3
藤堂千鶴子
同じクラスだが、まだ、高校生活が始まって3日目だ。
名前なんか覚えられない。
そう、彼女はほんとうに普通だ。
特別かわいいわけでも、明るく元気とかでもない。
どちらかといえばおとなしいかも知れない。
よく、あんなところでプレゼントを渡せたと思うほどだ。
しかも、オレだ。
今まで母親いがいにカッコいいといわれたことも無ければ、鏡に見入ってしまった経験も無い。
だからこそ、毎朝、念入りにグルーミング、ヘアセットは欠かさない。
オレあてかどうか怪しくなってしまったラッピングを解くわけにいかず、好みにもまったくあわないプレゼントを前に頭を抱えるしかなさそうだ。
朝、席に着くと藤堂千鶴子がやってきた。
「おはよう。」
「おはよう。」
昨日、いきなりの告白めいたことをやっておいてあまりにも普通の展開だ。
挨拶のあと、黙ったままのオレに笑顔のまま聞いてきた。
「昨日、手紙読んでくれた?」
「うん、まあ。でも、あれ・・・。」
なんと言ったらいいかわからず、とりあえず家においてきてしまったプレゼントをやはり持ってきて返すべきだったと後悔していると、
「なに?」
聞き返されてしまった。
「あれさ、オレじゃないだろう?誰かと間違えた?それとも誰かに渡して欲しいとか?」
彼女は少し困ったように笑いながら
「うん、あれね、ほんとうに夢で見たことがあるの。その後、駅ビルに行ったら夢で見たのと同じようなカップが置いてあるじゃない?思わず買っちゃった。あの夢、ほんとうにおこったらいいなってどきどきしながら。」
「そう・・・なんだ。でも、あれ、やっぱりオレじゃないよ。そういう夢、みたことないし。」
「うん。でも、あれ、新庄君だったらいいなって思ったんだ。」
そう言ってオレがなにか言い返すまもなく、藤堂千鶴子は最後に笑いかけてから視界から消えた。
少しだけ顔が赤かったような気がしなくもない。
もしかして、今のって告白?
危うく、スヌーピーは少女趣味だとか赤は好きではないなどと言ってしまわなくてよかった。
勘違いだとしても、向こうがオレを好きなのかもと思うのは悪くはない。
さりげなく左を向くと、藤堂さんが友達となにか話しているのが気になった。