いっそ今夜辺り、藤堂さんの見たというあの夢と、屋上でのシーンをあわせて夢にでも見れないだろうか。
そうしたら、明日の朝、藤堂さんに夢をみたんだとはなしてみれなくもないんだが。
立場が逆転したときの藤堂さんの反応も気になる。
夢が見れるように願をかけながら寝るとしよう。
ベッドの上にダイブするとオレは頭まで布団をかぶった。