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僕たちの戦争  作者: イケサキ
有名と成り上がる二人編
13/18

遊戯の仕掛け

「今人気の俳優を出せばよかったかもね」と優希は、マイクを片手に立っている桐崎に声をかけた。「上手くいくと思えないもの」

「なら上手くいくと思ってくれ。ここまで来たら計画には逆らえない。今さら怖気付いたって後の祭りだろ」

 スタッフが桐崎にそろそろだと声をかけに来た。優希はため息を吐いた。

「隼人」と瀬古晶が話しかけてくる。

「なんだ?」

「大地君はどこ?」

「あいつはバイト。来るとは言ってたけど。あぁ…じゃあ行ってくるよ」

「死ね隼人!」と勇気が言った。

「そうだ死ね死ね!」と他三人も言った。

「死んでくるよ」

「この!」

 勇気が投げた紙コップが桐崎の頭に当たった。

 

 桐崎は項垂れながら下がっている銀幕の内に入った。その中には桐崎が集めれるだけ集めたいわゆるマイノリティや障害を持った人間たちがいた。中の一人、同性愛者のまことは彼に手を振った。が、桐崎は気づかなかった。

 彼は天井に人が吊るされているのを見かけた。一人のスタッフに声をかけ、あれはなにか聞いてみると脳性麻痺の子供といった。

「…あの乱暴な動きを電気に見立てるのは流石美術スタッフだな」

「え、桐崎さんが考えたんじゃないんですか?」

「…」

 

 いよいよ始まると、銀幕が上がり始めた。歓声や拍手と共に音楽が聞こえてくる。桐崎は顔が見えるまで目を閉じて深刻な呼吸を繰り返していた。

 顔が銀幕から見えるようになると、彼は喋る前に、翳りの方に笑顔で身を退いた。

 彼が隅に行くと、舞台上ではLGBTたちが並んで鉄の棒を持ち上げていた。その間を障害者たちが通り抜けると、横になっているうつ伏せ状態のダウン症たちを起こした。ダウン症たちは仰向けになり、胸につけていた花を両腕を伸ばして称えた。

 後ろの方では、脳性麻痺たちが喚き、興奮したことで体を大きく動かしていた。それを合図に大型のファンが回転し始める。風はLGBTが持ち上げている鉄の棒を倒した。それはばらばらになった。

 LGBTたちは天井を見上げた。するとハンガーを服にかけたような人体模型が流れてきた。それらの模型は種類があり、同一の構造を持たなかった。中が透けていたり、動物の臓器を無理矢理入れられたようなもの、骨のみの模型が流れた。それを見ていると、今度は血の入った瓶が流れてくる。それは血ではなく赤い絵の具だったが、本物のように見えた。瓶は舞台の真ん中までくるととまり、ほかの模型と一緒に下がっていった。

 大型のファンは止んだ。

 血の入った瓶にLGBTたちがやってきた。手には短くなった鉄の棒を持っていた。棒は瓶の中に投げ捨てられていく。それが終わると彼らは下がり、瓶に注目させる。瓶の中は知らぬうちに渦を巻いていて、水位が下がってゆくと鉄の棒が輪郭を形成している、扉があった。金槌を持った桐崎が現れると瓶を叩き始める。ヒビが入り、破れた。

 中にある扉に桐崎は入って行った。進んでカメラが近づいて、中を見るため開けてみると、諸々の人間たちが立っていて、一番前には桐崎が手を後ろに組んでいた。

 カメラが引くにつれ桐崎を腕を広げる。背景のスクリーンは虹色に変わり、はためく旗のように揺れていた。カメラは天井に向いた。天井には両側に脳性麻痺が縛られていた。彼らの奇声が上がるとスクリーンの中央に『多様性』という文字が浮かび、間隔でそれは『LGBT』や『ダイバーシティ』という文字に、叫ぶ毎に変わっていった。叫んだり動くのを止めると文字は消え、スクリーンの色も暗くなるのを、目の前に吊るされた鏡を見て脳性麻痺は必死に留めようと叫んでは暴れていた。

 仕掛けが終わると、拍手が聞こえた。桐崎はお辞儀をして、台本の紙にちらりと目を通した。

「ようこそ生放送に。この生放送では…この生放送は…地球を救う世界の愛です。ラブ・アースでは障害者やマイノリティに属する人々を救おうという募金活動をしています」

 天井に吊るされている一人の脳性麻痺が落ちると、さらに力が必要になり片方の叫びが強くなった。あまりにうるさく、桐崎たちは天井を向いた。一人のスタッフが癒しの音楽を流してそれは和らぐ。

「これから芸術を見て頂こうと思います。その次に物語です」

 

 カンペが視聴率2に下がったと書いた。

 うんざりして桐崎は舌打ちした。そうするとスクリーンに女の顔面が出た。これで視聴率は20に回復、寄付も増えた。以後女の顔面が映った。脳性麻痺は叫び声を上げ続け体を動かしていたがスクリーンが変わることはなかった。

「歩」と晶。

「なに?」

「ちょっと出てかない? 喉乾いた」

 晶は背伸びしながら口を開けた。歩は彼の口の中にある小さな赤い舌が乾いてるように見えた。

「でも、お金ないよ」

「透君」と晶は横にいる古賀透を見た。

 古賀透は彼を見た。

 ジッと冷たい小さな黒い目は、通常に持ち合わせる感情というものが見当たらなかった。

「喉乾いた」

「…ジュースでも飲みたいのカ」

「うん」と気怠そうに言う。

「僕も喉乾いたよ」

 古賀は財布を二人に渡した。

「ありがと」

「お前らどっか行くの?」

 と、勇気が二人を見る。

「自販機で飲み物買うんだよ」

「ふうん…」

「行かないのカ?」

「行かないね。でも俺のも買ってきてよ」

「いいよ」

 

「最後の一段です!」


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