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規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?  作者: 初 未来
お城へGO!

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第31話 行くのね…

 ひとしきり騒いだ後、三人はそれぞれ家に帰り、招待状のことを話した。


「お母様!お城に捕まりに行くことになっちゃった!」


 アリシアが母親にそう言うと、母親は優しく微笑んだ。


「まあ、よかったわね、アリシア。お城に行けるなんて、一生に一度の貴重な体験よ。」


「でも、お船に穴開けちゃったから、捕まるのよ?」


「あら、そんなことで捕まったりしないわ。レイエス王子様から、ちゃんと話は聞いているから大丈夫よ。胸を張って、行っておいで。」


 アリシアの母親たちは、レイエス王子から既に今回の旅について、そして王城への招待についても話を聞いており、前回と同じく、褒賞も確約されていたのだ。


 同様に、ギルのお父さんも、キスティーのおばあちゃんも、子供たちの不安を笑い飛ばした。


「捕まるわけねぇだろ!もし捕まったら、俺が王都に乗り込んで助けに行ってやる!」


「お城には美味しいお菓子がいっぱいあるんだってさ。キスティー、いっぱい食べてきな。」


 親たちの意外な反応に、三人は不思議に思いながらも、少しずつ不安が和らいでいった。


 翌朝、コレットの町に朝日が差し込む頃、アリシアの家の前に一台の豪華な馬車が止まっていた。その前には、アリシアとギルがすでに待っている。


「本当に、お城に行くのね…」


 アリシアは少し緊張した面持ちで、馬車を見つめていた。その隣で、ギルは腕組みをしながら、落ち着かない様子で足元を見ている。


「…行くしかねぇだろ。捕まるってんなら、逃げても一緒だ。」


「そうね…」


 二人が不安な心境を抱えながら待っていると、ドタドタという足音と共に、キスティーが駆け寄ってきた。背中には、以前と同じ、中身がパンパンに詰まったリュックを背負っている。


「お待たせー!さあ、行こう!」


 キスティーは、二人の不安など微塵みじんも感じていない様子で、満面の笑みを浮かべていた。


 アリシアとギルは、キスティーの背負うリュックを一瞥いちべつし、顔を見合わせた。


「…ねぇ、キスティー。そのリュック…」


 アリシアが恐る恐る声をかける。


「お前、またお菓子しか入ってないんじゃねぇのか?」


 ギルも呆れたように言うと、キスティーは胸を張り、得意げに答えた。


「だって、遠足だよ!?当然じゃん!」


 キスティーは、リュックの口をガサガサと漁り、中から色とりどりの包み紙を覗かせて見せた。甘い香りが、ほんのりと二人の元まで漂ってくる。


 アリシアは、そんなキスティーの様子に、はぁ…と大きなため息をついた。


「もう…本当にあなたは…」


「ったく、お前は本当にこりないな!」


 ギルも呆れ果てた様子で、ぶつぶつと文句を言い始める。


「いいじゃん!お城には、もっと美味しいお菓子がいっぱいあるかもしれないし、その時に食べ比べができるでしょ!」


 キスティーは、二人の言葉など全く気にせず、目をキラキラと輝かせている。


 三人が騒いでいると、馬車からレイエス王子が降りてきた。


「やあ、みんな。準備はできたかな?」


 レイエスの声に、三人はピタリと動きを止めた。その視線は、再び、いっぱいに膨らんだキスティーのリュックに注がれていた。


「あ、あの…これは…」


「はは…楽しそうだね。」


 レイエスは、リュックを見て微笑むと、三人を手招きした。


「さあ、馬車に乗ってくれ。お城まで、少し時間がかかるからね。」


 三人には、まだ自分たちが王城に招待された本当の理由も、そして、これから何が待っているのかも、知る由がなかった。


 キスティーは、二人の不安など気にも留めず、楽しそうに馬車に乗り込んだ。


「わーい!お城、楽しみだなー!」


 彼女は窓にへばりつき、流れていく景色を眺めている。 アリシアとギルは、まだ不安そうな面持ちで、お互いの顔を見合わせた。


(本当に捕まったりしないかしら…)

(まさか、お城で説教…いや、もっとひどいことじゃ…?)


 二人の間には、重苦しい空気が漂っている。


 やがて、レイエス王子が馬車に乗り込み、優雅な動作で向かいの席に腰を下ろした。


「出発だ。」


 レイエスが短く命じると、馬車は静かに動き始めた。 キスティーは、再び窓に顔をくっつけ、目をキラキラさせている。


「ねーねー、王子様!お城にはどんなお菓子があるの!?チョコレートとか、アイスクリームとか、あるのかな!?」


 無邪気な質問に、レイエスは楽しそうに微笑んだ。


「ああ、あるとも。君たちが驚くような、素晴らしいお菓子がね。」


「やったー!早く食べたいなー!」


 キスティーは飛び跳ねるように喜ぶ。そのたびに馬車が揺れ、アリシアとギルはびくっと肩を震わせた。


「あの、王子様…」


 アリシアが、意を決して声をかける。


「私たち…本当に、お城に行ってもよろしいのでしょうか…?」


 レイエスはアリシアの不安げな顔を見て、静かに頷いた。


「もちろんだ。君たちは、この国にとって、とても重要な客人だからね。」


「客人…ですか…?」


 アリシアは、その言葉の意味を測りかねて、困惑した表情を浮かべた。 ギルは、居ても立っても居られずに、ぶっきらぼうな口調で尋ねる。


「俺たち、お船に穴開けちまったけど…本当に、怒られねえのか?」


 ギルの質問に、レイエスは小さく笑った。


「ああ。あの穴は、君たちが『最高の獲物』を捕まえた証だ。誰も怒りはしないよ。」


 レイエスは、そう言って微笑んだが、その言葉を聞いたギルとアリシアは、かえって不安になってしまった。


(最高の獲物…?いや、あれはただのタコだろ…)

(私たちが船を壊したのに、怒られないなんて怪しいわ…やっぱり何か企んでいるのでは…)


 二人は、ますますレイエスが何を考えているのか分からなくなり、黙り込んでしまった。


 馬車が走り出すと、外には一人の男が馬にまたがり、馬車に並走し始めた。 この一ヶ月でさらにやつれ、もはや顔色が土気色になった騎士団長だ。


(まさか…また、この子たちに付き合う羽目になるとは…)


 彼は、馬車の中から聞こえてくるキスティーの甲高い声に、冷や汗を流していた。


(また、何かやらかすのではないだろうか…?いや、今度は王都だ。王都で何かあったら、私の首が飛ぶどころでは済まないぞ…)


 騎士団長は、王都へ向かう長い道のりを思い、心の中で静かに泣いていた。


 馬車は、西へと向かう道をひたすら走り続ける。コレットの町が小さく見えなくなり、広大な平原へと景色が変わっていく。三人の新たな旅は、再び始まった。

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