第60話 栄養補給!
キスティーは、バラバラに砕け散ったダイヤモンドゴーレムの破片を前に、目をキラキラと輝かせていた。彼女にとって、それは、探検の醍醐味、お宝ゲットの瞬間だった。
「王子様!お宝いっぱいだね!」
キスティーは、レイエスに向かって、満面の笑みで話しかけた。ギルも、興奮した様子で、レイエスに駆け寄った。
「すげえ!こんなにたくさん、お宝があるなんて、知らなかったぜ!」
アリシアも、二人に続いて、レイエスに声をかけようとした。
「あの…レイエス王子、このダイヤモンドは…。」
その瞬間、リリアナが、アリシアの言葉を遮った。彼女は、ダイヤモンドの破片を夢中でかき集めながら、鋭い目でアリシアを睨みつけた。
「ちょっと!レイちゃんになに気やすく話しかけてるのよ!何?もう彼女気分?絶対にダメよ!レイちゃんは渡さないんだから!ちょっとくらい魔法ができるからって調子に乗らないでよね!この銀髪女狐!」
リリアナは、そう言って、ダイヤモンドの山から立ち上がると、アリシアを指差してまくし立てた。アリシアは、その理不尽な言いがかりに、ただただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
「銀髪女狐…?」
キスティーが、不思議そうに首を傾げた。ギルも、わけがわからないといった表情で、リリアナとアリシアを交互に見つめていた。
「ねえ!ダイヤモンドがこんなに散らばっちゃったんだもん!みんなで集めようよ!」
キスティーは、そう言って、地面に散らばったダイヤモンドの破片を拾い始めた。
その言葉に、レイエスは、ハッと我に返った。彼の脳は、まだ混乱の極みに達していたが、子供たちに言われるがまま、ダイヤモンドの破片を拾い始めた。騎士団長も、殿下に従うべく、疲労困憊の体に鞭を打ち、ダイヤモンドを拾い始めた。
「私は、この銀髪女狐には絶対に負けないんだから!」
リリアナは、そう叫んで、誰よりも早くダイヤモンドの破片をかき集め始めた。その姿は、まるでアリシアとの競争に勝とうとしているかのようだ。
「あの…競走ではないんですけど…」
アリシアが、困ったようにリリアナに言った。しかし、リリアナは、アリシアの言葉など聞く耳を持たなかった。
「うるさいわね!あなたが絡むことは、すべて競争よ!レイちゃんは、私のレイちゃんなの!」
リリアナは、そう言って、ライバル心をむき出しにして、アリシアを指差して叫んだ。アリシアは、そのあまりの身勝手さに、どうしたらいいかわからず、キスティーとギルに助けを求めた。
「ねえ、どうしたらいいの…?」
アリシアが、困った顔で尋ねると、キスティーは、ダイヤモンドを拾いながら、無邪気に首を横に振った。
「わかんなーい。」
「もう、ほっとくしかないんじゃないか?」
ギルも、呆れたようにそう呟いた。アリシアは、二人の言葉に、やれやれと肩をすくめた。
とりあえず、全員でダイヤモンドを集め終えた。レイエスは、王家に代々伝わる、何でも収納できる伝説級のアイテム「マジックボックス」を取り出した。
「これに、集めたダイヤモンドを入れよう。」
レイエスが、そう言ってマジックボックスの蓋を開けると、空っぽだった箱の中に、集めたダイヤモンドが、光を放ちながら吸い込まれていった。
「うわあ!すごい!」
キスティーは、その光景に感嘆の声を上げた。
「これが…伝説の…!」
ギルも、目を丸くしてマジックボックスを見つめた。アリシアも、その神秘的な力に、ただただ見惚れていた。
「ねえ、まだ奥があるよ!行こうよ!」
キスティーは、そう言って、洞窟のさらに奥を指差した。彼女の瞳は、次の「お宝」への期待に、キラキラと輝いていた。
「おう!行こう!まだお宝が眠ってるかもしれないぜ!」
ギルも、興奮を隠せない。彼の冒険心は、もう止まらなかった。
「ええ、きっと…まだお宝があるはずよ!」
アリシアも、好奇心に満ちた目で、洞窟の奥を見つめていた。
三人は、再びやる気に満ち溢れ、洞窟の奥へと歩みを進めようとした。しかし、その背後から、レイエス、リリアナ、そして騎士団長の疲労困憊の声が響いた。
「ま…まだ行くのか…?」
レイエスは、疲労に顔を歪ませながら呟いた。彼の心は、この先、何が待ち受けているのか、考えるだけでゾッとした。
「レイちゃん…私…もう疲れちゃった…」
リリアナは、そう言って、レイエスの腕にしがみついた。彼女の心は、ダイヤモンドを手に入れたことで、もう満足していた。
「殿下…!ここは…撤退を…!」
騎士団長は、最後の力を振り絞って、レイエスに懇願した。彼の心労は、もはや限界を遥かに超えていた。
そんな大人たちの葛藤をよそに、キスティーは、リュックからお菓子を取り出し、みんなに配り始めた。
「はい!栄養補給しながら進もうよ!」
キスティーは、レイエスと騎士団長に、満面の笑みでクッキーを差し出した。レイエスは、その優しさに、思わず微笑んでクッキーを受け取った。騎士団長も、疲れた顔でクッキーを受け取った。
「君たちは…本当に…」
レイエスは、そう呟くと、クッキーを一口かじった。その甘さが、彼の疲れた体に、少しだけ活力を与えた。
「さあ、行こう!」
キスティーが、そう言って、先頭に立って歩き始めた。ギルとアリシアも、その後を追う。
「リリアナ、もう少しだけ付き合ってくれるか?。」
レイエスが、リリアナに声をかける。
「…もう…レイちゃんがそう言うなら、仕方ないわね。ここで私だけ帰ったら、この薄暗い場所で、あの小生意気な子がレイちゃんに何するか分からないんだから!」
リリアナは、そう言って、アリシアを睨みつけ、不満そうにレイエスの後を追った。
騎士団長は、ただ一人、その場で立ち尽くしていた。彼の脳裏には、このまま洞窟の奥へ進めば、何が起こるか、という恐怖が渦巻いていた。
「撤退を…!殿下!どうか…!」
騎士団長は、最後の抵抗を試みた。しかし、その言葉は、リリアナによって一蹴された。
「うるさいわね!あなたは!さっきからうるさいわよ!少しは黙ってなさい!レイちゃんが行くって言ったら行くの!」
リリアナは、そう言って、騎士団長を睨みつけた。
騎士団長は、その言葉に、なすすべなく、肩を落とすしかなかった。彼はもう、心身ともに限界に達しようとしていた。
三人の子供たちは、お菓子を食べながら、楽しそうに洞窟の奥へと進んでいく。レイエスとリリアナ、そして騎士団長は、彼らの後を、まるで夢の中を歩くかのように、しぶしぶとついていくのだった。




