暴力、殺害、無秩序、聖人
その直後、爆音がそのスタジオを覆うまで一切なかった危機感が莫大になった時、二人の目には巨大な象に衝突されながら壁を壊してやってくる秋人の背中が見えていた。
「あ! 秋人!」と桐崎が叫んだ。
像は壁まで突っ込んだ。離れると、くぼみに秋人がおり、剥がれると無抵抗に落ちた。
「な、なにが起きてるんだ」
「逃げよう隼人!」と遊山。「これは…ほんとに死ぬかもしれない…」
幾人もの逃げ場のない障碍者がパニックになっては叫び声を上げていて、凶暴な動物たちに襲われている風景に遊山は戦慄した。
「動物使いが連れてきた動物が暴れてる!」
と、田辺が走ってきていた。
「そんなん、見てわかるよ」
「早く逃げて!」
田辺と優希は唯一いる児童、吉田の四人を避難通路に誘導していた。
「秋人が!」
トトが消化器を持ってうつ伏せの秋人を隠そうとしていた。
「あそこにまだ子供が!」
「ゴホッゴホ…ありがとよ、トト…予想よりも最悪な状況だけど。それに全身、バキバキだ」
秋人はむせ返る煙の中で立ち上がって出てきた。咳をしていた。
「ごめん!」トトは秋人の側まで行った。
「秋人、逃げよう?」
「お前たちだけで逃げな」と秋人は二人の頭に手を乗せた。
「秋人は逃げないの?」
「ここで逃げたら敗北を認める事になる。それにいくつかやる事もある。頭だ痛い…興奮剤のせいだ…」
トトはお互いに見合いながら猫になっては避難通路に走っていった。
「秋君!」と田辺は腕を上げた。
秋人は手を振って応えた。
それを見て安心したのか、田辺は避難していった。
その直後、秋人はゲロを吐いた。
「うぇえ…変に夢を見たせいで気分悪い。倦怠感も、まだ吐き足りない…?」
子供のチンパンジーが近づくと、秋人は抱き上げて蹴っ飛ばした。
「ゥッギィー!………」
「まだ力はあるようだ。コヨミがもし、力を貸してくれたらな。まだ許してくれないのかよ」
秋人は目の前で凶暴な猿や虎に殺されている障碍者を見ていた。
「俺は…誰もが見たくない結末が目の前で起きているのを見るのにさ」
下を見ていると、足元に銃が滑ってきた。流れてきた方向を見ると、古賀が戦っていた。彼は吉田たちや桐崎に襲い掛かっていた動物を正確に仕留めていた。
「お前たち、逃げロ」
「あ、秋が!」と遊山。
遊山が見ている遠くで秋人は、うなだれながら銃を持って立っていた。空を見るように顔を上げて、激らせてくる凶暴化した動物に向けて銃を構えて撃った。
「あいつ…俺たちが知らない間に色々な同業者と戦ってきたんだ」と桐崎。「逃げよう、秋人なら生き残れるさ」
彼らは避難通路に逃げた。
「俺は動物好きなのに…すべてが過ぎ去ってゆくよ、偶然にも掴んじまった瞬間風速のせいで、それは重りのようなお前がいなかったからか…?」
走ってくるサイの頭に二発撃った。その倒れたサイに密猟者たちがやってきてツノを奪って帰国していった。
「弾んね」と言って銃を捨てる。
それから秋人はまだ撮っているカメラの前に立ってレンズの中を覗いた。
「まだ撮ってんの?」
「…はい」
「そう」と秋人は飛んできた銃を持ってカメラに向けた。「愛護団体にはとても見せられねえ。こいつらが外に出て人々を襲う、どうせ中流層の連中だから関係もないか」
というと頭に何か当たった。
「いや、もしかしたら許されるたった一つの方法かもしれないから! ちょっとは目を閉じてもらうぞ!」
カメラに銃を撃つと、秋人は突然走り出した。
「よっしゃーいくぞー!」
そう意気込んだ秋人だったが縄に足が掛かって転んだ。「イデエ…」すると秋人は抑圧していた倦怠感が沸き立つのを感じた。
「ううぇえ…肺が掻き回されてるようだ」
遠くから真っ白い動物がやってきていた。銃は手からはなれてしまっている。
まずい。と秋人は動かなければならなかったが、仰向けになって、後ろ頭に手を組んだ。
「お前、横にこいよ」
と、秋人は襲い掛かってきていたホワイトタイガーに話しかけた。
タイガーは秋人の声に応えて、彼の横に横たわった。
「どうして殺し合いが始まってるんだ?」と秋人。
「そんなの知らない。俺たちは生きたいだけさ」
「動物に共感するのは今日が初めて」
「それはどういたしまして」
「でも、みんな狂ってる」
「それは僕も思う」
「お互いに知れてよかった」
「こちらこそ。その宝石、よく似合ってる」
と、タイガーは彼が身につけている種々の煌びやかな装飾を誉めた。
「元はと言えばこの宝石のせいでね」
「誰でも間違いはあるさ」
「物事が甚大になっても?」
タイガーはせせら笑うと、毛並みを整えようと舐めた。
「人それぞれ」
「じゃあ、解決ってわけ?」
「どうだろう?」
「きっとうんざりしてるよね」
秋人はタイガーの顔を見ようとした。
その時、古賀がタイガーの頭に銃声を鳴らした。
「…なにしてる?」と古賀に言った。
「お前がなにをしてるんダ! 状況を考えロ!」
「状況を考えるのは舌足らずのお前だ!」
「早くこの戦いを終わらせるんダ!」
古賀は刀を秋人に渡した。
遠くの方で象が鳴き、まだ息のある人間を踏んづけていた。
「…わかったよ」
深呼吸をして、秋人は象に向かって走り出した。舞台のセットを上手く活用しながら、阻む動物を鞘で抜いた刀で殺しつつ、一段、二段と、飛び移って高くなると逆さに持った冷たい刃が壊れかけの照明を反射させながら飛んだ。
刀は瞬く間に血に濡れた。身体中の雨が、秋人を真っ赤に染めた。
刀を抜いて着地、休む暇なく辺りにいる動物を次々と斬っていった。
「もう搾りかす程度の力しか出ないのに、まだまだいけるのか?」
刀を見ていると足元の影が暗くなった。
大きな麒麟が彼を覆っていた。脚をバタつかせて襲おうとするが、古賀が照明器具に狙いをすまして撃つと、落下して頭に直撃した。その衝撃から麒麟は悲鳴を上げながら頭を垂らす、その瞬間を待っていた秋人が、首に刀を通した。
「気分悪いな…」
刀をまたキリンの脳に刺して黙っていると、遠くから呼ぶような声がした。
「おい秋人!」それは幼い声。
麒麟の前に立つ秋人に向けて銃を出している、勇気がいた。
「勇気、なんの真似だ?」
「俺はお前が大嫌いだ。なんで生き返った?」
飛んでくるカンガルーの首を斬る。
「生きるからだよ」
「説明になってない!」と勇気は引き金を引いた。
秋人は被弾したが立っていた。
「撃ったって痛かねえよクソガキ」
「何をしてるんだ勇気!」と桐崎が勇気を蹴り飛ばす。弾みで銃が飛んでいく。
「はやく逃げるぞ!」
桐崎は勇気を抱き上げた。
「ぎゃっ、下ろせ!」
まもなく隣のスタジオから動物の獰猛な声がしてきた。本能に危険だとその場にいる全員が感じた時、何十匹もの猿が飛び込んできた。すでに手は血だらけで、勇気と桐崎に襲いかかった。
銃声が猿の頭に入った。鼓膜からではなく、脳に響かせる。
古賀が銃を構えていた。再び隣のスタジオから凶暴な動物がやってきた。
「観客を全員殺し終えた猿たちだ」
秋人は刀を握りしめ、眼を閉じる。そして眼を開けた時、彼は鋭くなった歯を剥き出しに凶暴の中へ突っ込んだ。
「おイ! これじゃ撃てなイ!」と古賀が言う。横から来る猿に襲われたがなんとか殺した。「さすがに猿は強いナ…」腹部から出る血を見て言った。「文明には勝てなかったようだガ…」飛びついてきた猿の頭につけて撃った。
そんな中秋人は隙を見せない素早さで猿たちを壊滅に追い込んでいた。
「古賀!」
名前を呼ばれた古賀は、チンパンジーの群で暴れている秋人を見た。手元にあるバックの中、全ての銃を秋人の周りに投げた。
秋人は屈みながら斬り、銃を取ると撃った。そして刀の切れ味に限界を感じると捨てて銃のみで戦っていた。
残りの一匹、隅で本を静かに読んでいるゴリラの首をボロボロの刀を拾って居合で落として終わった。そして秋人は周りにある弾切れの銃の中でうつ伏せに倒れていた。
身につけていた煌びやかな装飾が剥がれていて、血が流れていた。
「終わりかな、秋人さま…」と隣のスタジオから銃を構えた動物使いが出てきた。
「よくもわたしの可愛い動物たちを殺してくれましたね」
「撃つナ」と古賀が動物使いに銃を向ける。
「おや、インチキ特有のお仲間さんですか。どうして銃なんかを所持しているのです?それも大量に…犯罪者さん?」インコが動物使いの肩に乗る。
「…」
双子のトトが銃を構えて出てきた。
「秋人を撃つなら僕たちは撃つ」
「俺も犯罪者だぜ」と桐崎が顔を出した。銃を持って動物使いに構えている。
「おっと、お前はこっちだろ…?」とクビされた男と、された者たちが銃を構える。
「やめるんだ。争いは何も産まないよ」
と、団体が銃を持って桐崎に銃を向けている男たちに向けた。
「みんな銃をおろして!」
と、田辺が銃を構えて出てくる。
それから沈黙が続いた。
銃声が響いた。
全員が固まった。
クビにされた男の手から銃が吹っ飛んでいた。
「撃たせないよ」
撃った優希が銃を持って出てくる。
「馬鹿優希!危ねえだろ! ほんとに銃撃戦になっていたぞ!」と桐崎が声を荒げた。
「え、なに? そうじゃないの?」
「俺たちは真面目で勤勉な規律を守る日本人だ。ほんとに撃つ奴なんて狂ってる奴だけだ!」
「いや、撃つよ」とクビされた女が言うと、優希の持っている銃を飛ばした。
その弾みでもう一人の女も桐崎の銃を弾いた。
優希は負けじと足元にある銃を拾ってまた構えた。
「そりゃあ最初に撃ったからな。後ろから続くことなら誰でもできるさ。見た後に飛ぶなんてなおさら、何もせず恨みを持つことも、俺に銃を向けて脅すなんて撃つよりも簡単だ。けれどお前たちは臆病者さ。だってなにも持たない俺の頭に今だってこれからも撃つ事はできないんだから。当然、俺たちはいつだって足並みを揃え生きてきた。道徳や美徳が息づいていたからさ。
団体の勘違いを生放送の進行から受ける影響だって始める前から考える事ができた。でも資本主義だ。もうここには道徳も美徳もありはしない。たなごころから消えた。そしてたなごころも消えたよ。言い換えれば資本主義、拳銃が殺した。銃声の響きが以後の環境を変えた。そうすれば俺たちは奔走するしかなくなってより経済が回ってくれるからさ!
そんな中、お前は待った。躊躇、罪悪、自閉症のような正義のこだわりが、かつての良心がまだあると、待っている節でもあるかね。だから撃たれた。お前はそこで堕落を初めて認めて撃った。
どんな理由であれ、今の世の中は有名人に簡単になれちまう、中流層なら尚更。俺たちの住む貧乏人だらけの街でも犯罪さえ犯せば一躍時の人さ。問題はそこに罪悪感や贖罪をする事があるかだ。注目されたらなんだっていい連中の行いから、よりによって俺がそのような印象を持ち、お前たちの活動を無に帰す行動をすると危機感を持ったかもしれない。でもどうだろう、逆に言えば今あるお前たちの実績と、俺の実績では差が開いている状況を考えれば、これの影響はほぼ無いと考えてもいい。最初に言った事がなければ」
「…どんな理由であれ、今の世の中簡単に有名人になれる…?」
遊山が銃を構えて出てきた。
「殆どの人間は罵り、性的、無我でありながら強さや逞しさ、見える名誉に憧れている。それら差し引いても惹かれる意欲とは反抗心を燻らせるお前たちの他にいるのだろうか?
お前たちは胸算用をして、俺が作り出しかねないスティグマを阻止しようと思った。何を言うかまるでわからない、金だけを持って強引に公共の場に立つ歳も経験の跡も見せない容姿の俺を警戒してな。
印象は簡単に生まれる。それが良くても悪くても。使い勝手がいいものなら普及だってする。それは殆ど負である事も、それを理解しているお前らなら、ついに俺に耐えられなくなって黙っていられるとは思うはずがない。SNSで聞いてもない事を発言する馬鹿みてえに、それが裏目になるとも知らず、自爆するとも知らずに、だが無理もない。
厄介な世の中だ、有名人にならなくなって誰彼義務を求められるようになった。日々更新される度重なる規制。普及すればするほど責任は重くなる悪循環、善を求めても翳りじゃ悪人。お前たちはこの中にいて、もともと入っている。
だからこそ犯した行為を、俺は責めることはしない。ただ、これが敗因なんだ。倫理も良心も滅んだ世界で生きるお前の僅かな良心は誉めてやるよ。この社会じゃ無意味で無価値でなんの役にも立たなければ見下されるゴミだけどな。俺は嫌いじゃないぜ、でもお前は二番煎じの臆病者で負けたんだ。日本どころか世界の未来は暗いんだよ!」
そう叫んだ時、動物使いが銃を頭に向けて撃った。団体や首にされた人々も頭につけて死んだ。
「責任を取ったつもりなんだろうがそういうのを無責任て言うんだよ」と死んだ男の顔を蹴飛ばした。「どうせなら生きてみせろ」
「君たち、銃刀法違反で逮捕──」
と、警察官が来る。
まもなく警察官は倒れる。古賀が警官の持っている銃をバックに投げた。
「秋人、生きてるか?」桐崎は秋人のそばに立つ。
「…うん」
「…だったら立てよ」
秋人は顔を動かして桐崎を見る。
「秋人!」と遊山が駆け寄る。
「最高の戦いだったな…」と秋人は古賀を見て言う。
「まあナ…」
秋人は仰向けになる。
血がまだ流れていた。
「俺は死なないよ」と手を握っている遊山に言う。「だってそうだろ、明らかに死ぬ量でもスタジオの中なら生きれる気がするんだ」
「医療バッグ持ってきた!」と田辺が走ってくる。「救急車も呼んだよ、秋君!」
「くそ不快だ。君付けは…」と眼を閉じる。
「秋!」と全員。
「んなに?」と眼を開ける。「休まして。かなり動いた…それでもうたくさん」と眼を閉じて、それから開けなかった。
「まだ起きてる!」と全員を驚かせた直後彼は白目剥いて意識を失った。
救急隊が来ると、彼を緊急治療室に運んだ。なんとか命は助かったが、大量に血が出て普通なら死んでいると言っていた。
物騒なタイトルから後半の長い説教、胃が重たくなりますね。
おつかれさまでした。何人脱落したんだろう。
話をまとめつつ、周りにいる人間を倒す方法を考えたらこれしかありませんでした。




