表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?  作者: 初 未来
宝探しへGO!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/124

第64話 開幕でーす!

 ギルとアリシア、キスティーの三人は、自分たちの「遊び」を前に、瞳をキラキラと輝かせていた。レイエスと騎士団長は、そんな彼らの様子を、岩陰から見守るしかなかった。


「殿下!お下がりを!危険すぎます!」


 騎士団長は、震える声でレイエスに叫んだ。彼の顔は、土気色にこわばっている。目の前には、無数の骸骨兵が、得物を構えて、こちらに迫ってきている。その恐ろしい光景を前に、子供たちは、この状況を、ただの「遊び」の道具にしようとしているのだ。


「…大丈夫だ。騎士団長。君は、僕とリリアナを守ってくれ。頼りにしている。」


 レイエスは、そう言って、意識を失ったリリアナを抱きかかえ、騎士団長の背中に隠れるように身を潜めた。しかし、彼の心臓は、激しく高鳴っていた。一体、これから何が始まるのか、想像もつかなかった。


 そんな大人たちの張り詰めた空気をよそに、キスティーは、お気に入りの「球」、少し欠けた頭蓋骨を両手で持ち、真剣な顔で骸骨兵たちに向き合った。


「ボーリング大会開幕でーす!行くよー!」


 キスティーは、そう叫ぶと「球」の穴に指を入れ、両手でかかえ、助走をつけ始めた。彼女の足元に、微かに緑色の光がともる。それは、風の魔力だ。彼女は、ほんの少しだけ、スピードを上げるつもりだった。しかし、その瞬間、彼女の全身から、制御しきれないほどの膨大な魔力が溢れ出し、「球」に流れ込んでいく。


「いっけぇー!」


 彼女の小さな体から放たれた魔力は、彼女の想像を遥かに超えていた。「球」は、猛烈なスピードで回転しながら、骸骨兵たちの群れへと向かって転がり出した。


 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ…!


「球」は、まるで弾丸のように、恐ろしい轟音を立てて、地面を滑っていく。そのスピードは、もはや肉眼では追うことができないほどだった。


「ひぃぃぃぃぃぃ!」


 騎士団長は、その光景に悲鳴を上げた。彼の脳裏には、伝記でしか見たことがない一瞬で全てを蹴散らし、跡形もなく吹き飛ばす、伝説級の魔術が蘇っていた。それが、たった一人の少女によって、無邪気な「遊び」として、行われようとしているのだ。彼の顔は、絶望と恐怖で、青ざめていた。


「な、なんだ…!あれは…!?」


 レイエスも、その光景に目を丸くした。彼は、これまで様々な魔法を見てきた。しかし、このような、常識を遥かに超えた光景は、見たことがなかった。


 猛スピードで転がる「球」は、正確なコントロールを失い、センターを外れ、左へと大きくカーブした。


 バキバキバキバキッ!ドゴォォォォン!


「球」が「ピン」の群れに突っ込んだ瞬間、凄まじい音が響き渡った。まるで巨大なハンマーで叩き潰されたかのように、左側に並んでいた骸骨兵たちが、あっという間に粉々に砕け散っていく。その衝撃は、洞窟全体を揺るがし、天井から、ボロボロと土が落ちてきた。


「…ひぃっ…」


 レイエスは、思わず息をのんだ。彼の目の前で、数十体の骸骨兵が、一瞬にして消滅したのだ。


 頭蓋骨たまは、半分の骸骨兵ピンを砕き散らしたところで、ついにその勢いを失い、砕け散ってしまった。


「あー…真ん中狙ったのに…残念。後ろまで届かなかった…」


 キスティーは、しょんぼりと肩を落とした。彼女にとって、それは、ただの「失投」だった。


「でも、だいぶ倒れたでしょ!」


 彼女は、そう言って、胸を張った。彼女の顔には、悔しさよりも、自分がやったことへの、わずかな満足感が浮かんでいた。


 ギルは、その光景に、興奮を隠せない様子で叫んだ。


「やるじゃねえか!負けてらんねえな!」


 彼は、自分の番が来たことへの、純粋な闘争心に燃えていた。


 アリシアは、そんなキスティーを優しく見つめ、微笑んだ。


「あら、ちょっと届かなかったわね。でも、よくできました!」


 彼女の言葉は、まるで、子供の初めての成功を、優しく褒めているかのようだった。


 一方、レイエスと騎士団長は、この現実を、全く受け止めることができなかった。


「骸骨の頭を転がしぶつけて、骸骨兵を破壊しただと?今のスピードはなんだ?キスティーはいつ魔法を使った?」


 レイエスは、震える声でつぶやいた。彼の目の前には、砕け散った骸骨の残骸が散らばっている。その光景は、彼が知る常識では、到底ありえないことだった。


「…おおお…なんだ…何が起きたんだ…骸骨兵が粉々になっている…これがボーリングと言う魔法なのか…?」


 騎士団長は、信じられないといった表情で、口をパクパクとさせていた。彼の心は、恐怖と混乱で、もうぐちゃぐちゃだった。彼の脳裏には、この洞窟の危険性と、自分が守らなければならない存在の重みが、これでもかというほどにのしかかっていた。


(撤退…撤退だ…!今すぐに…!このままでは…!この国は…未来の王が…お妃様が…、王都が…!)


 彼は、腰が抜けそうになるのを必死にこらえ、剣を握りしめた。しかし、その手は、小刻みに震えていた。


 その時だった。洞窟に、再び悲鳴が響き渡る。


「…ひぃ…」


 リリアナが、凄まじい音で目を覚ましたのだ。彼女は、視界に入ってきた、粉々に砕け散った骸骨兵たちの残骸と、未だに立ち尽くしている、無傷の骸骨兵の群れを見て、再び、恐怖に顔を歪ませた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」


 彼女は、その光景に、恐怖のあまり、再び卒倒した。


 レイエスは、そんな彼女を再び抱きかかえ、深いため息をついた。彼の心は、もう、どうすればいいのか分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ