【第三話】花も歩く時代
おはようございます!
いや〜、疲れたときにしっかり寝るとスッキリするね!
なんだかこれ以上ないほど開放感に溢れてるよ。
結局僕は、謎の広場で朝まで寝ていたらしい。
軽く伸びをしながら体を起こす。
「うおっ!」
ビビった。
だって、昨日まで辺り一面に生えてた白い花が僕を囲うようにはえていたからだ。
前の世界でも移動する木なんてのがあった気がするが、それにしたって一晩でこれだけの大移動を果たすことはないだろう。
いや違う、よく見るとそもそも白い花は生えてすらいなかった。
立っていたのだ、根っこと思われる部分を脚にして。
「□□□、□□□□□?」
白い花たちの中の一輪?が進み出て何か言う。
何を言ってるのかさっぱりわからない。
花語とでも言うのだろうか?そもそもどうやって音を出しているのだろう?
「□□□□□、□□□□□□!」
「あ、どーも、はじめまして」
取り敢えず適当に答えてみる、だがこちらの言葉も通じてないみたいだ。
白い花は何かを考えるように首を傾げる、僕も首を傾げる。
そんな感じで暫くすると、シワシワの枯れかけの白い花がやってきた。
白い花達の中でそこそこ偉いのか、僕を囲んでいた白い花達の一角が道を開ける。
たぶんこいつは村長とかそんな感じだろう。
「おはようございます」
おお!初めて意味のわかる言葉が出てきた!
と言っても日本語では無い、何というか鼻歌みたいなのを歌ってるみたいだただのメロディっぽいんだが不思議と相手の意志が伝わってくるのだ。
これなら会話をすることができるかもしれない。
「フンフンフフ〜ン♪」
「?」
甘かった。
そう、この枯れかけの白い花が鼻歌で意志を伝えられるからと言って僕もできるわけではないのだ。
「貴方はご自分が何をなされたのかわかっておられますかな?」
「……」
わかるわけがない、でもこの枯れかけの白い花が怒っているのは伝わってきた。
僕はただ広場で寝てただけなのに!全裸だけど。
「貴方は無断でこの街に侵入したのですぞ!更にはここ聖域!他種族がこの場に入るなど言語道断!」
なんか言語道断らしい。
てか、聖域ってこの広場のことか?ただの広場にしか見えねぇ…
「□□□□!」
枯れかけの白い花がまたよくわからない言葉を叫ぶと、周囲の白い花達がワラワラとこっちによってきた。
よく見ると槍っぽい物を持ってる。
相手はせいぜいくるぶしに届くかどうかの小さな花、爪楊枝サイズの槍なんて大した攻撃力もないだろう。
だがこっちの防御力はもっと低い、全裸だもん。
微妙にピンチかも。
諦めてここは日本人らしく和の心でも見せてやろうかね。
「そ、それは!」
僕が膝をつき頭を下げようとしたところで白い花達の動きが止まった。
どうやら、僕の持っている金の笛が気になるようだ。
そういえば自称王様が役に立つとか言ってたな。
「申し訳ありません!貴方様ほど高貴な方がおいでになられていたとはつゆ知らず。ご無礼を働きました!どうか!御慈悲を!!」
ただの笛を見せただけでこの反応である。
一瞬、高貴な方とやらが後ろにいるのかとも思ったがそういうわけではないらしい。
よくわからんが笛TUEEEEEEE!
「ハッハッハ!苦しゅうない」
笛持ってるだけでこれなら楽勝じゃね?
もっとだ!褒めろ崇めろ奉れぃ!