第67話 キラキラがすげえぞ!
リリアナが再び意識を失い、ようやく場の空気が落ち着いた。アリシアは、そんな大人たちの様子には目もくれず、手にした「球」、すなわち骸骨の頭に意識を集中させる。彼女は、マジックボックスから取り出したダイヤモンドを、その表面に魔力を込めて張り付け始めた。一つ、また一つと、小さなダイヤモンドが頭蓋骨に吸い込まれていく。
「よし!出来上がり!」
アリシアがそう言って掲げたのは、まるで銀河を閉じ込めたかのように、ダイヤモンドでぎっしりと覆われた、まばゆいばかりの「球」だった。洞窟の薄暗い光を反射し、キラキラと輝いている。
それを見たキスティーは、目を丸くして歓声を上げた。
「うわー!すごいキラキラ!おっきな宝石みたいだね!」
彼女の瞳は、ダイヤモンドの輝きをそのまま映し出しているようだった。
「ふふ、そうね!じゃあ始めるわよ!」
アリシアは、満足そうに頷くと、「球」を構え、骸骨兵の群れに狙いを定めた。その顔は、真剣そのものだ。彼女は、一度深呼吸をすると、助走をつけ、「球」を投げた。
ヒュゥゥゥゥ…!
「球」は、キスティーと同じく風の魔力を纏い、勢いを増しながら一直線に飛んでいく。その軌道は、完璧にセンターを捉えていた。
ドゴォォォォォン!バキバキバキバキバキバキ!
轟音と共に、ダイヤモンドの「球」が骸骨兵の群れに突っ込んだ。その瞬間、信じられない光景が目の前で繰り広げられた。
アリシアの作った「球」は、強度も申し分なく、まるで分厚い壁を突き破るかのように、次々と「ピン」を粉砕していく。骸骨兵たちは、抵抗する間もなく、白い粉となって消えていった。
「そうだ、きっと、これしたらもっと倒れるわよね?」
そう言って、軽くダイヤモンドのかけらを風魔法で「ピン」の上からふりかけた。
そして、アリシアは、右手の指を「球」に向けた。すると、彼女の指先から、眩い光の魔力が放たれ、一直線に「球」へと飛んでいく。
そして、アリシアが指を「球」に向けた瞬間、彼女の指先から放たれた光の魔力が、ダイヤモンドの表面で乱反射した。その光は、まるで無数の宝石が弾け飛ぶように、きらびやかに洞窟の闇を彩り、四方八方へと飛び散り反射を繰り返した。
光の筋は、まるで夜空に広がる花火のようだった。赤、青、黄、緑、様々な色の光が入り混じり、幻想的な光景を作り出す。光が触れた骸骨兵たちは、まるで綿菓子が溶けるように、音もなく白い粉となって消えていった。
「うわあ!キレイ!花火みたいだね!」
キスティーは、その光景に声を上げ、飛び跳ねて楽しそうに、きらきらとした笑顔で見ていた。彼女にとって、それは、危険な戦いでも、恐ろしい魔術でもなかった。ただの、楽しくて、美しい「花火大会」だったのだ。
「すげえな!キラキラがすげえぞ!」
ギルも、感嘆の声を上げた。彼の目も、「球」に反射する光に釘付けになっていた。彼らは、目の前の骸骨兵が粉々になる光景など、全く気にも留めていなかった。ただ、今開催中の「花火大会」の美しい光景に、心を奪われていた。
ドドドドゴォォォォォン!!!!
そして、最後に、洞窟の奥の壁に「球」が激突する音が響き渡り、「花火大会」は終わりを告げた。残されたのは、粉々に砕け散った骸骨の白い粉だけだった。骸骨兵たちの姿は、跡形もなく消え去っていた。
アリシアは、胸の前で軽く控えめなVサインを作り、満面の笑みを浮かべた。
「やったわ!今回は文句なく私の勝ちでいいわよね!」
キスティーは、少し考えてから、潔く負けを認めた。
「…うん。しかたないね。「ピン」いっぱい倒れたし、今回は私の負け。」
彼女はそう言って、ニコッと笑った。
「あーもう!負けたー!センターに当たりさえすれば勝てたのにな!ちくしょうー!」
ギルは、悔しそうに地団駄を踏んだ。しかし、彼の言葉には、アリシアの勝ちを認める気持ちが込められていた。
一方、レイエスと騎士団長は、信じられない光景に、ただただ唖然としていた。
「終わったの…か?何だったんだ?あの光は…アリシアは何をしたんだ…まばゆい光のあとはこの絶望的光景が、消えた…」
レイエスの頭は、混乱の極みに達していた。彼の知る魔法の概念は、もう、跡形もなく崩れ去っていた。
その時、周囲の眩しさに目を覚ましたリリアナが、レイエスがアリシアを見つめていることに気づき、再びヒステリックに叫んだ。
「何よ!レイちゃん!何見つめてるのよ!いやらしい目つきに魅了されたんじゃないでしょうね!?どこがいいのよ?やっぱりあの髪?何でよ!?私の髪のほうが綺麗じゃない!毎日どれだけケアしてると思ってるの?私よりいいわけ?あり得ない!あんな髑髏抱えた死神女のどこがいいのよ!!」
リリアナは、そう怒鳴り散らしたが、レイエスは、彼女の声が耳に入らなかった。彼の目は、ただ、無数の骸骨が白い粉となって消え去った光景に釘付けになっていた。
騎士団長は、その場で腰を抜かし、涙を流していた。
「何が起きた…なんだこの光は…神が降臨なされたのか…?おお…神よ…」
彼の心は、もはや夢と現実の区別がつかなくなっていた。この国の未来の王と后を守るという、自身の職務さえも忘れそうになるほどに。ただ、目の前で起きた、人間が起こしたとは思えない、神が起こしたかのような出来事に、ただただ涙を流した。彼の心労は、もはや計り知れない域へと達していた。




