第17話 やっぱりお菓子はおまけ付き♪♪
その頃、馬車の外では、事態は一変していた。
「グオオオオオォォォン!!」
突如として、大地を揺るがすような咆哮が響き渡った。レイエスの馬車を護衛する騎士たちの馬が、一斉に嘶き、落ち着きをなくす。
「な、なんだ!?この反応は…!?」
騎士団長が素早く周囲に視線を走らせる。背後から、尋常ではない魔力の反応が急速に接近してくるのが分かった。
「来るぞ!各員、警戒態勢!」
騎士たちの緊張が走る。次の瞬間、木々の間から姿を現したのは、全身を漆黒の甲殻で覆われた巨大な魔獣「シャドークラッシャー」だった。その目には邪悪な赤色の光が宿り、鈍く光る巨大な爪を振り上げ、馬車めがけて襲いかかってくる!
「シャドークラッシャーだと!?まさか、こんな場所に…!」
騎士団長は驚愕に目を見開いた。シャドークラッシャーは、その名の通り、障害物を粉砕しながら突き進む凶悪な魔獣で、その俊敏性と破壊力は群を抜いている。王都の騎士団でも、討伐には多大な被害を覚悟するほどの強敵だ。
「馬車は止めるな!全速力で進め!」
騎士団長は叫んだ。馬車はさらに速度を上げ、騎士たちはシャドークラッシャーと馬車の間に割って入り、剣を抜いて応戦の構えを取る。
「殿下、ご安心を!必ずお守りいたします!」
騎士団長はそう叫びながら、先行する馬車に目をやり、迫りくる魔獣に果敢に立ち向かっていった。馬車は止まることなく、轟音と剣戟の響きを後方に残し、ひたすら前へと走り続ける。
馬車が猛スピードで駆けていく。外では騎士団たちが魔獣「シャドークラッシャー」と死闘を繰り広げているというのに、馬車の中ではそんな緊迫感など微塵も感じられない。
「わーい!速い速い!もっと速くー!」
キスティーは目をキラキラさせ、まるでジェットコースターに乗っているかのように大喜びだ。馬車の振動に合わせてぴょんぴょん跳ねている。
「キスティー、落ち着きなさいってば!馬車が壊れるわよ!」
アリシアが呆れたように言うが、その顔もどこか楽しげだ。ギルも口元を緩ませながら、窓の外に広がる流れる景色を眺めている。
「じゃーん!見て見て!これ、開けてもいい!?」
キスティーは、おもむろに持ってきたリュックから、キラキラと包装されたお菓子を取り出した。それは、彼女のお気に入りの「オマケ付きキャンディー」だ。
「えー、またお菓子!?キスティー、ほんとにお菓子しか持ってきてないじゃない!」
アリシアが声を上げる。ギルも呆れたように言う。
「だから言っただろ、こいつのリュックの中身はお菓子でパンパンだって!」
「いいじゃん!遠足なんだから!おまけ、開けてもいい!?」
キスティーは口を尖らせながら、お菓子を揺らして見せる。二人は顔を見合わせ、やれやれといった表情で頷いた。キスティーは満面の笑みで包装を破る。中から出てきたのは、小さな容器に入ったシャボン玉液と、それを吹くための棒だった。
「わーい!シャボン玉だー!これ大好き!」
キスティーは目を輝かせ、さっそく馬車の中でシャボン玉を吹こうと構える。
「もう、キスティー!中でやったらベタベタになるでしょ!窓開けて外に向かってやりなさい!」
アリシアが慌てて止める。
「まったく、しょうがねえなー。」
ギルもため息をつきながら、馬車の窓を開けた。
キスティーは不満げに口を尖らせながらも、窓から身を乗り出すようにしてシャボン玉を吹き始めた。
「ふーっ!」
小さなシャボン玉がいくつも空に舞い上がり、陽光を受けて虹色に輝く。
「わー、きれいー!見て見て、王子様も!アリシアもギルも!」
キスティーは無邪気に歓声を上げ、レイエス王子にも見せようと振り返る。レイエスは、そんな純粋な光景に、思わず微笑んでいた。アリシアも、キスティーの隣でシャボン玉を吹き始める。
「じゃあ、私も負けないわよ!」
アリシアは、シャボン玉を吹く際に、ほんの少しだけ風の魔力を込めた。すると、彼女が吹いたシャボン玉は、通常の何倍もの大きさに膨らみ、ゆらゆらと不規則に揺れながら、驚くべき速さで空高く舞い上がっていく。
「すごーい!アリシア、魔法でシャボン玉大きくしたの!?私もやりたい!」
キスティーは目を輝かせ、アリシアの作った大きなシャボン玉を追いかけるように見つめる。アリシアはにこやかに、次々と魔法を込めたシャボン玉を空へと放っていった。
それを見たギルが、ニヤリと笑った。
「おいおい、そんなに作るなら、的にして遊ぼうぜ!」
「えー!ギルの得意な的当てゲーム!?ずるいー!」
キスティーは口を尖らせる。的当てゲームは、ギルが圧倒的に強く、キスティーはいつも負けて罰ゲームを受けていたからだ。アリシアはそんな二人を見て微笑むと、少し大きめのシャボン玉をたくさん作り、空へと放った。
「よし、じゃあ始めるぞ!」
ギルは、食べ終わったキャンディーの棒を拾い上げ、狙いを定めた。そして――
「シュッ!」
ギルが投げた棒は、一直線に空を舞うシャボン玉に向かって飛んでいく。狙い澄まされた一投は、見事にシャボン玉の中心を貫いた。
「ポンッ!」
シャボン玉が割れると同時に、アリシアが込めた風魔法が発動し、小さな突風が巻き起こった。その突風は、ちょうど馬車のすぐ後ろを追走していたシャドークラッシャーの甲殻をかすめ、わずかながらその動きを鈍らせた。しかし、馬車の中の三人は、そんなことには全く気づいていない。
「やったー!一発命中!」
ギルはガッツポーズを取り、キスティーは不満そうに口を尖らせた。
「ずるーい!ギルは的当てが得意なんだから、当たり前じゃん!」
「うるせえ!当たれば俺の勝ちだ!」
二人が言い争う中、アリシアは次々とシャボン玉を作り、空に放っていく。ギルは次々と棒を投げ、シャボン玉を割っていく。割れるたびに小さな風魔法が発動し、その衝撃がシャドークラッシャーにジワジワとダメージを与えていた。
キスティーは、ギルが優勢なことに不満が爆発し、対抗心から新たな提案をした。
「じゃあさ!私が作るシャボン玉に当ててみてよ!ギルには絶対当てられないようにしてやるんだから!」
ギルは、不敵な笑みを浮かべた。
「なんだと!?望むところだ!何でも来い!」




