表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

3.ニコの思惑

思ったよりもアイディアが出てくるってのと、

思ったよりも一人称描くの楽しいなってことで勢いがあります。


ただ揮発性なのでまだまだこの先どうなるかは見えません。

 六分街のビデオ屋。そこに訪れる客は良くも悪くも……いや、俺視点では悪くも悪くも個性的な人間ばかりである。特にパエトーンへ依頼しに来た者はより癖が強い傾向にある。


 その最たる例が、ピンク髪でやや露出した胸のほくろが特徴的な彼女である。


「依頼があるんだけどー……って、サックーだけ?」

「あぁ、二人なら今さっき出かけて……って何その渾名」

「いいじゃない、なんかしっくり来たんだし」


 店の扉を豪快に開けた瞬間、勝手にあだ名を命名した彼女は邪兎屋のニコ。彼女は俺にとってパエトーンバレのきっかけになった人なのだが、本人は知る由もない。


 ちなみにアキラから『僕の知り合いにも敬語じゃなくていいからね』と言われているため、一応相手を見てから敬語を外すか決めるようにした。特に理由は無いけど、客の中でニコは一番最初に外した。


「それで、二人はいつ帰ってくるか聞いてる?」

「なんか旅行に行くって言ってたから、帰ってくるのは三日後だってさ」

「あちゃー、一足遅かったみたいね」


 嘘である。二人はパエトーンへの依頼を達成するために現地へ泊まり込みに行った、というのが事実だ。俺が嘘を言ったのは、自分がパエトーンの事を知らないフリをするため。そしてもう一つ。


(『ごめん、三日ほど空けるから店よろしく!』とだけ言って店長が出ていくってどうなのよ……)


 何かのっぴきならない状況だったように見えたけど、こういう時の言い訳の一つぐらいは用意しておいてほしかった。バイトのマニュアルに『店長が裏稼業で居ない時の客対応』とか追加したほうがいいかもしれない。そんなマニュアルあってたまるか。


 ともかく店長が不在の今、ニコはただ帰るのみのなったわけで――。




「まあ、元々サックーを借りていくつもりだったからいいんだけど!」


 What's?


「なんて?」

「だから、サックーをちょっとだけ借りに来たの!」

「なんで?」


 彼女の頼み事といったら、間違いなく邪兎屋がらみだろう。依頼とあれば時にはエーテリアスを相手する事もある危険な集団が、俺に一体何の用があるというのか。


「あんたやアキラみたいな一見人畜無害そうな顔が大至急必要なの!」

「俺はそのコメントをどう受け取ったらいい?」

「そりゃモチロン使いやす……利用価値があるってことよ!」

「全然言い換えられてないからな?」


 やめて18号、レジ台から俺の肩に手を置いて慰めないで。ンナ……じゃないのよ、可愛いなもう。


「心配は無用よ! ただ私が相手と話してる時に横でただ頷いていてくれればいいだけだから!」

「赤べこかな? というかその内容なんか怪しい匂いが凄いんだけど」

「まあそうかもしれないわね。ビデオ屋の名前もちょーっと使わせてもらっちゃうわけだし」

「この店に犯罪の片棒担がせるのだけはマズイよ? さっきからろくでもないことしか言ってないよニコさん?」


 そもそもただうなずくだけならボンプに任せれば良いと思うのだけれど、これまで邪兎屋をけん引してきたニコならその発想に思い至らないなんてことはないだろう。ならば一体なぜ?




 俺がずっと疑いの目を向けていたせいか、これまで慌てていたニコは突然、はぁと息をついて真面目モードになった。


「……わかったわよ、本当の事を話すわ。あたしの目的はサックー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を確かめたかったの」

「……味方かどうか?」

「そうよ。プロキシってとっても優秀だから何かと狙われやすいでしょ? あんたがもしかしたらバイトのフリをして何か企んでるんじゃないか、って疑ってたの」

「……」

「今のやりとりで、あんたはこの店を売らなかった。つまりサックーは正真正銘二人の協力者ね。疑って悪かったわ、今日の依頼はあたしの力でどうにかするから、気にしないで!」

「ニコ……」


 

 どうやら俺は、ニコからの疑いが晴れたらしい。確かにパエトーンのいる店に、急に知らん奴がバイトに来たら怪しむだろう。以前から関係を持っているニコからしたら、突然現れた俺の存在はまあ疑わしいと言える。そう、気持ちはわかる。


 ただしニコ、貴女は大きな勘違いをしている。




 俺協力者じゃないよ? 普通にビデオ屋のバイト求人に応募しただけだよ?? 二人がパエトーンだとか全く知らない(という体)よ???




 何か真面目な空気になってるんだけど、一切身に覚えのない謝罪をされても困るし、俺は赤べこにならなくてもいいの? 本当にどういうこと? よくわかんないけど今認められたん? 何基準の何目線なの?


 店を庇ったというか普通に人としてダメだから止めたのと、まだ一週間も経ってないのにバイト先が消滅とか笑えないってだけなのよ。


「それじゃ、次からはサックーにも頼る事があると思うから、その時はよろしく!」

「え、嫌だけど」

「ちょっと! そこは頷くところでしょ!」


 ブーブー言いながらもニコは満足げに店を出ていった。恐らく俺について色々と勘違いしたまま。まあ、敵は少ない方がいいからこのままでいいか。とりあえず店長には……冷やかしが一人来た、と報告しておこう。なんも買ってないし、間違ってないでしょ、うん。

ニコは飄々と相手を嵌める策略家(借金膨大)というイメージ。

あと色々拾っては面倒を見るおかん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ