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僕たちの戦争  作者: イケサキ
Tokyo白銀セキリュティTokyo青山Japan侘び寂びゲート編
3/18

賢い人でも通ってる、桐上塾。賢くない生き方をしたければお勧めしません。賢く生きよう桐上塾

 賢い人でも通ってる、桐上塾。賢くない生き方をしたければお勧めしません。賢く生きよう桐上塾。

 

 頭が悪い人は桐上塾に行かない。

 

 頭が悪くなければ桐上塾に。

 

 頭が良い人の共通点は桐上塾にあった?

 

 そんな広告が流れている現代に秋人は生きていた。小学生から中学生を対象とした桐上塾はそのような広告が上手く行き障害者たちが沢山きてくれた。

「障害者は俺に任せろよな」

 桐崎はニコニコしながら奇声を上げている小学生の頭を撫でていた。

 

「あう! あう! んん!」

「え? わかんない? 2+2が?…5だよ」

 

「あれは無理がある」

 坂上がもう観念していた。

「すぐ絶望するのも悪い癖だと思いますよ」

 秋人は近くの自販機で買ったコーラを飲みながら言った。

「絶望というか、無意味な気持ちだよ。でも彼らを除いた健常な生徒たちはしっかり学んでくれるから、あくまでも私はその子たちにものを教えるつもりだよ」

 

 講師二人だと流石に足りなくなったので、秋人、優希、古賀の三人が来た。

 三人の中では優希が最初だけ人気だった。やがて口下手な古賀が人気になった。

 秋人というとフラチやヨコミも連れてきて自分だけはサボっていた。すぐバレた。

 さらに暴かれた秋人の学力が低く、四則演算すらまともにできない事実には桐崎も呆れていた。

「お前まじ?」

「だって勉強する時間が料理でいっぱいだったから、そもそも頭悪いし」

「あれ、秋人って料理人になるのが夢だっけ?」と坂上。

「いや、女の子にモテたくて練習してたんですよ」嘘である。彼が作る料理は簡素なものが多く、空いた時間は趣味に没頭していた。

 

「…じゃあ秋は、バラガキの相手をしてくれ。あいつらならお前でも教えれるよ。いっそ計算機使え」

 

「バラガキ?」

「あ、ちなみに漢字だとこう」

 

 薔薇が木…それは坂上が名付けた四人の悪ガキたちのこと。もともとはバラガキからだが、坂上はそこに漢字をあてた。

 

 坂上と秋人は廊下を歩いていた。

 

「噂によると真っ昼間に公園にいるおじさんを狩ったらしいからさ。気をつけてね、秋人君」

 この噂によると、は嘘である。その時坂上はその公園にいて現場を目撃していた。

 

「やばそうっすね」

「やばいよ。私でも相手にしたくない。恐怖心とかが欠如しているようでね、心の通わない人間には相応の攻撃性を秘めているようだった。中でもそれらがあの子たちにとっては遊びに変わりないらしい。頑張ってね、秋人君」

「…まあ、旅は道連れって言うでしょう。頑張りますよ、情けが無くてもこうなったら」

 

 扉を開けて見ると、中には四人の少年がいた。紙に落書きをしていたが、四人は一斉に秋人を見た。

 そんな悪ガキそうでも無さそうだけど、と秋人は四人の顔を見て思った。四人の顔は幼い可愛らしさがあった。

「こんにちは」

 と、秋人は元気に言った。

 

「俺たちの勉強を教えにくるってことはよっぽの頭が悪いんだろうなあ、きっとそうだ」

 一人の少年が言う。

「まあ正直に言うとそうなるけど、流石に小学二年生なら教えれるよ」

「俺たちは小学三年生だ」

「そうだ」と三人。

 

「そう。君たち名前は?」

 

「うるせえ」一人の少年は鉛筆を彼に飛ばした。

 秋人は避けたが、そのあと何本も飛んできた。それにキレた秋人は一人の少年をしばき上げた。

「これでも高校二年生だぞ。さっさと名前教えろ。俺は秋人。まずお前はなんて名前だ?」

「よ、吉田勇気…」

 秋人は抑えていた吉田を離した。残りの三人は怯えた顔をしていた。さっきまであんな凶暴なガキがいつのまにか年相応に目を震わせていた。それを見た秋人も流石に気を取り直して声を和らげた。

「君たちは?」

「宮良歩」

「瀬古晶」

「僕は六谷つとむ」

「鹿波が霞むくらい珍しい苗字してんなあ、お前たち」

「秋人先生は鹿波っていうの?」と宮良。

「はは、それじゃ馬鹿並みだな」と瀬古。

「お前ら口に気をつけろよ。これでもお前たちは教えてもらう側なんだからな」

「馬鹿並みだってまだ高校生だろ? 馬鹿並みの高校生に教えてもらうくらいなら遊んだ方がマシだと思うぜ」

「遊んでたらロクな人生送らんぞ」

「高校生にもなって四則演算ができねえ馬鹿並みには言われたくねえっての」

「うるさい! それにお前たち、おっさんを襲ったと聞いたけどこれは本当か?」

「けけ、話を変えた」と青木が笑っていう。

「まあまあ。それでお前たち、凄いじゃないか、おっさんを襲ったんだって?それも真昼に?昔のどっかの国でありそうなことを、お前たちはやってのけたんだろ」

「おだてても手のひらは見せねえぞバーカ」

 

「馬鹿にしてんだ!」と秋人は怒鳴る、

「お前たちがやったことは悪名高いガンマンがいた時代。南北戦争の後にあった新聞紙に載るに相応しい悪を犯したんだ。いったいなぜそれを犯したのか、またどうやったかを教えなければお前たちを警察官に突き出すぞ」

 そう言うと吉田が言い始めた。

「普通にやったんだよ。俺たちのやり方で、絶望してそうに歩いているおっさんを転ばして、背中に乗った。コードを首に引っ掛けて、姿勢を崩した時にマスクを被せたんだ。宮良と瀬古に両手を抑えさせて、青木がその隙に鞄やら財布を奪って逃げたんだ」

「……小学三年生だろ? お前ら?」

「でも今の時代、ネットで襲い掛かる方法は調べれば出てくるよ。僕たちは、それをちょっと試したんだ」と宮良が言う。

「ちょっと…? …それで、鞄と財布はどこにある?」

「ここだよ」

 つとむがバックを出した。

「鞄は重かったから川に捨てたけど、財布ならここにあるよ。二万円くらい入ってる」

「いかれた児童め…その机に置いとけ」と秋人はため息を吐いた。

「秋人先生?」と吉田、「その財布、どうするの?あとでゲームセンターで使おうと思ってたんだけど…先生も一緒にやろうよ」

「交番に届ける」

「え、でもそれじゃ、秋人先生が疑われちゃうと思うよ、きっとね。だって、財布を持っていた人は襲われて盗まれたんだから。もし財布を持って警察官なんかに話したら、秋人先生は疑われちゃうと思うよ」

「それに、きっと犯人は子供がやったとは思わないと思う。周りにいる目撃者はそんないなかったと思うし、いても行き場のない人たちだからね。いつもお酒を飲んでて呂律も回ってないんだからさ」

 たしかに、容疑者になる可能性はある。秋人は口にはしなかったが、四人の少年が言っていることは道理があった。四人の少年を突き出せばいいが、こいつらのやり返しは、人を簡単に罪悪感もなく襲うくらいなんだから、坂上が言った通りほんのちょっとしたお遊びで殺しにくるかもしれない。

「…襲ったのはいつ?」

「一昨日だったかな、もう忘れたよ。似たような日が多いからね」

 吉田は言う。

 

「お前たち、ほんとに子供か?…」

「子供だよ」と吉田。

「うん、まだ」と三人。

「少年院に入れられそうだな」

「でもみんなやってるじゃん」

「…」


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