表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?  作者: 初 未来
海釣りへGO!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/123

第19話 どんなの釣れるのかな?

 そうこう騒ぎ続けているうちに、豪華な馬車は夜の帳が降りた頃、ようやく目的地の「アズール港」へと到着した。潮の香りが微かに漂い、遠くには港の灯りがきらめいている。


「わー!海だー!海の匂いがするー!」


 キスティーは窓から身を乗り出しそうな勢いで、初めての港町の景色に目を輝かせた。アリシアもギルも、馬車から降り立つと、広がる港の風景に感嘆の声を上げる。


「すごい…見たことない建物がいっぱいだわ!」


 アリシアは、コレットの町とは違う、石造りの重厚な建物群や活気ある港の雰囲気に目を奪われた。


「船がいっぱいだぜ!でっかい船もある!」


 ギルは、港に停泊している巨大な帆船の数々に興奮し、目を輝かせていた。


 一行が案内されたのは、アズール港でも一際目を引く豪華な宿泊施設、「蒼海の楼閣」だった。磨き上げられた大理石の床、天井まで届く大きな窓、煌びやかなシャンデリア。見るもの全てが、三人の想像をはるかに超えるものだった。


「ひゃー!ここがお部屋!?お城みたいだよ、アリシア!」


 キスティーは、通された部屋の豪華さに目を丸くし、ふかふかのベッドに飛び込んだ。


「すげぇ…」


 ギルも呟きながら、部屋の調度品を興味深そうに触っていた。

 アリシアは、洗練された内装と、窓から見える港の夜景に感動し、ただただ言葉を失っていた。


 夜になり、通された食堂はさらに豪華だった。長いテーブルには、見たこともない料理の数々が所狭しと並べられている。色鮮やかな魚料理、香ばしい肉料理、美しいデザートまで、まるで絵画のようだ。


「うわあああ!おいしそうー!」


 キスティーは目を輝かせ、我先にと皿に料理を盛り始めた。


「すげぇ、こんなの見たことねぇ!」


 ギルは興奮しながら、豪快に肉料理を口に放り込む。

 アリシアも、上品ながらも目を輝かせ、普段食べることのできない珍しい料理を一口ずつ味わっていた。三人の賑やかな声が、広々とした食堂に響き渡る。


 食事も一段落した頃、アリシアがレイエス王子に問いかけた。


「あの、王子様。明日は、海釣りをしてくださる、とお聞きしましたが…」


 キスティーも、お菓子を頬張る手を止め、興味津々といった表情でレイエス王子を見つめた。


 レイエスは、にこやかに頷いた。


「ああ、そうだ。明日は朝早くに船で沖に出て、そこで釣りをしようと思っている。釣れた魚は、料理長に調理してもらって、皆で美味しく食べよう。このアズール港は、新鮮な海の幸が豊富でね。」


 レイエスは言葉を切ると、少し間を置いて、三人の様子を伺うように続けた。


「それに…『大物』もいるぞ。この沖には、驚くほど大きな『タコ』がいると聞いている。もし、あれが釣れたら最高だな。」


 その言葉に、三人の目が一斉に輝いた。


「タコ!?大きいタコ!?釣りたいー!」


 キスティーは飛び跳ねて、大興奮だ。


「え、タコって何だ?食べれるのか!?おいしいのか!?」


 ギルも、未知の獲物に興味津々で、食べることへの期待で目を輝かせている。

 アリシアも、知らない魚の話に、好奇心をくすぐられたようだ。


「釣ってみたいわ!調理してみたい!」


 三人は口々に叫び、明日の海釣りの話で大いに盛り上がっていた。


 そんな三人の様子を満足げに眺めながら、レイエスはテーブルの下で小さく、しかし確かな手応えを感じてガッツポーズをした。


(よし!)


 レイエスは内心でそう呟いた。このアズール港は、豊かな海の幸で有名な交易都市だが、最近、沖合に突如として現れた凶悪な魔獣「デスサイズオクトパス」のせいで、漁に出ることができず、都市の存続自体が危機に瀕しているのだ。レイエス王子が描いたシナリオは、この「遊び」と称した海釣りで、キスティーたちにその凶悪な「タコ」を釣らせる、というものだった。


 食事も一段落し、レイエスの「大物タコ」の言葉で、三人の興奮は最高潮に達していた。


「ねえ、アリシア!明日の海釣り、絶対大きなタコを釣ってやろうね!」


 キスティーが興奮気味にアリシアの腕を掴んで揺さぶる。アリシアはにこやかに頷いた。


「ええ、もちろんよ。でも、タコを釣る道具って、何を使うのかしら?」


「そんなの、俺の力で引っ張り上げてやるさ!」


 ギルの豪快な声が響いた。声のする方を向くと、彼は力こぶを作って笑っている。レイエスはそんな彼らの様子を見て、心の中で微笑んでいた。


 食事を終え、一行はそれぞれの部屋へと戻る時間となった。


「あー、お腹いっぱい!お風呂行こ!アリシア、一緒に行こうよ!」


 キスティーが目を輝かせてアリシアを誘う。


「そうね、旅の疲れを癒さなくちゃ。」


 アリシアも頷いた。ギルは、少し離れた場所で、ぶっきらぼうに言った。


「俺も行くぜ。汗だくでベタベタだ。」


 レイエスと騎士団長は、三人が連れ立って風呂へと向かう姿を静かに見送った。騎士団長は、レイエスに深々と頭を下げた。


「殿下、本日は長旅お疲れ様でございました。護衛の任、これより私が…」


「いや、いい。今日はもう休んでくれ、騎士団長。明日に備えるんだ。」


 レイエスは騎士団長の労をねぎらうと、自室へと戻っていった。騎士団長は、部屋に戻るレイエスの背中を見つめながら、複雑な表情を浮かべる。


(殿下は、あの子供たちに何をさせるおつもりなのだろうか…?)


 その日の出来事を思い返し、騎士団長は不安と困惑にさいなまれていた。


 キスティーとアリシアは、豪華な大浴場に足を踏み入れ、目を丸くしていた。大理石の床、天井が高く広々とした空間、そして何よりも、コレットの町では見たこともないほど透明で温かい湯。


「うわあああ!すごーい!お風呂までお城みたいだよ!」


 キスティーは、服を脱ぎ散らかすと、湯船に勢いよく飛び込んだ。バッシャーンと大きな水しぶきが上がり、アリシアにかかる。


「もう!キスティー!はしゃぎすぎよ!」


 アリシアが怒ったように言うが、その顔はどこか楽しそうだ。キスティーは湯船の中でバタ足をしたり、潜ったり浮いたりしてはしゃぐ。


「ねえアリシア、見て!私、泳げるよ!」


 キスティーは得意げに、潜ったり浮いたりして見せた。アリシアは、そんなキスティーの様子を微笑ましく眺めながら、ゆっくりと湯に浸かった。


「はぁ〜…気持ちいい〜…」


 温かい湯が、長旅で疲れた体をじんわりと癒してくれる。


「ねえアリシア、このお湯、なんかいい香り!うちのお風呂と全然違う!」


「そうね。きっと特別な薬草でも入っているんじゃないかしら。」


 アリシアがそう答えると、二人は洗い場へと向かった。石鹸のいい香りが広がり、キスティーは全身を泡まみれにしながら、また湯船に戻ってはしゃぎ始める。


「見て見て、アリシア!泡でウサギさんが作れたよ!」


 キスティーが泡でウサギの形を作って見せると、アリシアは微笑みながら、自分も丁寧に体を洗っていた。


 その時、男湯からギルの声が聞こえてきた。


「おーい、キスティー!アリシア!そっちはどうだ?」


 キスティーは、壁の向こうから聞こえるギルの声に、いたずらっ子のような笑顔を浮かべた。


「ギルー!こっちはお風呂もお城みたいだよー!」


「こっちだってそうだぜ!広くて最高だ!」


 ギルが応える声が聞こえる。キスティーは、ふと何かを思いついたように、ニヤリと笑った。


「また何か企んでるわね?」


 と、アリシアが尋ねるが、キスティーは聞く耳を持たない。


「えへへ…ちょっと待っててね、ギル!」


 キスティーは湯船の縁に立ち、壁に向かってそっと手をかざした。次の瞬間、彼女の指先から、ほんの少しの風魔法が発動した。


「そぉーれっ!」


 湯船の水が、細く舞い上がって壁を越え、隣の男湯へと流れていく…はずだった。しかし、キスティーは魔力調整が苦手だ。少しのつもりが、思いのほか強い風魔法が発動してしまい、湯船の水が壁を乗り越えて男湯へと、まるで滝のように豪快に流れ落ちた!


「うわあああああああ!?」


 男湯から、ギルの悲鳴が響き渡る。静かに湯に浸かっていたギルの頭に、突然大量のお湯が降り注いだのだ。


「うわ!キスティー!何するんだお前は!」


 ギルが怒鳴りつける声が聞こえてくる。


「えー!ちょっとだけ流したつもりが…!」


 キスティーは、自分が引き起こしたことにびっくりして、目を丸くしている。アリシアは、そんなキスティーの様子を見て、堪えきれずにクスクスと笑い出した。


「もう、キスティーったら。本当にあなたは懲りないんだから。」


「おいキスティー!謝れ!風邪ひいたらどうするんだ!」


 ギルが怒鳴りながら、湯船から上がってくる音が聞こえる。


「ご、ごめんってば!わざとじゃないもん!」


 キスティーは、慌てて壁に向かって謝った。アリシアは、笑いながらキスティーの頭を軽く叩いた。


「さあ、早く洗いなさい。でないと本当に怒られるわよ。」


 二人は再び体を洗い始めた。その間も、壁の向こうからはギルの怒ったような声が聞こえてくる。


「ったく、お前は…!少しは加減ってものを知れ!」


「ごめんなさいってばー!」


 キスティーは、そう叫びながらも、どこか楽しそうだ。アリシアも、そんな二人のやり取りに微笑んでいる。


「さあ、そろそろ出ましょうか。明日に備えて、早く寝ないとね。」


 アリシアの言葉に促され、二人はゆっくりと湯船から上がった。体を拭き、部屋着に着替えると、ふかふかのベッドに潜り込んだ。


 初めての港町、豪華な宿泊施設、そして、明日に控えた海での「大物釣り」。三人の胸は、期待と少しの不安で高鳴っていた。


「おやすみ、アリシア。」


「おやすみ、キスティー。」


「おやすみ!明日、楽しみだな!」


 隣の部屋からギルの声が聞こえてきた。その声は、楽しそうな響きを持っていた。キスティーとアリシアは、顔を見合わせてクスッと笑った。明日の朝、三人がどんな冒険に巻き込まれるのか、彼らはまだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ