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25.私はLv99の新米冒険者を作ってしまいました‼︎




 「え…… これ使うとどうなるんですか?」


 「強くなる、って言ってるじゃない。このままだとこの船沈没して、わたし達全員死んじゃうのよ! わたしは絶対ここで死ぬわけにはいかないの!」


 「私、職業がまだ決まってないようで…… 使えないみたいです……」


 職業……? 冒険者の職業って、この世界に降り立った時にもう決まってるんじゃないの⁉︎


 「じゃ、ホラ。そこに落ちてるしゃもじみたいなの持って。それもなんかの武器なんでしょ? この際、それが使える職業に決めちゃうしかないじゃん」


 「あ、はい……」


 「たくさんあるんだから、使えなくなるまで全部使いなさい?」


 あんなに旅行会社が配るパンフレットみたいな薄い本を読むだけで、一体どれくらいスキルが上がるのかわかりませんが、彼の身体は、スキルブックを開くたびにぱぁっと明るく、光り輝いていました。


 そしてスキルブックを100枚近く消費したところで、彼の身体は眩しく光り輝き始めました。


 それはまるで、天から神が降臨したかのように神々しく――


 頭上には天使の輪が、そして背中には大きな光の翼が現れると、彼はどんどん宙へ浮かび上がっていき、そして光の中に消えた…… ように見えたんですが。


 「Lv99になりました……」


 あれ? 目の前にいるし。


 「よ、よし! じゃぁ、そのしゃもじ持って。クラゲ倒してきなさい!」


 わたしがそう言っても信用できないのか、なかなか甲板の方へ出ていこうとしません……


 「レベルマ(最高レベル)になってるんだから、あんなクラゲに負けるわけないでしょ⁉︎ 身体的な強さだけなら、今のあなたは歴戦の英雄と同じくらい強いんだから! お願いだから、船が沈む前にさっさと倒しちゃって!」


 「わ、わかりました……」


 「あ…… ちょ、いきなり戦闘エリアに入っちゃ……」


 彼がドアから飛び出して行った瞬間、外が一面閃光に包まれ、それとほぼ同時に、耳が潰れそうなほどの雷鳴が轟きました。衝撃波みたいなものがドアから部屋の中になだれ込んできて、わたしは客室で吹っ飛ばされました。そして床の上をごろごろ転がって机の脚にしたたかに頭をぶつけたせいで、一瞬気が遠くなりました……


 勢いよくドアを開けたのでクラゲのモンスターに視認され、彼はまともに雷撃魔法をその身体に受けてしまったのでした。


 いくらなんでも、外にモンスターが居るって言ってるんだから、少しは警戒するでしょ、普通……


 しかし、さすが最高レベル。彼は攻撃を受けたことすら気付かずに、持っていたしゃもじでパチーンと殴るだけで、クラゲは粉々になって消し飛んでしまいました。


 ちなみに、彼に持たせたしゃもじのような武器は、ワンドと呼ばれる聖杖の一種だったようです。スキルブックをを使用した時に聖杖を持っていたことから、聖杖のスキルがMAXまであがり、彼はヒーラーとして覚醒したのでした。



 「あの…… 私、ヒーラーではなくナイトになりたかったのですが……」


 「ナイトって、あの大盾持ったヤツ? いやいや、絶対ヒーラーの方がいいって! この世の中、使えないナイトはいくらでもいるけど、役立たずなヒーラーなんて一人もいないんだから。だって回復と蘇生ができるのよ? どこに行ったって必ず需要がある職業なんて、最高じゃない?」


 腑に落ちない様子ではありましたが、彼は突然使えるようになってしまった大量の魔法に困惑しながらも、そのヒーラーの魔法で戦闘不能になった冒険者達を一人づつ蘇生していました。きっと立派な英雄になってくれることでしょう。身体だけじゃなくて、心も真の英雄に成長したら、スキルブックの恩をちゃんとお金で返しなさい?



 甲板で倒れていた冒険者達と協力して船に開いた穴を見よう見まねで塞ぎ、浸水したブロックから海水をバケツで掻き出して、なんとか航海が続けられるようになりました。


 冒険者達は端材を削ったり釘を打つだけでいわゆる大工のスキルが上がるようで、歓喜の声を上げながら、それはもう積極的に船を補修してくれました。


 スキルが上がるたび、冒険者達の身体は神々しいまでの光に包まれて、最初は釘すら打てなかった冒険者が、目に見えてみるみる成長していく様子は清々しいほど。


 目に見えて成長を実感できるっていうのは、彼らのやる気を後押しさせているようですね…… 英雄がいろんな種類の技術をことごとく匠の域まで成長させる原動力の秘密を垣間見た気分です。


 スキルが上がる瞬間というものを今回初めて見ましたが、まさに神がその身体に降りてきているような、そんな光景でした。



 そうしてサンドア港へ入港したのは、予定より大幅に遅れて昼を過ぎた頃。太陽は頭のちょうど真上にありました。


 カフェに入ってしばらくゆっくりしたら、目的の調理師ギルドへ向かいます。





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