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23.私は船旅を満喫中です‼︎



  神様…… ご存知だとは思いますが、クエストの承認は思ったより難航しました……


 イベントクエストはお祭り的なノリも許されてたみたいで、割とすぐに承認されたのですが……


 街の常設クエストとなると、そう簡単ではありませんでした。ユモアの商工会で、全組合員の合意が必要になるんです…… しかも、今回は報酬が破格の8億Gという法外な金額(※英雄の最大所持金が10億Gまでです)。その前に公共の発電所に忍び込んでいたこともバレてしまったし、それだけでなく、ゴーレムのプログラムを勝手に書き換えて、クエストに利用するのはいかがなものか、みたいな話にもなり…… 


 まぁ色々と大変でしたが、イベントクエストの功労者ということで、組合員の皆様にはかなり大目に見て頂いて。最終的にはユモア商工会推薦を頂けることになり、ついに認可まで漕ぎ着けました。


 だけど、わたしの企画がそのまま全て通ったわけじゃなくて、変更を迫られたのが素材の買取価格。街で買い取る値段のさらに半値を設定していたのですが、これは絶対に提出することはできない、とテスタ会長から厳しく指摘されて、最終的には街で買い取る値段と同額に設定されてしまいました。


 最悪、買い取った素材を街まで運んで売るだけでも儲けが出るな……?(ウヒヒ) と考えていたのですが、それはできなくなってしまい…… このまま素材を消費して販売する次の工程を一日でも早く生産の軌道に乗せなければ、わたしの財産が尽きるまで…… というか、尽きてもなお借金をしながら無限に素材を買い取り続ける24時間永久買取ロボが絶賛稼働中なわけで…… 図らずも尻に火がついた状態です。


 よくよく考えたら、最終工程までの準備と目算がしっかり立ってから素材の買い付けをすればいいのに、大量に仕入れてから工場探す、ってなんなの? わたし商売ヘタかよ! ってつくづく思います…… 


 とにかく、こうしてる間にもわたしのクリスタル換金手数料で稼いでいる現金は、英雄達がモンスターを狩るスピードに比例してどんどんどこにも買い手のつかない素材に変わっていっているわけですから。のんびりしてると死にます。経済的に。


 そんなこんながあって、猫侍さんのコアクリスタル納品クエストの企画を出して、それが承認されるまでに三ヶ月。そしてクエストが実際にクエストが公開されてから、すでに二週間が経過しています……



 あまり頻繁にコール島へ帰らないと行けないようでは、こっちで本腰入れて交渉が進まないので、ママと弟のリュク、それとユリス村長に紹介してもらったランプ村の若い連中に換金とか素材の回収作業の一部を手伝ってもらって、ようやくわたしは船上の人。あと半日もすれば海の都サンドア港へ入港です。


 船は船酔いするから大変だなんて脅かされていましたが、さすがわたし。なんともないです。船を使った貿易商ってのもいいかもしれませんね! 猫侍さんみたいにありえないほどお金が貯まったら、大きな船でも買って、交易を始めるのもいいかも。



 実はこんな船旅をかれこれ三日は続けているんですが、サンドアへ向かう直行便はコール島はもちろん、光の都クリスタからも出ていません。


 一度クリスタへ行って、そこから船に乗ってまず、ノランという港町へ。そこでサンドア行きの便に乗り換えて…… と、なかなか大変な行程なんです。


 クリスタからノランへの船内は乗る人といえば釣り人ばかりで、英雄達が甲板に出て凄まじい勢いで次々に釣り上げる様子を、ただただ感心して見ていて飽きることはなかったのですが、ノランからサンドアに向かうこの船はさすが主要都市の一つ、海の都へ向かう船だけあって大きな、とても立派な船です。でも、乗っている乗客の雰囲気は今までわたしが見てきたどんな街の様子とも違って、なんというか…… とてもそわそわしてるというか、落ち着きがないというか、初々しいのです。


 サンドアは今の英雄達がまず初めに降り立つ主要三都市の一つ。つまり、英雄を目指す冒険者が集まる街なのです。今わたしが乗っているのはそのサンドアを目指す船。わたしの周りにはそんな冒険者達が、貨物室を整えただけの粗末な客室の中を落ちつきなくウロウロしています。


 リューさんも猫侍さんも、最初はこんな感じだったんでしょうねぇ…… リューさんは英雄になってからも不安そうな顔してましたが。


 思わず思い出し笑いをしてしまって、誰にも見られてないか、それとなく周りを見渡すと、目の前に座っている冒険者風なエルフの男性とバッチリ目が合ってしまいました。


 (うわ、見られたかも……)


 すると突然、甲板の方から男の大きな声が聞こえてきました。


 「モンスターだッ! 誰か! 甲板にモンスターが上がってきてる‼︎」


 「このままじゃマストが折られちまうぞ! 英雄様はいらっしゃいませんか! 誰か!」


 モンスターが生息する海域を航行する船なんですから、武器くらい用意してるでしょう。どちらにしても、英雄がいれば瞬殺ですし…… なんて思ってしばらく客室に座ってると、


 「ドーン、ドーン、ドーン!」とただ事では無さそうな大きな音が甲板の方から響いてきて、この客室までその衝撃が伝わってきました。


 (なにこれ! なにか壊れたんじゃないの……?)


 「船端に穴が空いたぞ! 浸水する‼︎ 誰か、早くモンスターを倒してくれ‼︎」


 う…… 嘘でしょっ⁉︎ ちょ、英雄誰も乗ってないわけ? モンスターを倒す武器の装備もないの⁉︎ 客室のドアをそーっと開けて甲板の方を見てみると、大きなクラゲのようなモンスターが数匹。乗組員が既に何人か倒されていました。


 え? まさか……


 わたし沈むの?


 泳げるけど…… 岸までなんて無理でしょう……?


 

 やばい…… これ、死ぬやつじゃん……



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