ショート×ショート お手軽小説
読書感想文は嫌いだ。
僕は本を読んでも面白いと思った子はなく、それを作文にするというのは苦痛だった。
困った僕は趣味で小説を描いている友人に相談すると、とある小説を渡された。
それは「お手軽小説」といい、不思議な本だ。中にはAIが組み込まれており、いくつかの質問をする事で自分好みの小説を紹介してくれる。
それで解決するのだろうか? っと不思議に思いながら僕はその小説を手に取った。
すると、今まで嫌悪していた本がとても面白くて指が止まらなかった。新しい世界が広がり、未知への冒険へいざなってくれた。
また、この小説の凄いところは体験モードの存在だ。小説の登場人物になる事が出来てそれを体験出来る。
特に良かったのは「ホームズ」だ。
友人は探偵役。僕は犯人役をやっている。
そこは助手役のワトソンじゃないのかと思うかもしれないが、実を言うと僕は悪党の方が好きなんだ。よく人を騙してはいけないと教えられてきた僕にとって犯罪行為はたまらない背徳感があり、楽しんでいる。物語だからこそ悪い事をしても問題ない。
また、この小説の凄いところは物語で語られていない裏側も体験出来るところだ。
殺人現場を見つけるシーンはあっても殺人するシーンは中々ない。僕は犯人として殺人する体験を楽しんでいた。これは探偵役には味わえない体験。僕だけの世界だ。
そして友人に追い込まれて破滅するところまでの演技までセットが楽しかった。
いつしか時間を忘れて没頭するようになった。
しかし、その様子を見た母はお手軽小説を取り上げた。母からは「本を読むのはいいけど勉強をしっかりしなさい」と言われた。
そうなれば僕はどこで殺人をすればいいんだろう。流れ滴るあの赤い血は僕の眼光に焼きついている。あの悲鳴もコーラスのように心地よかった。ゲームではとてもじゃないが味わえない。臨場感が足りないんだ。
僕は悩んだ。そうだ。良い事を思いついた。
僕は母の目を盗んで台所から包丁を取り出した。母はどんな声で鳴くんだろう?
語彙力と表現力の訓練です。
感想頂けると幸いです。
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