第63話 一緒にしませんか?
三人は、骸骨の頭をボーリングの球にすることを決めると、地面に散らばった無数の骨の中から、自分たちにぴったりの「球」を探し始めた。
「これ、重さもちょうどいいかも!」
キスティーは、そう言って、少し欠けた頭蓋骨を手に取った。彼女は、それを軽々と持ち上げ、楽しそうにクルクルと回した。
「おい、キスティー!俺は、もっと重いのがいいぜ!」
ギルは、そう言って、一番大きくて頑丈そうな頭蓋骨を探していた。彼は、それを両手で持ち上げ、力こぶを作り、満足そうに頷いた。
「私は…これにしようかしら。」
アリシアは、骸骨の山から、ひときわ白く、形の整った頭蓋骨を拾い上げた。彼女は、それを愛おしそうに撫で、まるで大切な宝物でも見つけたかのように、微笑んだ。
三人は、それぞれお気に入りの「球」を見つけると、レイエスと騎士団長の方に駆け寄った。
「ねえ、王子様!騎士団長さん!一緒にボーリングしませんか?」
キスティーは、無邪気な笑顔で、お気に入りの「球」を抱えながら二人に声をかけた。その声は、まるでピクニックに誘うかのように、明るく弾んでいた。しかし、レイエスの目に映る光景は、あまりにも現実離れしていた。
レイエスは、その言葉に、どう答えていいかわからなかった。彼の目の前には、無数の骸骨兵が迫り、彼の腕には、しがみついたまま意識を失ったリリアナがいる。
そして、その絶望的な状況のど真ん中で、骸骨の頭を手に、楽しそうに笑う子供たちがいる。彼らの表情には、恐怖や絶望の影は微塵もない。お気に入りの「球」を持って、まるで、特別な「遊び」を見つけたかのように、瞳を輝かせている。
(一体…この子たちは…)
レイエスは、そんな状況に混乱しながらも、子供たちの無邪気な誘いを、優しく、しかしふんわりと断った。
「ありがとう、キスティー。だけど…僕は、リリアナを抱えているから…」
レイエスは、そう言って、リリアナの顔を優しく撫でた。
騎士団長も、慌てながら、レイエスに続いて、丁重に、しかしきっぱりと断った。
「はっ…き、キスティー様のお誘いは大変光栄でございますが、職務中でありまして、わたくしには、殿下とリリアナ様の護衛がございまして、現在この持ち場を離れるわけには行かず、大変心苦しいのですが、非番の日にお誘いいただけると、参加できる可能性があるかと…えー…なので、今回は辞退させていただきます。」
騎士団長は、そう言って、剣の柄を強く握りしめた。彼の顔は、疲労と緊張でこわばっていた。彼にとって、この状況は、一刻も早く打開しなければならない、命がけの戦いだった。
(そもそもボーリングとは何なのだ…?この状況で…?どんな魔法なのか…!いや、どこかの国の新しい戦術か?だとしても、この状況…撤退が最善であろう…!)
騎士団長の心は、穏やかではなかった。しかし、彼は、子供たちの前で、その本音を口にすることはできなかった。
キスティーは、二人の返事に、残念そうに肩を落とした。
「そっか…残念だなあ…楽しいのに。」
しかし、すぐに気持ちを切り替えると、アリシアとギルに向かって、元気いっぱいに言った。
「じゃあ、順番はどうする?」
「さっきは、ギルが最初だったから、次は私から!」
キスティーは、そう言って、自分の「球」を、高々と掲げて言った。
「アリシアは、さっき力比べ負けたから最後ね!」
「仕方ないわね、どうぞお先に。」
アリシアは、そう言って、優しく微笑んだ。
「まあ、さっき俺が最初だったから、いいぜ。キスティーから始めてよ!」
ギルも、そう言って、キスティーに譲った。
「やったー!じゃあ、私が最初ね!ギルが2番、アリシアは3番だ!」
キスティーは、そう言って、楽しそうに笑った。
そして、伝説の魔術師サイオンの骸骨が操る、無数の骸骨兵たちが、ボーリングのピンのように並ぶ。彼らの後ろには、キラキラと輝く光を放つ宝箱が、まるで景品のように、彼らを待ち構えていた。
キスティーたちの無邪気にはしゃぐ様子に、周りの空気は、先ほどとは打って変わって、どこか楽しげな雰囲気に包まれていた。骸骨たちが立てる音も、不気味なものから、まるで喝采を浴びるかのように聞こえてきた。
レイエスと騎士団長は、その異様な雰囲気に、ただただ困惑していた。彼らの目には、どう見ても絶望的な光景が広がっている。高位の神官が複数人いても結末は見えているこの状況で、目の前にいる三人は骸骨の頭を持って笑いあっている。この空間は、楽しい空間なのかと錯覚してしまいそうなほどに。
「おい、キスティー!準備はいいか!?」
ギルが、そう言って、キスティーに声をかけた。
「うん!いつでもいけるよ!」
キスティーはやる気満々、笑顔で答えた。
そして、骸骨の頭をボーリングの球に、骸骨兵をピンにした、前代未聞の「ボーリング大会」が、今、始まろうとしていた。




