清掃おばちゃんと家無し少女
決まった家を持たない若い少女と清掃員の老婆が出会い歪ながらも仲を深めていく
二人にはどんな過去がありどんな未来が待っているのだろうか
20××年10月20日秋
少し冷たさを感じるようになってきた頃に私は初めて運命というものを知った。
「マジ金ねぇ…」
溜息と切迫感の混じった若い女の声が公園の木々の間に通る。
「今月、服とか鞄とか無駄遣いしすぎたから…まぁ、またおっさんで稼ぐかぁ…」
「ねぇ、いいじゃんここなら誰も来ないし、1.5でしてあげよっか」
「え、ほんと?後で怖い人とか来ない?」
日も暮れてきた公園のトイレの前で、若い女とおどおどした中年男性が話している。
「いいじゃん!」
強引に女が男性をトイレに引き込んだその時、先には腰の曲がった清掃の老婆がいた。
「なんだい、こっちは男子トイレだよ」
歳も80以上と推測できる清掃服を着た老婆は低い声でそう言った。
おどおどした中年男性は急に早口になり
「俺はまだ何もしてない!だから悪くない!」
そういいながら足早にトイレから逃げる男
「え、ねぇ、ちょっと!」
女が呼び止めようとするも、男性は無視して去っていく。
「ちょっと、どうしてくれんのよ!せっかくよさげなの捕まえたのに…」
少し怒った口調で、女は老婆に言う、すると老婆は落ち着いた様子で返す
「別になにしたつもりはないよ、別にあんたが何しようが私の知ったこっちゃないね」
淡々と清掃を続ける老婆に、少しの怒りを覚えながら、女も言い返そうとする。
「なにそれ、あんたのっ…!」
文句を言いそうになったその瞬間、老婆のかじかんで今にもモップを落としそうな手と、なにか切なげなその目がふと見えた。なぜか女はその続きの文句が出てこなかった。
「ねぇ、おばさん、ここ前まで清掃とかなかったよね」
女が何の気なしに話しかけた。
「あぁ、最近アルバイトで私がここの清掃に入ったんだよ。これまでは人がいなくて手が回ってなかったんじゃないかい」
老婆も清掃を続けながら返す。
「ふーん、そっか」
怒りや嫌悪感ではなく、何というにはとても複雑な感情が少女の心には表れていた。
何故かわからないが気になる老婆、女は突拍子もなしに言う
「ねぇ、おばさんのせいで金ズル逃したんだからさ、晩飯食わしてよ」
「何言ってんだい、暗くなる前にさっさと自分の家へ帰んな」
淡々と老婆が返す
「私親とは喧嘩してるし、帰ったら帰ったでぐちぐち言われるからここ2ヵ月は帰ってない」
普通なら絶対に言わない自分の負の面、なぜかその老婆には言ってもいいと思える安心感のようなものを感じた。
「後一時間で終わるから、一時間後にまたここにおいで」
老婆も女の言っていることが嘘ではないと感じたのか、優しく受け入れた。
~一時間後~
「遅~い、全然一時間じゃないし!」
少し怒ったような口調で女が言う。
「うるさい小娘だね、ついてきな」
老婆が冷たくも優しく返す。
「小娘じゃないし、私にはミクって名前がありますー」
老婆の動きが一瞬止まる
「そうかいミクかい、いい名前だ」
そうして二人は暗い夜道を話しながら歩いていくのであった




