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31.私は英雄の道クエストを見学中です‼︎



 冒険者はこの世界に降り立つ時、三つの都のどこからスタートするかを選ぶことができるようです。


 砂の都ウルドゥ、森の都グリンデ、そして海の都サンドア。


 特にどこからスタートしても大差はないらしいのですが、サンドアの開放的な雰囲気が冒険者にはダントツで人気なのだとか。


 生まれる場所を選べるなんて…… 事前に選べるんだったら、絶対にコール島なんて選ばないだろうなぁ、って思いながらエルの話を聞いてました。


 わたしだったらどこにするだろう…… 確かにサンドアはかなり素敵な街だし、サンドアかなぁ。グリンデもちょっと興味あるかも。温泉とかもあるらしいし、森林浴しながら露天風呂とか最高じゃない? 近くに川が流れてたりしたら、水音も聞こえてきて癒されそうだし…… そうだ、グリンデの宿は温泉宿にしよ!



 「……ですよ。……聞いてますか? ロッペさん!」


 「え…… あ、はい……? どうしたの?」


 「目的地、通り過ぎてますよ!」


 「ああ、ごめん……! ここだったのね」



 車を止めたのは、丘に広がるオリーブ畑のど真ん中の農道。今日もとても日差しが強いので、麦わら帽子とサングラスをかけて、真っ赤なスポーツカーを颯爽と運転するわたしです。


 エンジンを止めると、またかからなくなったら怖いですからね。エンジンはあれから一度も止めてません。


 さて、このどれかの木の根元に、サンドアの兵士が掴んだ『裏切り者』に関する情報が埋まっているらしいのです。それを探し出すというのが今回の依頼。情報が埋まってる…… もうちょっとマシな伝え方無かったんですかね?


 この『英雄の道』という試練は連続クエスト形式になっていて、クリアしたら次のクエストが自動発生する、という流れになっています。


 この依頼の前に受けた、いわゆる前提クエストというやつは、『女性の部屋に忍び込んでブローチを盗み出せ』というクエスト……


 サンドア市内に暮らす、とある女性のアパートに侵入したのです…… こんなのって、英雄でもなんでもない、ただのコソ泥ですよ?


 エルは何度も発見されそうになって、わたしはそれを遠くでハラハラしながら見守っていました……


 ここからどう間違って世界を救う英雄になるのか…… 先は長そうです。




 英雄が拾ったサンドアの兵士のノートに書いてある『裏切り者』に関する情報の隠し場所は、見たこともない文字で書いてあって、わたしには全くわかりませんでしたが──


 エルは不意に立ち止まって「ちょっと調べますね」と、しばらく魂が抜けたように動かなくなったと思ったら、わずか1〜2分でその場所を割り出してしまいました。これもきっと、英雄の能力なんでしょう。


 「ありましたー」


 と、遠くから聞こえるエルの声。ここから見ると、なんの目印もない丘の中腹あたりの、なんの変哲もないオリーブの木の根元。どうやってあの場所特定するわけ? 何か探知機でも持ってないと無理でしょ……? 半分呆れていると、エルの周りに突如人影が……


 サンドア兵の格好をした男? が三人……!


 誰もいなかったはずの場所に、湧いて出たように現れました。この感じは、私が護衛クエストをやったときにクエスト開始直後に専用のモンスターが突然現れたのと同じ感じです。


 「エル、気をつけて! 敵がいるよっ‼︎」


 程なくして、右の丘の上の方から銃声が!


 よく見ると、はるか離れた丘の上、稜線沿いにある背丈ほどの石垣に隠れたところからライフルで狙っている狙撃兵もいます。きっとあの場所はエルが居る所からは死角になって見えてないはず……



 でも、これって……



 サンドア兵が掴んでいた極秘情報を得て、それを確認しに行ったら、同じサンドアの兵隊が待ち構えてる……? どゆこと?


 あっという間に三人のサンドア兵に囲まれてしまったエルは、顔を右手で守るように覆い隠して、その場にしゃがみ込んでしまいました。


 剣で斬られ、細剣を飛びかかりざまに突き立てられ、どう見たって普通ならこの時点で即死です。さらにエルを狙った銃弾が、オリーブの木に当たって跳ね返る音がわたしが居る所にまで響いています。あんな混戦の中を狙撃って……! 仲間に当たってもいいわけ⁉︎



 だけどね?


 どんなに用意周到に罠を張ったって……


 こんな駆け出しの冒険者が本来挑むようなクエスト、失敗するわけないじゃないですか……!



 「エル、持ってる杖で殴るか、魔法でやっつけなさいよ! いつまでそうやって、うずくまってるつもりなの⁉︎」


 ひょっとしたら、わたしが居る事に気づいたサンドア兵達が、血相を変えてこっちに向かってくるんじゃ…… と少し怖かったんですが……


 いつまでたってもタコ殴りにされてるばっかりなので、さすがに見かねて、大声で叫んじゃいました。


 「わ、わかりました!」


 ようやく立ち上がったエルは、手に持っていた背丈と同じくらいの長さもある長杖を…… 華麗とは程遠い杖捌きで……


 敢えて名前をつけるなら、『ぶんまわし』という感じですね。それで次々にサンドア兵を撃ち倒し、あっという間に撃退してしまいました!


 「エル、丘の上の方にも狙撃兵がいるからね!」


 きっと数発は命中していたはずなんだけど…… 遠くから狙撃されていた事に今更ながら気づくと、丘を駆け上がって稜線付近の物陰に隠れていた狙撃兵の元へ走り寄り、杖で殴り倒したのでした。


 杖で敵を殴打するヒーラー…… 初めて見ました。


 まだ新しいおろしたばかりの純白のローブは、慈悲の光の福音を受けて……


 返り血を浴びてもなお、うっすらと光り輝いているのでした。



お読みいただき、ありがとうございます!


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