【第ニ話】爆散しても怖くない
「うわああああああああああ」
僕は落ちた、すぐに地面にぶち当たると思ったけどそんなことはなかった。
とにかく落ちる、手を広げて減速を試みるが効果は薄い。
もう、あとはあの変な声を恨むしかできることはない。
地面が近づく
あんチクショウいきなりこんなとこにほっぽりだしやがって、僕が何したってんだ!
地面が近づく!
くそ、こんなことで人生終わるならもっとやりたいことやればよかった。
こんな死に方まっぴらだ。
死にたくない
地面が近づく!!
あんなに遠いと思っていた平原は今、目の前になった。
不思議とゆっくりに感じるが、あと一秒もしないうちに押しつぶされるだろう。
そして、激突。
痛みはなかった、ただ自分の意識?みたいなのが拡散していくのが分かった。
まるで、地面にぶつかった衝撃で身体がバラバラに拡散するみたいに。
意識が…途切れる。
―――――
「うぉっ!!」
目が覚めた。
意識がある。
生きてる!
だが視界が真っ暗だ、それになんだか息苦しい。
段々と身体の感覚は戻る、頭、首、肩、腕…と
上半身の感覚が戻ったとき、気づいた。
どうやら僕は地面に埋まっているみたいだ、頭から逆さに。
取り敢えず手を地面に押しあて頭を抜こうとする。
「ぶはあっ!」
僕の頭は意外にもすぐに抜けた、腕だけで頭を引っこ抜くとは僕の上腕二頭筋もなかなか捨てたもんじゃないね。
しかし、やけに視界が低いな。
今度は下半身が埋まったのか?と足元をみると…
あたりは血が広がっていた、僕の腹からは内臓がぐちゃぐちゃに飛び出ていた。
「え?」
頭が混乱する、思考が、まとまらない。なぜ?僕は生きている?
痛みは無い、不自然なほど、怪我などないように。
自分の姿み見ないように僕はもう一度辺りを見渡す。
そして気づいた、僕が何者かに囲まれてるとこに。
それは、小さくてブヨブヨしていてゆっくりと近づいてくる。
思わず逃げようとするが下半身がない、腕だけでなんとか動こうとするが震えて使い物にならなかった。
動けない、正体不明のナニカに囲まれながら僕はその場でもがくしかなかった。
奴らは、もうすぐそこに迫っている。
血に寄ってくる性質でもあるのか、奴らは執拗に下半身に迫ってきた。
喰われると思っていた。
もう、抵抗する気力もなかった。
しかし、奴らは僕の次々と下半身にひっつくと僕の下半身を形作った。
そう、こいつ等は未知の生物ではない。
バラバラになった、僕の下半身だったのだ!
肉片となった僕の下半身は再び集まり、気がつけば僕は傷一つない姿で復活していた。
「どゆこと?」
疑問しかない、だが取り敢えず生きている。
今はそれでいいとしよう。
「よっと」
体を起こす、まずは現状確認だ。
状況報告を!身体はどうだ?
隊長!傷一つありません!
装備は問題ないか?
隊長!パンツ一つありません!
ふ く が な い
どうやらさっき身体が爆散したせいで服はバラバラになってしまったらしい。
しかし、どういうわけか自称王様にもらった笛だけはしっかり握っていた。
さっきの下半身といい何か不思議パワーが起きているのだろうか?
「ぶぇっくしょい!!」
そんなことを考えているとくしゃみが出てきた、どうやらそろそろ日が沈むらしい。
流石に全裸で夜を過ごすのは厳しいようだ。
なんとかして暖をとななければ。
しかし、その問題は解決できそうだ。
街があったのだ!ちょうど沈みゆく太陽と重なるように。
きっと、あの街の住人は優しい人たちに違いない。
何故なら、そうでないと困るからだ。
全裸の男を迎え入れてくれるような、寛大な心の持ち主であると祈ろう。
――――――――
その街は随分と遠そうだった、ここから見るとかなり小さく見えるのだ。
しかし、しばらく歩くとそれが間違いだったのが分かった。
小さく見えるのではなく、小さな街だったのだ。
いや、一般的な表現で小さな街というわけじゃない物理的に小さいのだ。
具体的に言うと、その村で一番大きそうな教会?っぽい建物が僕の腰ぐらいまでしかなかった。
まさか、ここの住人は小人か?
そして、街についた。
見た目は僕の知る街とはかけ離れていて、何というかおとぎ話に出てくるような見た目だった。
そして建物はそこそこ立派なのだが道路がない、全部土だ。
僕が街の門らしき場所に立っても、誰か迎えに来たりするとこはなかった。
ただ、門の近くに小屋があってその中に何故か白っぽい花が植えてあった。
何と小屋の中も床が土だった。
もしかすると誰もいないのかもしれない。
「こんにちはー」
適当な挨拶をしながら門をくぐる、街には人っ子一人いなかった。
そして、なんだか生暖かった
誰もい家に入っても大丈夫だろう、そんな考えがあたまをよぎるが。
やめておこう、もしそれで揉め事になったら面倒くさい。
すでに無断で街に入っているがそれはそれこれはこれ、だ。
――――――――――
しばらく歩くと、街の中心部だろうか?柔らかな芝生の広場があった。
かなり広く、そしてここにもあの白っぽい花が咲いていた。
今日は、もうここで寝てしまおうかな、そう思うほど芝生は柔らかかった。
ここで寝たら気持ちいいだろうな。
そう思っと急に眠くなってきた。
それもそうだ、今日は何回か意識を失っているけど、心を休めるような睡眠は一回もとってない。
僕はその場で寝ることにした。
眼の前の奇妙な白い花を見つめながら。
ここまで読んでくださり有難うございます!
改善点など教えてもらえると嬉しいです!