追放した君への手紙
お前をこのパーティから追放する!
そう言って君を追放してから5年が過ぎた。私達のパーティも今では村の護衛程度の仕事しか来なくなってしまったよ。初めから分かっていたことだった。このパーティは君無くしてはまともに機能すらしないことを。
君は今どう感じているだろうか? 私はそれを考えるだけで手が震えるよ。今でもあの日のことは夢に見る。パーティを率いる女戦士だというのに……情け無い。
あの日までは良かったな。私が前衛で魔術師のエイダが後衛。ゼフが盾役。君は都度役割を変えて戦ってくれた。器用貧乏などと君は謙遜していたが、そんなことはない。君がいた事で皆が己の役割を果たすことができたのだから。
こんなことを書いたら未練がましいと思われるだろうか? それとも何か裏があると? もし君にそう思われているなら、それは私への罰なのだろう。
すまない。この手紙の主旨を書いていなかったね。
今日はどうしても君に伝えなくてはならないことがあって手紙を書いたんだ。伝えるかどうか非常に迷ったのだが、どうか聞いて欲しい。
あの追放は、君の妻であるミランダから頼まれたものだったんだ。
追放の前夜、ミランダは私に相談して来たんだ。君を危険な冒険者業から引退させたいと。
あの時彼女は身籠っていると言っていた。彼女の瞳は真剣そのものだったよ。それを疑う余地なんてなかった。これから生まれる命を愛する者と見守りたい。そんな彼女の願いを私は否定することなんて、できなかった。
仲間想いの君のことだ。そのままを告げたとしても、決してパーティを抜けなかっただろう。あの時はワイバーン退治を請け負っていた真っ只中だったからね。きっと君はやり通そうとしただろう。だから、私達は芝居を打つことにした。君を使えない存在だということにして。
あの時はひどいことを言ったな。エイダは君が出ていってからしばらく泣き続けていたよ。
この手紙を書こうと思ったのは先日、ミランダが病気で亡くなったことを知ったからだ。それを聞いた途端、私は居ても立っても居られなくなってしまった。今悲しみの只中にいる君に、このような手紙を送っては追い詰めてしまうかもしれないとも思った。
だが、どうしても伝えたかった。ミランダがいない今、君の側には誰がいる? 頼れる人は? 父親1人だけで子供を育てることの大変さを私は知っている。私の父もそうだったから。だから、君は1人じゃないとどうしても伝えたかった。
追放した後の君がどれほどの苦労をしたのかは想像に難くない。もしかしたらこの手紙も読まずに破り捨てているかもしれない。
私を恨んでいると思う。あの時、君に屈辱的な思いをさせてしまったことも。
本当に申し訳ない。許して貰えるとは思わない。
だが、もしも君が私達を頼ってくれるのなら、私達は喜んで手を貸すよ。それだけは頭の片隅に残しておいて欲しい。
最後にもう一度だけ謝らせてくれ。本当に、すまなかった。
下手な手紙ですまない。私はどうもこういうのは苦手みたいだ。
追伸
僅かばかりだが、今用意できる金額を同封させて貰った。エイダとゼフも協力してくれたものだ。何かと物入りだろう。良ければ使って欲しい。
君のパーティメンバー、アルク。
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