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屋上に出る手前。


今日も鍵がかかっているらしい。

階段をあがるとそこにはもう藤堂さんがいて、オレに向かってドアが開かないとジェスチャーをして見せた。


学食で昼食を食べているとき彼女からメールがきた。


 <あそこでまってるね。>


それだけだ。

友達と一緒だったこともあって、今日はオレのほうが来るのが遅くなった。

けっして、いや、わざとだ。たまには待たせてみたかった。


この間のメールのことを話そう、意味わかった?と問う彼女に、気になっていた箇所を指摘する。


「藤堂さんからオレに話しかけるってあれ、変えたほうがいいと思うけど。」


この間メールでもらった 私からは新庄君に話しかけること ってやつだ。


「なんで?」

藤堂さんが会話をひっぱて、そうだな、上北の気持ちを上手に斉藤に向けさせればいとおもう。」


「ばかね。それじゃあ、場合によっては私と上北君が仲良くなっちゃうじゃない。あの日だって、上北君、私にもとってもやさしかったでしょ。」


そういえば、まあそうかもしれない。ドラマだって脇役の予定の主役ってありだ。

あの日オレは少しつまらなかった。藤堂さんは、あまりオレを見なかった。話しかけるのも上北に対してが多かった。べつにたいしたことではないが、藤堂さんにまっすぐ、下から見られるのは嫌いじゃない。あの日はなかったな・・・。


「どうかした?」


現実に引き戻される。


「上北に聞いてただろう?あれ、返事なんだった?」


「返事・・・?」


「斉藤になんて誘われたのかって。」


「ああ、あれね。私の恋を応援するって。」


「それだけ?」


「うん。要約するとそんなかんじかな。」


絶対もっと長かった。でも、たぶん、意味はそういうとこだろう。


藤堂さんがオレの顔をのぞきこんできた。


「新庄君、次に会うときは二人をくっつけちゃわない?」




あれから斉藤と上北は付き合っている。

オレと藤堂さんで作ったシナリオはきちんと実行されることもなく、上北からの告白だったそうだ。確かハンドボール部は男女交際禁止だといってなかっただろうか。まあ、そういうのは表向きだけだろう。


今日も藤堂さんと二人、屋上に出る手前の階段の踊り場で話している。


斉藤と上北になにか進展があったときにのみここに呼び出されるわけだ。

この間、とうとう二人でデートして手をつないだと報告があったそうだ。


オレは今をもって物心ついてから女子と手をつないだことがない。


「新庄君って潔癖症ってほんとう?」


初耳だ。でも、思い当たるふしはある。


「いつも手をあらってるよね?」


朝、登校してきた後、体育のあと、昼食の前と後、汗をかいたとき、誰のものかわからないものを持った後・・・。さりげなくしていたはずだったんだが・・・きづかれてる???

体育のあとなんかは顔を洗うついでのふりをして、他はなんとなく手になにかついたふりや、トイレに行ってみたり・・・。違う?」


「それがなに?」


「私ね、同じクラスになってすぐ気がついてた。でも、新庄君のは潔癖症っていうより、人よりちょっときれい好きなくらいかな。」


そういって笑って見せた。


潔癖症ってほどじゃないはずだ。でも、藤堂さんの手がきれいかどうかも気になることは認めよう。


「きれい好きはいいことです。」


そういって藤堂さんは手を振って階段を下りていった。




藤堂千鶴子からメールがきた。

 <<究極の選択

 潔癖症で手もつなげない男の子と

 毛むくじゃらで汗臭い男の子

 どっちがいい?


 私の答え

 

 毛むくじゃらで汗臭いほう

 手ぐらいつなぎたいじゃない?>>





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