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1.Random Playのバイト

まだゲームを初めて二か月くらい、メインストーリーは追いつきましたがかなりうろ覚えです。

 旧都崩落からどのくらい経っただろう。これまで常識だった日常が崩壊し、人々の安寧が根底から覆された世界。生活を脅かす災害は突然訪れる。まるで緩んだ日々の隙をついてくるように。


 エーテルの侵蝕に抗う町、新エリー都。そこで人間たちはこれまで通りとはいかなくとも、日々の生活を送ることができている。かつてあったはずの日常を取り戻すため、何気ない生活を再び築いていく。自分がいつエーテリアスになってしまうかもわからない中で、正気を失ってしまわぬよう、自分を見失ってしまわぬように。


 それは、現実逃避とも言えるだろう、ただ恐怖したまま過ごすなんてやっていられない。だから人は、生きる上で娯楽を求めるのだ。それが例え、ただの延命措置、現実から目を逸らすだけの行為であったとしても。


 


 ここは新エリー都の六分街、とある一角に昔懐かしなビデオ屋が佇んでいる。文明として言うなれば一昔前のアナログチックな玩具である。しかしテープをレコーダーにセットすれば、幾多もの世界が繰り広げられる娯楽へと変貌を遂げる。


 そんなビデオを求める客は少なからずいる。映像を見ている間は、別の世界に飛び込んだような気分を味わえたり、自分の推しが奮闘している様を見届けられたりする。そんなビデオの魅力に取りつかれたら最後、「Random Play」の会員になる以外の選択肢が無くなるのである。



「ありがとうございましたー」


 そして今日もまた一人、ビデオの魅力に取り込まれた客が出ていく様をバイトの俺、サクは見届ける。ふぅ、と一息つくと後ろから声がかかった。


「サクー、今日もお疲れさま!」

「リンさんとアキラさんもお疲れ様です。今日はこれで店じまいですかね?」

「ああ、サクもあがってくれて構わないよ」

「わかりました」


 この溌剌とした可憐な少女はリン。そしてもう一人の大人びた少年はアキラ。二人は兄妹でまだ若いというのに自営業を営んでいるという、バイトの自分としては頭が上がらない思いである。


「サクー、歳も近いんだから別に敬語じゃなくていいんだけどなー?」

「僕もリンの意見に賛成だ。少し距離を感じてしまうな」

「いや、まだバイト三日目ですし」

 

 俺としては二人の距離感がちょっとおかしいんじゃないかと思っている。リンさんや、男相手にちょっと気軽に触れすぎるの良くないと思うんだ。ずっと肩に手を置きっぱなしで勘違いしちゃいそう。


「ふむ、まだサクの信頼度が足りてなさそうだ」


 信頼度って何?


「ノットでの呼び出しは一日1回だもんね。コツコツ積み重ねよう!」

「そのルール全然意味わからないんですけど……。同じ店内にいるのにDMで呼び出されるの何なんですか」

「ま、まぁそれは企業秘密ってことで……」


 いや無理ありすぎるわ、どんな企業だよ。最初目の前にいるのにノットでDM送ってきたときはクビにされるのかと冷や汗びっしょりになったわ。逆に信頼度下がるってあんなの。


 ちなみにだが、俺は戦闘力も無ければホロウ耐性も無い。もしビデオ屋に何かあっても俺には何もできやしない。時々変な客が訪れたりするが、「有事の際は即治安局に通報!」がモットーである。痛いの嫌だし、賢く生きよう人類。



 着替えが終わって裏口から出たところで、全身の疲労を感じて伸びをする。バイトの仕事は店番と在庫の管理が主である。レジで座っていると隣にいるボンプの18号の存在にかなり癒される。何だったら18号との信頼度の方が高くなっている気がしないでもない。……いやだから信頼度って何。二人があんまり繰り返すからうつっちゃったよ、くそう。

 

「よーしお兄ちゃん! 今日はラーメンの日だよ!」

「待てリン。昨日はピザの日だって言ってなかったかい?」

「そうだっけ? でももうラーメンの舌になっちゃったしー、お兄ちゃんお願い!」

「やれやれ、仕方ないな。今夜はチョップ大将の世話になろうか」

「やったー! お兄ちゃん大好き!」

「全く、現金な妹だ……」


 裏口のドアの向こうから平和な会話が聞こえてくる。ただ、この三日間ジャンクフードしか食べていないような気がするのは置いておくとして。俺はどうしても二人との距離感に悩んでいた。



「普通の兄妹、じゃないみたいなんだよな……」


 三日間バイトしただけなのだけれど、二人の事はだんだんわかってきた。今の世の中だとか財政だとか、詳しいことは何も知らない。けれど素人目で見ても、ビデオ屋の経営だけで若者二人の生計が成り立つとは思えない。




 ()()()()()。その名前を聞いてしまったのだ。




 最初は当然耳を疑った。あの超が付く伝説のプロキシ。新エリー都に住む者、インターノットに触れている者ならば誰もがその名を知っているだろう。一部過激ともとれる信者が現れたりもしていた。


 それがあんな若い、普通の人にしか見えない二人だったなんて。もしこれがインターノットに広まったら、どうなってしまうのだろう。六分街に混乱を招くのはまず避けられないだろう。軽い気持ちで開いたインターノットをぼーっと眺めながらそんな事を考えて……そっと閉じる。


「踏み込まない踏み込まない。俺は普通でいたいんだ、普通の日常でありたいんだぁ!」


 改めて自分に誓いを立ててから、俺は帰路についた。




「そういえばお兄ちゃん。サクって、ちょっと変わってるよねー」

「そうだね……。僕たちの知り合いといい勝負しているかも」

まだプロットはおろか続くかどうかも全然わかりません。

それでも良ければ見ていただけると幸いです。

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