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規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?  作者: 初 未来
氷の世界へGO!

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第110話 調べるぞ!

 その頃、湖からさほど遠くない、魔獣の森の深い雪の中。


 レイエス、騎士団長、そして副司令クロエを含む雪中行軍演習部隊は、すでに限界を超えていた。一行は、この数時間で数体のアイアンブラッドベアを含む魔獣と遭遇し、そのたびに激しい戦闘を強いられていた。


 レイエスは、もはや王族の威厳など見る影もなく、雪と泥で汚れた外套は破れ、額からは冷たい汗が流れ落ち、息はてついた空気の中で激しく喘いでいる。その顔色は、雪の白さよりも青ざめて見えた。


「はぁ…はぁ…もう、だめだ…」


 レイエスは、手にした剣を杖のように雪に突き立て、かろうじて体勢を保っていた。極度の疲労が、彼の体と精神をむしばんでいた。


 そして、そのかたわらで、騎士団長は、鉛のような重い体を引きずっていた。彼の鎧は魔獣との戦いで傷つき、雪と泥、そして魔獣の血でひどく汚れていた。彼の目には、もはや理性的な思考の光はなく、ただ忠誠心と、心労からくる純粋な絶望だけが宿っていた。


 騎士団長は、雪の上に半身を投げ出しそうになりながらも、必死にレイエスの御身を案じ、声を絞り出した。


「殿下…もう、もうよろしいでしょう!これ以上は、殿下の御身が、まことに持ちません!どうか!どうか、撤退のご命令を!この先の調査はあらためて、クロエに一任くだされば!」


 彼の声は、もはや懇願ではなく、悲鳴に近いものだった。忠誠心からくる疲労困憊は、彼を精神的な臨界点へと追い詰めていた。彼の心の奥底では、「このまま殿下に何かあったら、自分は生きているべきではない」という、切実な思いが渦巻いていた。


 クロエは、その二人の極限の状態を見て、冷静でありながらも、ボロボロのレイエスに心からの心配をにじませた。


「殿下、騎士団長の言われる通りです。『人外』を探す前に、魔獣の群れに挟撃きょうげきされる危険性が、今の我々には高すぎます。どうか、ご判断を。」


 その時、レイエスは、クロエと騎士団長に視線を向け、決断を下そうとした、まさにその瞬間だった。


 バンッ!


 轟音と共に、上空にキラキラと光る幻想的な光景が広がった。それはエリスの放った合図だった。砕け散った氷の塊が、ダイヤモンドのような粉となり、光を反射し虹色に光り輝き、鉛色の空から降り注ぐ。それは、美しさと、何かが始まったことを告げる、異様な兆候だった。


 レイエスは、その光景に、疲労を忘れて驚愕の声を上げた。


「な、なんだ!?あれは何が起きた?」


 彼の瞳には、好奇心と、そして王族としての危機管理意識が宿った。


 騎士団長は、その異常事態に、全身の血の気が引くのを感じた。


「な、何が…殿下!ここは危険です!すぐに戻りましょう!」


 彼の心の中の不安が、恐怖となって増幅していた。


 クロエもまた、その美しくも異様な光景に警戒を強めた。


「なんなの?すごい…綺麗…じゃない!何が起こるか分かりません!すぐに退きましょう!」


 彼女は美しさに見とれそうになったが、すぐに、指揮官としての冷静さと、未知の事態への警戒心が込められていた。


 しかし、レイエスの好奇心は、恐怖を完全に上回った。


「いや…調べるぞ!この異常事態、国家の危機かもしれん!対処せねば!」


 レイエスは、自分の身の安全よりも、国家の安寧を優先する、王族としての強い義務感に突き動かされていた。


 騎士団長は、レイエスの強固な決意に、絶望的な声を上げた。


「殿下!身の安全が第一です!どうか!どうか!御身を!」


 彼は、雪の上に膝をつくかのように、心から懇願した。彼の忠誠心は、レイエスの命を守るという一点に凝縮されていた。


 レイエスは、そんな騎士団長の切実な姿を、優しく見つめた。そして、膝をつき懇願するその肩に、そっと手を置き伝えた。


「騎士団長…頼りにしているよ。」


 レイエスのその一言は、騎士団長にとって、撤退という選択肢を完全に奪い去った。


 騎士団長は、疲れ切った体から、最後の力を振り絞るかのように、声を張り上げた。レイエスのその言葉は騎士団長にとって逃れられない呪縛のようなもの。その目には、職務への重圧と絶望からくる涙が浮かんでいた。


「はっ!命に変えても…お守りいたします…」


 クロエは、そんな騎士団長を優しく見つめていた。彼の極限の心労の中、鋼の忠誠心で動くお姿に迂闊うかつにも見とれていた。


 レイエスは輝きを取り戻した目で、二人に静かに伝へた。


「さあ、王国の未来がかかっているかもしれない。行こうか。」


 部隊は、その轟音と幻想的な光景が放つ場所へと、重い足取りを進め始めた。レイエスは、未知への好奇心に満たされ、騎士団長は、自らの心の絶望と、王への忠誠心という二つの重責に押し潰されながら、雪の道を踏みしめていくのだった。


 騎士団長の体は、もはや意志の力だけで動いていた。


(命に変えても…いや、命を捨ててでも、私は殿下の盾とならねばならないのだ…)


 彼の頭の中は、最悪の想定を何度も何度も繰り返していた。

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