第4話 館林のいちか
小説・宵のハコブネに登場する妖怪たちと作者・朔蔵日ねこが酒を酌み交わす「ハコブネ噺」にようこそ。酒乱である朔蔵日ねこが、心を込めて酒と肴をチョイスして、妖怪たちをおもてなしいたします。
八月十五日
【本日のお客様】 館林のいちか 様
【本日の酒】 ランブルスコ ロッソ ドルチェ (カーサ・ベッラルベロ)
【本日の肴】 ラム肉オーブン焼き マカロン(ジャン・ポール・エヴァン)
本日のお客様は、館林のいちか狸です。当代一の化け狸かつインフルエンサーでいらっしゃいます。素敵なゴシックロリータファッションでお越しいただいておりますよ。お洒落ないちかさんと女子会ですので、お酒はねこお勧めのランブルスコです。甘口ですけどね。肴はラム肉のオーブン焼き、ホワイトアスパラとホタテのマヨネーズ焼きです。そして、デザートにジャン・ポール・エヴァンのマカロンをご用意しております。お招きするお部屋はちっともゴシックでもロリータでもないですけれども、お食事をお洒落にしたのでお許しくださいね。
いちか:お招きいただきありがとうございますー!
ねこ:ようこそいらっしゃいました!素敵なドレスですね。
いちか:どうもー。ねこさんも、ゴスロリ着てみたら?
ねこ:憧れます。やってみたいんですけど、機会がなくて。着物の洋装ミックスとかはするんですけどね。
いちか:似合うと思うよ!うちのサロンに来てくれれば。
ねこ:あ、嬉しいです。今度ぜひお伺いします。
いちか:うん!あー。いいにおいする。お腹すいちゃった。
ねこ:すぐにお食事ご用意しますね。ラム肉はもうオーブンから出すだけです。付け合わせのブロッコリーと盛り合わせて……。はい、どうぞ。
いちか:わぁ、でっかい。美味しそう。
ねこ:そして、こちらが本日のお酒、ランブルスコです。
いちか:ランブルスコって、赤ワイン?
ねこ:赤ワインですが、微発泡なんです。ねこはこれ、とても好きで。
いちか:そうなんだー。早く呑も呑も。あ、待って、写真撮ってもいい?
さすがはインフルエンサー。いちかさんが写真を撮り終わるのを待って、ポン、とコルク栓を空けます。グラスに注ぐと、シュワシュワと泡立ちますね。注ぐ間もいちかさんは動画撮影しています。
いちか:ほんとだー。シャンパンみたい。
ねこ:それでは。
いちか・ねこ:かんぱーい。
いちか:わぁ、美味しい。甘いけど、いちかは全然平気。
ねこ:おや、気が合いますね。
いちか:ふふ。お肉もいただいていいですかー?
ねこ:もちろんです。
いちか:まず写真撮って……と。じゃ、いただきます。うわぁ。柔らかい。
ねこ:良かったです。狸はお肉、食べるんですか?
いちか:雑食だからね。普通の狸も、食べないことはないよ。いちかは化け狸だから、何でも食べる。美味しいもの、大好き。
ねこ:普段、お酒は何を呑まれるんですか。
いちか:いちかはね、ワインも好き。でも、ほら、狸は徳利持ってるじゃない?家柄的には日本酒だから、いちかはどっちも嗜むよ。
ねこ:そうですか。では、次回は日本酒にしましょうか。
いちか:いいね。お洒落日本酒女子会しよ。
ねこ:それは楽しみです。いちかさん、家柄と言えば、いちかさんはかなりのエリート化け狸ですよね。
いちか:まぁ、おじいちゃん、有名だからね。
ねこ:守鶴様はご存命ですか?
いちか:んー。それは、オフレコかな。
ねこ:失礼いたしました。守鶴様は茂林寺の僧侶をされていた時に、すでに数千年生きていると言われていましたものね。母方のおじいさまは……。
いちか:芝右衛門じいちゃん?お芝居の好きなおじいちゃんだったって。いちかは会ったことないけど。
ねこ:ああ……。大阪の芝居小屋で……って話ですね。しかし、どちらもとても有名な化け狸ですね。
いちか:そうなの。だから、いちかが当代一の化け狸なのは当然だよね。
ねこ:なるほど。最近は、インフルエンサーとして成功されてますし、そちらのお姿が多いと思うんですが、他にも化けられるんですか?
いちか:化けられるよ。見てみる?
にやりと笑ういちかさん。
ねこ:(ちょっと怖い。)いえ、結構です。
いちか:妖力が弱くなると同性にしか化けられなくなるけど、いちかはイケメンにも化けられるんだよ。
ねこ:やっぱり見た目重視ですか。
いちか:えー?そういうわけじゃないけど。狐は美人に化けるけど、狸はエンターテイナーだから。いちかはビジュが盛れる系のエンターテイナーってだけ。
ねこ:はぁぁ。なるほど。エンターテイナーですか。
いちか:そうだよ。だからインフルエンサーとして成功したんだよ。
ねこ:さすがです。いちかさん、そろそろデザートいきますか?
いちか:あっ、そうだった。マカロンね。
ねこ:はい。マカロン、お好きかと思って。
いちか:うん。うちのサロンにはラデュレのマカロンを常備してるよ。
ねこ:ラデュレは元祖ですもんね。ねこはチョコレートが好きなので、今日はジャン・ポール・エヴァンのマカロンにしました。
いちか:ジャン・ポール・エヴァンかー。マカロンは食べたことないな。
ねこ:アメール、フランボワーズ、ピスターシュ、ヴァニーユの4種類にしました。お好きなのをどうぞ。
いちか:んー、迷うー。やっぱり一番色の綺麗なフランボワーズかな。
ねこ:ねこは、アメールにしますね。
いちか:マカロンはランブルスコとも合いそう。
ねこ:でしょ、でしょ。
いちか:あ、これ、コンフィチュールじゃなくてチョコレートなんだ。美味しい。
ねこ:あああ。チョコレートのお店だけあって、やっぱりチョコレートのマカロンは美味しいです。
いちか:ふぅん。たまにはラデュレじゃないマカロン、サロンでも買おうかな。
ねこ:いいと思います。みんな喜びますよ。残りのマカロンはお土産にどうぞ。
いちか:えっ、いいの?嬉しい。
ねこ:いちかさんは館林がご自宅ですか?
いちか:館林はご実家ねー。ご自宅っていうか、サロンに泊まることが多いかな。
ねこ:ああ。サロンは近いんでしたっけ?
いちか:うん。近いよ。ねこさんも、いいとこに住んでるよね。
ねこ:いやいや、それほどでも。いちかさん、お時間は大丈夫ですか?
いちか:大丈夫、大丈夫。電車なかったら、タクシーで帰るから。
ねこ:そうですか。それなら、ごゆっくりしていってください。
いちか:うん。もう少し呑みたいな。
ねこ:もちろんです。
コミュニケーション能力の高いいちかさんとのお酒は本当に楽しいです。まだまだ引き出しがいっぱいありそうなので、インフルエンサーとしての活動についても色々聞いてみたいと思います。長くなりそうなので、ハコブネ噺はこの辺で。
次回も素敵なゲストをお迎えして、「ハコブネ噺」をお届けしたいと思います。ジャン・ポール・エヴァンのマカロンはお勧めです。ぜひ皆様も一度ご賞味ください。では、またお会いしましょう。
※カクヨムでも同じ作品を掲載しています。




