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「これ、受取って。」
目の前に差し出された紙でできた手提げ袋。
オレは訳がわからず、手をだしてしまった。
オレの手にしっかりとその物体を押し付けて、彼女はにっこり微笑むとそのまま階段をおりていった。
なんだろうと思って中を覗くと、金色のリボンが目に入る。
透明なラッピングにつつまれているのはカップのようだ。
たぶんこれは・・・・と思わないわけでもないが、今日は先を急ぐ。
もう帰るつもりで階段を下りようとした、その時声をかけられたのだ。
家に帰ってから見よう。
気をとりなおして、あわてて階段をかけおりた。
自転車を飛ばして家まで30分。
カバンを置くと、制服を着替えるのももどかしく、まずはテレビのスイッチをいれる。
以前、見逃してしまったドラマの再放送がはじまるのに、ぎりぎり間に合った。
録画の予約を入れ忘れたのだ。
オープニング曲を聴きながら着替え終わると、そのまま画面にみいった。
オレの趣味ともいえるドラマ視聴。
連ドラは必ず見たい。
でも、体はひとつ、目はふたつだ。
いつも、リアルタイムで見るものと、録画、そして、DVDや再放送まで、ほんとうに毎日忙しい。
しかも、今そうであるように4月は再放送が多い。
過去のものからちょっと前のものまで。
必然的に放課後は速攻で帰宅だ。
最初から最後まできちんと視聴できたことに満足し、今日の連ドラ視聴メモをつけようと机に向かった。
筆箱を取り出そうと思ってカバンを見たとき、ついさっき、クラスの女子からもらった手提げの紙袋に目がいった。
中身を取り出してみると、やはり、カップだ。
しかも、なぜだかスヌーピー・・・。しかも・・・赤。赤はあまり好きではない。
スヌーピーも、女の子じゃないんだから、勘弁して欲しい。
これは使えないな。
とラッピングも解かずに放置。
他に、封筒が一通入っていた。