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第5話:ハッピーエンドは、確信の先に

月日が流れるのは早いもので、私は20歳になった。

鏡に映るのは、幼少期の面影を残しつつも、どこか「やり手実業家」の風格が漂う絶世の美女――私、リーゼロッテだ。


そしてついに、ゲームで「滅亡の日」とされていた運命の時がやってきた。


「お嬢様……いえ、リーゼロッテ様! ついに来ました! 隣国ガーネット帝国の軍勢が、我が領の喉元『断絶の谷』に迫っています!」


かつて新米メイドだったアンナが、今は私の秘書室長として叫ぶ。

私は、14年前に私財を投じて作り上げた「難攻不落の要塞」の最上階で、優雅に紅茶を啜っていた。


「慌てないで、アンナ。中途半端な動揺は、これまで積み上げてきた努力への冒涜よ」


眼下に広がるのは、鉄壁の防衛線。

そしてその向こう側、谷を埋め尽くさんばかりの漆黒の鎧を纏った軍勢が、地響きを立てて進軍してくる。

先頭に立つのは、冷酷非道と恐れられる若き皇帝――「鉄血公」ギルバートだ。


「さあ、14年越しの『投資』の回収時間ね」


私は一人、要塞の門を開けさせ、丸腰で彼の前に立った。

かつて私が「全振り」で教育し、投資し、愛(という名の莫大なリソース)を注ぎ込んだ少年が、今、巨大な黒馬に跨り、私を見下ろしている。


周囲の兵士たちは固唾を呑んで見守っている。

「リーゼロッテが処刑される」「侵略が始まる」と、誰もが絶望の予感に震えていた。


ギルバートは馬から降り、一歩ずつ私に近づいてくる。

その手には、抜身の剣――ではなく、一輪の真紅の薔薇と、羊皮紙の束が握られていた。


「待たせたな、リーゼロッテ。……14年だ。君が僕に賭けてくれたあの日から、一刻も君のことを忘れたことはなかった」


彼は私の前で膝を突き、その羊皮紙を差し出した。

それは侵略の宣戦布告書ではなく、なんと「両国の永久不可侵条約」と「合弁会社設立の提案書」だった。


「……ギルバート様?」


「君が教えてくれただろう? 『中途半端な略奪は遺恨を残すが、圧倒的なWin-Winの関係は未来を作る』と。僕は帝国を掌握した。この軍勢は、君を迎えに来るための近衛兵だ。侵略などという効率の悪いことはしない。……僕は、君という『最高の資産』を、僕の人生にフルベットしたいんだ」


周囲から「えええええええっ!?」という、全軍・全領民あわせた驚愕の声が響き渡った。


そう、これが私の狙いだった。

彼をただの「優しい王子」にするのではなく、私のビジネスパートナーとして、そして最強の理解者として「育成」することに全リソースを注いだ結果、彼は侵略者ではなく、世界一の「共同経営者」として私の前に現れたのだ。


「ふふ、いいわ。でも、私を妻にするなら、中途半端な覚悟じゃ足りなくてよ?」


私は彼の差し出した薔薇を受け取り、最高の笑顔を見せた。


「私の人生のモットーは『全振り(オールイン)』。愛も、富も、国の未来も、すべてを賭けて、世界で一番幸せな国を一緒に作ってくださるかしら?」


「もちろんだ。確信があるときは、日和ってはいけないんだろう?」


ギルバートは不敵に笑い、私の手を引いて立ち上がった。


かつて「滅亡フラグ」と呼ばれた運命は、一点突破の情熱と、計算し尽くされた投資によって、跡形もなく粉砕された。

ベルシュタイン領は、その後、両国の交易の中心地として空前の繁栄を遂げ、歴史にその名を刻むことになる。


後世の歴史家は、こう記している。

「伝説の辺境伯令嬢、リーゼロッテ。彼女が勝てた理由は、決して魔法や剣技ではない。ただ、誰よりも『確信』を持ち、中途半端を嫌い、未来にすべてを賭けたからである」と。


「さて、それじゃあギルバート様。まずは新婚旅行の予算を、帝国予算の半分くらいにベットしましょうか!」


「……君の『全振り』には、一生勝てそうにないな」


ハッピーエンドのその先へ。

6歳の幼女が始めた「人生という名の投資」は、最高のリターンを叩き出して、幕を閉じたのであった。


お読みいただき、ありがとうございました。

ブックマーク登録や評価欄☆☆☆☆☆から応援をいただけますと励みになります。


本作はこれで完結となります。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


新しく連載を開始いたします。

https://ncode.syosetu.com/n4307lu/

投稿開始: 02/21(土) 21:10〜

更新頻度: 毎日 21:10 更新

完結予定: 全10話(すべて予約投稿済)


活動報告も更新しております。

ぜひあわせてご覧ください。


新しい物語でお会いできることを楽しみにしています。


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