64.私達は英雄の道最終試練の準備中です‼︎
開村当日の昨日は、トラブルもあってかなりバタバタとしていましたが、二日目となった今日は、引き続き混雑してはいるものの、クエストも露天の販売も順調です。
噴水にコインを投げ込むエリクサークエストは天使(?)達が持ってきた新しいコインのお陰で魔力の濃度も安定して、そして何より池からコインがあふれそうになる、という心配が解消されました。
いくつ投げ入れても池の中でコインが積もっていかないのです。水に触れた瞬間に溶けてしまうでもなく(池の中に沈んでいるコインはちゃんと見える)、いくら噴水の池の中を眺めていてもどういう仕組みになっているのかわかりませんでしたが、なんにせよ、問題は解決されました。
レッドさんが担当する『マイ農場』の方は、今日も英雄達が行列を作っています。初日はレッドさん一人で英雄の対応をしていましたが、二人増員して、今日からは三人で英雄の受付をやっています。
サンディエ村の肥沃な土壌のお陰で、高品質な作物を収穫できるのが売りだったのですが、英雄達はもう一つのマイ農場の特徴、『三倍の収穫スピード』を活かして、換金率の高いクリスタルの生産を始めました。
クリスタルに品質の良し悪しは関係ありません。なので、今までは痩せて作物が育たない土地で積極的に栽培されていたのですが……
英雄達はクリスタル栽培の収穫スピードの速さを、さらにサンディエ村のマイ農場で加速させて収益の機会を加速させているのです。とにかくぽこじゃかクリスタルを作って、それをどんどんお金に変えています。ひょっとすると、マイ農場金策が始まってしまったのかもしれません……
広大な畑に野菜や果物が青々と育っている田園風景をイメージしていたのですが、赤や紫のクリスタルが一面に広がる宝石を散りばめたような、ゴージャスな丘になってしまいました。
ともあれ、英雄の力で、村は統合する前と全く別の、賑やかな、全く新しい村に変貌しました。
「祭りはまだ一ヶ月もあるんだ。最終日には必ず戻って来いよ? お嬢ちゃんはもう、村の仲間。一員なんだからな!」ワーハハ、と笑いながらわたしの頭をゴシゴシ撫でるのはこの村の新村長。
「もう少し落ち着いたらワイン発送します、ってメルピさんに伝えてください。通信用の魔晄ケーブルが開通したらすぐに連絡できるようにしますけど…… ロッペさんに連絡つけたい時は調理師ギルドから呼び出して貰えばいいんですか?」
二世はこの村の物品の管理を全て任されることになりました。統合前は身体が弱くて、部屋からほとんど出てこなかった彼が、今や父親と一緒に村の運営を助けています。
「ええ、わたしは通信端末持ってないから、ギルドに伝言残しといて」
「めんどくさい事頼まれたからって、シカトはなしですよ?」と、二世がわたしを睨みつけます。
「そんな事するわけないでしょ……! この村はわたしの大切な『金のなる木』なんだから。頼んでた食材、漏れなくきっちりギルドに納品よろしくね?」
「当たり前じゃないですか。ランベルの名にかけて、約束の品は確実に期日までに納品しますよっ」
頼もしい限り。
わたしは一旦、サンドアへ帰るつもりです。
調理師ギルドへ新しいギルドクエストのクエストブックを提出して、最終審査を受けて、実際に調理品の生産が始まったら、所有権を書き換えて、英雄への販路を作らなければなりません。
「そろそろ出発しますよ?」とエル。
エルと猫侍さん、それにリューさんは島にモンスターがいないか、朝から山間部の調査をしていました。
リューさんによると、モンスターは市民の恐れや不安、悪意などが形になって現れたものらしく、必ずこの世界では市民がいるところにはモンスターが出現するのだそうです。
この島は、わたしとエルが思いっきり村の敷地を広げたので、モンスターの出現できるエリアが山間部に限られています。
今のところはこの村の住民の間で大きなストレスが生まれていないせいか、モンスターの存在は確認できなかったようですが、ある程度時間が経って、統合世界での生活に慣れてくると、そのうちモンスターがあの山のてっぺんにでも現れるかもしれません。
「久しぶりに身体を動かすつもりでいたのに、結局何もいなくて残念だニャ」と猫侍さん。
「それでしたら、エルさんの試練に今から一緒に行きませんか? わたしも久しぶりのパーティなので、ぜひご一緒させてください」とリューさんが言います。
「おおー それはいいニャ! エルくん、今から行こうか!」
「ぜ、ぜひ! お願いします!」
「三人もいれば勝ち確定ニャ。もう盾なしでこの三人で行っちゃおう!」
そんな感じでトントン拍子に、エルのサンドア最終試練に行くことが決定したようです。
「とにかく敵がいっぱい出てくるから、雑魚は無視して目的地に走っていかないと、時間がなくなっちゃうんですよ……」と『英雄と一日も早く英雄になりたいチーム』ではリューさんの解説が始まっています。
わたしはアシリさんやレッドさん。マスターや二世、村の皆さんに今までのお礼とお別れを言って、村の皆さんに、また来ます! と手を振りました。
そしてわたし達は、エルの帰還石を使ってサンドアに帰還しました。
わたしはサンディエ村に残ってクエスト本の原稿の準備を進めていたので、サンドアの街は久しぶりです。段々と日差しが強くなって、太陽が眩しい! 夏が近付いているのを感じます。
わたしは調理師ギルドへ完成したクエスト提出に行く間、三人は準備したいものがあるから、と揃って取引所へ向かいました。
わたしの方は提出してしまえば特に今日はやることもないので、三人の試練を見学できれば見学しようかと思っています。用事が終わったらこの場所──大聖堂前で待ち合わせることにして、わたし達は一旦別れました。
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