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昼休みの屋上。
に、でるドアの前。
階段を上りきった踊り場とでもいおうか。
この学校では屋上にはかってにでられないように鍵がしっかり閉まっているようだ。
藤堂さんに呼び出されたのだが当の本人がまだだ。
「お昼ご飯食べ終わったら屋上に来て。待ってるね。」
確か、待っているはずだったのだが・・・。こんなことなら昼を抜けばよかった。
そうしたら、ここに来ないという選択も胸が痛くはなかった。
ほんの一瞬、告白かな。と、心が躍ってしまった自分を戒めながら待つこと3分。
「あれ?もう来てたんだあ。」
笑顔満開で藤堂千鶴子登場だ。
「で、なに?」
少し不機嫌さが声に出てしまったのは仕方がない。
そこを気にも留めず、彼女はオレの前をすり抜け、ドアに手をかけ、
「なんで?」
ドアをガチャガチャさせ、更に力いっぱい引っ張ったり押してみたり。
ほんとうに無駄な抵抗をやめようとしない。
「鍵、しまっているみたいだよ。」
「なんで?せっかく昼休みの屋上にしたのに。」
そういうとくるりと向きを変え、オレに熱く同意を求めた。
「昼休みに男子を呼び出すとしたら、定番は屋上でしょ。なんで開かないの。これって今日だけ?みんなどこで話すんだろう?」
「さあ・・・。」
ときどき彼女は面白い。
そして、オレも納得してしまいそうだ。
みんな、どこに呼び出すんだろう?オレが考え込んでいると、
「まあ、いいや。」
そういって、気持ちの切り替えも早く、藤堂さんが笑顔に戻った。
「で、なに?」
「昨日、おねがいしたよね?覚えてきてくれた?」
覚えるも何もあんな短いストーリー頭に入らないほうがおかしい。
「手紙の内容だよね。覚えてはいるよ。」
「そう。だったらあれ、あの後どうなると思う?」
どうね。わからないな。そう伝えると、
「あれね、私の中では恋の物語だと思ったんだけど。」
「ああ。」
「カップを取り違えたまま二人は分かれるのよね。夢はそこまでなんだけど、名前がわかるじゃない?だからきっと偶然の再会があるの。そして二人はお互いのカップを交換するのかな。それともそのままで付き合う。もちろんカップも取り違えたまま。こういうのどう?」
「悪くはない。ラブストーリーだとしたら偶然と奇跡の両方がある。」
「でしょう?」
「うん。」
うなずきながら、今までみたドラマの中に同じような話しがなかったか自分の頭に検索をかけた。
ありがちだが、ピッタリ同じものはないようだ。
「ドラマでは可能だけど、実際には難しいな。かなり偶然に頼っている話だ。」
「そうかな。不思議なことっていっぱいあっていいような気がするけどな。」
藤堂さんはそういうと屋上に続くドアに背を向けオレと同じようにドアにもたれかかった。
ほんのちょっとこっちを見上げるような角度で、しかも絶対オレの顔は視界に入ってないとわかる程度の動きしかないまま話し始めた。